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岩田行雄の憲法便り・日刊憲法新聞

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2015年 03月 30日

日本国憲法施行日の社説No.18:『埼玉新聞』5月3日一面社説「歓喜と義務」

2015年3月30日(憲法千話)

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昭和22年5月3日付埼玉新聞一面
昭和22年5月3日付『埼玉新聞』は、一般的に社説が掲載される一面左上に、「論壇」というコーナーを設けており、この日は『歓喜と義務』という一文を掲載した。
一面の下半分に掲載されていた広告部分は、切り抜かれている。残念ながら、埼玉県文書館、埼玉新聞社も紙面全体が保持されているものは所蔵していないので、不完全なまま紹介せざるを得ない。広告欄の切り抜きは、昭和22年の初めから、続けて行われている。
日本国憲法施行日の社説No.18:『埼玉新聞』5月3日一面社説「歓喜と義務」_c0295254_14302837.jpg


昭和22年5月3日付論壇「歓喜と義務」は、歓び溢れる題名なので、記事の写真の下に、文字起こしを行った。(旧字体は改めた)
判読不能な部分は、□□で表現してある。
日本国憲法施行日の社説No.18:『埼玉新聞』5月3日一面社説「歓喜と義務」_c0295254_14322679.jpg


5月3日付論壇「歓喜と義務」

四月選挙も無事終了して憲法施行までの準備は形式上一応整った。そしていよいよ今日は新憲法が施行され、名実共に日本は民主国家の第一歩を踏みだすことのなったのである。
 憲法は国家の最高法規である。その憲法が徹底的な民主主義思想に基いて国会、内閣、裁判所等の国家機構を定めると同時に、基本的な人権擁護の原則を明示して、旧来の「国家に対する臣民の義務」に代って新たに「文民の自由」即ち言論、思想、信教の自由、勤労の権利、男女の本質的平等まで明文化したのは大きな特徴である。そして今一つの特徴は、全世界に率先して戦争放棄を宣言し、自由と平和の人類理想を謳っていることだ。このような内容と、さらにこの憲法がいかにして生れたかということを思い併せると、今日の施行は世界史上に輝しい一頁を飾って余りある。吾々は絵に書いた餅ならぬ修辞上の自由には慣れているが、本当の自由は、祖先以来一度も体験したことがない。さればこそ、この自由はとかく履き違えられて他人の自由を拘束しても自己の自由を主張するような愚劣さえ生んでいる。自由を得た吾々は、もっと自由の本質を智的に理解する義務がある。
 同時に権利は義務との均衡の上にたってこそ成立つものであることも忘れてはならない。憲法は自由と権利を保障しているが、これを濫用することを戒めている。同時に勤労と納税及び社会保障、社会福祉、公衆衛生に対する義務も厳然と規定している。
 今や新しい革袋に新しい酒は盛られた。けれども□□な事は、多くの人々が憲法を内容的に知っていないことだ。憲法に徹した言動が常に人々を支配するようになって、初めて国の軌道が招かれることになる。従って一人でも多く一日も早くまぅ憲法を知ることが肝要だ。国民にマスターされない限り、自由も権利も伸展はしない。
 今日の歓喜はやがて明日への義務につながる。吾々は今日「日本国民は国家の名誉にかけ全力をあげて崇高な理想と目的を達成することを誓う」(憲法前文)と全世界に宣言したが、これは□□(将に?)国民一人一人の義務であることを忘れてはならない。(□□:板谷?)

(典拠は、埼玉県立浦和図書館所蔵のマイクロ資料複写版より)

by kenpou-dayori | 2015-03-30 06:39 | 日本国憲法施行日の社説


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