岩田行雄の憲法便り・日刊憲法新聞

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2015年 04月 03日

日本国憲法施行日の社説No.22:『北国毎日新聞』昭和22年5月3日社説「憲法祭を迎えて」【拡散希望】

2015年4月3日(憲法千話)

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2016年1月6日(水)【安倍内閣による改憲を阻止するため拡散を希望します】

昭和22年5月3日付『北国毎日新聞』一面
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昭和22年5月3日付『北国毎日新聞』社説「憲法祭を迎えて」
 昨年十一月三日新憲法公布の多彩な祝賀式が宮城前の広場で行われた時、そこに集まった日本人の表情は、下から盛りあがる熱意にとぼしく、嬉しさがこみあげるような祝福の気持ちを心からあらわしたものでなく、といって憂うつなる圧迫感に押しつぶされるような気配でもなく、静かに想を練り、今後の日本のあり方について心痛するといったような深刻な表情を示さしていたという。主権在君から在民へと移行した喜びと、運用次第によっては、これを反故化するにいたるべき不安との交錯した渦中におちいった場合に示される表情でなかったろうか。
 明治憲法が明治二十二年二月十一日に発布されたときの東京人のどよめきは、より深刻なものがあったと伝えられている。旧憲法は、何といっても、自由民権という一大国民運動を展開し、官憲のすさまじい弾圧に抗し、流血殺傷の間にこれを闘いとるというかたちをとった。いかがわしきものは、三時間以内に東京から三里外に追放するという保安条例というよりも、戒厳令下において式典が行われたのである。新憲法下公然人民の自由、平等、幸福追求の基本的権利が認められたきょうの記念式典に直面し、うたた今宵の感なきを得ないものを覚えるのである。加うるに旧憲法は当時の日本の社会情勢ならびに国際的地位からみて、決して不自然なものでなかった。しかし、せっかく本文で与えた自由も付属法で金しばりにしてしまうほか、側近の特権階級のお手盛りによってつくられた慣習憲法が、その本文をあってなきがごとき空手形と化してしまったのである。
 新憲法は、少なくもその形式においては、草案を国民的公聴会にゆだね、昨年六月の第九十臨時議会において国民代表の審議にかけた上、これが実施に最小限度必要なる十種の付属法を第九十一、二議会で制定し、さらにその懸念される実際的運営に、新鮮の気分を注入する目的をもって、わが国初の参議院ならびに衆議院の再編成を四月選挙によって確定し、一応御ぜん立を整えたのである。しかも、新憲法の公布、ついできょうの実施記念祝典に当り、いまだ心から朗らかにこれを迎えることに、ちゅうちょのいろを隠し切れないというのは、思想的には一連の流れによってつながれているにもかかわらず、それが旧憲法の場合におけるごときしげき的色彩にめぐまれず、波らんなき無血革命によって獲得されたことに対する不足感からであるとでもいうだろか、それにしては、満州事変以来太平洋戦争までに国民の払った犠牲はあまりにも過小評価されていないだろうかと反問したい。
 不明朗な他の要素となっているのは、敗戦後のわが国社会情勢と第一次世界大戦後におけるドイツのそれとをにらみあわせて、その近似性を指摘し、当時民主憲法の最高峰といわれたいわゆるワイマール憲法を踏台にして、ナチスのファッショ化が誘導されたことに対する不快なる連想になやまされつつある批判の存するためである。しかし、これは、ヴェルサイユ平和条約と対日講和条約の根本的相異性ならびに当時の国際平和機構不統一と現在のそれの統合性との比重、さらに日独双方の国体変革の形態および速度の比較に対する検討を怠らぬならば、ワイマール憲法の事例を直ちにわが新憲法に引用することの不合理性は、直ちに感知されねばならぬはずではなかろうか。第一次大戦終息後、ヒトラー政権誕生(?)の一九三二年までの約十四年間、ワイマール憲法をたな上げしてかえりみなかったドイツ国民の重大なる手落ちと怠慢にこそ、われらはするどいメスを加うべきであり、新憲法を活かすも殺すも、われらの掌中にその与奪の権利が握られている点にこそ、誇りと責任を自覚すべきであろう。
 きょうの祭典にあたり、総司令部政治部代表のいわゆる「自分の良心にしたがって思考し論議し得る権利、自分の信念を主張し得る権利、なかんずく社会に対する自分の責任を負い、かつこれを遂行する権利」の実態をつかみ、これを高らかに叫ぶにあたり、なんのちゅうちょとしゅん巡を要するというのであろうか。
(典拠は、国立国会図書館所蔵マイクロ資料:請求記号Z81-41)

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by kenpou-dayori | 2015-04-03 06:15 | 日本国憲法施行日の社説


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