2015年 04月 14日

憲法便り#732:人物紹介『”マエストロ渡辺”のこと』

2015年4月14日

憲法便り#732:人物紹介『”マエストロ渡辺”のこと』

今日は、渡辺和雄氏が世を去ってから、21回目の祥月命日である。

「天才とは1のひらめきと99の努力である」というエジソンの言葉がある。
この言葉について、様々なコメントがあるが、自然科学系ならばともかく、人文科学の場合には、
私は、「天才とは、99パーセントの努力と、1パーセントの才能である」と、思っている。

そうした意味で、渡辺和雄氏は、文字通り「天才」と呼ぶにふさわしい人であった。

私も彼も、私立大学図書館協会西洋古版本研究部会に特別会員として参加させていただいていたが、その会員で、神奈川大学図書館のY係長から、1994年7月に刊行予定の、『図書館だより』No.80への原稿依頼を受けた。

私が、渡辺氏の葬儀で、弔辞を読んだことによる。
葬儀当日に弔辞を読ませていただいたのは、(株)文流の西村暢夫氏と私だけだった。

『図書館だより』80号のテーマは、「〈死〉の誕生」。
これは、神奈川大学図書館と深いかかわりがあったことを偲んでのこと。
テーマ設定については、当時の館長海道勝稔(かいどう・まさとし)先生の巻頭言「図書館と〈死〉」の中で、格調高く、丁寧に説明されている。
だが、著作権の問題もあるので、ここでは省略し、私が寄稿した『”マエストロ渡辺”のこと』をそのまま紹介しておこう。
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渡辺和雄氏が『イソップ寓話集』の翻訳を手掛けることになったのは、彼から聞いた話では、次のような事情によるものであった。

小学館が、グリム、イソップ、アンデルセンの三大童話の原典からの完訳版を企画したが、イソップに関しては、誰も引き受ける人がいなかった。
困った小学館の担当者は、はたと、渡辺和雄氏のことを思い出し、意向打診をしてきた。
それは、以前から小学館が出版する童話の翻訳を手掛けていた渡辺和雄氏が、イタリアのボローニャで開催される絵本展に通訳として同行した際に、ギリシャ人との会話をギリシャ語で難なく行っていたことを思い出したからであった。

原典からの『イソップ寓話集』の翻訳の意向打診を受けた渡辺和雄氏は、「まあ、何とかやってみましう」と言って、引き受けた。

この翻訳のために、ギリシャに行ったことなどの研究余話を、私立大学図書館協会西洋古版本研究部会(通称:古版本研究会)の例会で、伺ったことがある。

刊行後、『イソップ寓話集は、高い評価を受け、日本翻訳家協会から、「日本翻訳文化賞」を贈られたことは、『図書館たより』No.80の中で、すでに述べたところであるが、54ページに及ぶ解説は、「子ども向け」の本なので、ルビがふってあるが、実はとても高いレベルの学術論文である。

渡辺和雄氏が世を去ってから21年になるが、改めて『”マエストロ渡辺”のこと』を、いま読み返してみると、私は、少しでも天才の背中に近づくどころか、ますます遠くなっていることを実感する。
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by kenpou-dayori | 2015-04-14 10:45 | エッセー


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