岩田行雄の憲法便り・日刊憲法新聞

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2015年 05月 08日

憲法便り#959:吉田茂首相特集(第三回) 「戦争放棄に関する答弁」(その3)野坂参三議員へ

2015年5月8日(金)(憲法千話)

吉田茂首相特集(第三回) 「戦争放棄に関する答弁」(その3)野坂参三議員へ

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以下は、【再録】の記事です。

2013年 07月 10日
憲法便り#108 吉田茂首相特集(第三回) 「戦争放棄に関する答弁」(その3)野坂参三議員へ

第90回帝国議会衆議院本会議 昭和21年6月28日(金)の質疑より

野坂参三議員は共産党を代表して、①現行(帝国)憲法と憲法改正案の「継続性」という矛盾点に対する指摘、②憲法改正の手続きについて、③主権がどこにあるのか、④二院制の問題、⑤第三章の国民の権利と義務についてにつづき、最後に六番目として戦争放棄の問題を取り上げています。
この戦争廃棄に関する質問では、日本の侵略戦争という本質に迫り、その根本原因を「廃滅」するために、六点について問題提起と質問をしています。これに対する政府側の答弁も、多岐にわたっていますが、ここでは吉田茂総理大臣の答弁を紹介します。

野坂議員 さて、最後の六番目の問題、これは戦争放棄の問題です。ここには戦争一般の放棄ということが書かれてありますが、戦争には、我々の考えでは二つの種類の戦争がある。二つの性質の戦争がある。一つは正しくない不正の戦争である。これは、日本の帝国主義者が満州事変以後起したあの戦争、他国征服、侵略の戦争である。これは正しくない。同時に侵略された国が自国を護るための戦争は、我々は正しい戦争と言って差し支えないと思う。この意味において、過去の戦争において、中国或いは英米その他の連合国、これは防衛的な戦争である。これは、正しい戦争と言って差し支えないと思う。
一体、この憲法草案に戦争一般放棄という形でなしに、我々はこれを侵略戦争の放棄、こうするのがもっと的確ではないか。この問題に付いて、我々共産党は、こういう風に主張して居る。日本国は、すべての平和愛好諸国と緊密に協力し、民主主義的国際平和機構に参加し、如何なる侵略戦争をも支持せず、また、これに参加しない。私はこういう風な条項がもっと的確ではないかと思う。この問題に付いて、総理大臣に、ここでもう一度はっきり回答願いたい点がある。それは、徳田球一君がここで総理大臣に質問した場合に、徳田球一君はこの戦争は侵略戦争である、これに付いて総理大臣はどういう風に考えられたかといった場合に、総理大臣は、ただ徳田君の意見には反対であるという風に言われた。そうすると、このご回答は、徳田君が侵略戦争と性質付けたあの性質付けに反対されるのかどうか、逆に言い換えれば、首相は過去のあの戦争が、侵略戦争ではないと考えられるのかどうか、これをここではっきりと言って戴きたい。
一体、戦争の廃棄というものは、一片の宣言だけで、或いは憲法の条文に中に一項目入れるだけに依って実現されるものではない。軍事的、政治的、経済的、思想的根因、この根本原因を廃滅すること、これが根本だと思う。即ち、我々は戦争犯罪人を徹底的に究明すること、これに付いて先ほども申しましたように、政府は非常に緩慢なように見える。或いは、怠慢なようにも見える。私は、総理大臣、内務大臣、或いは必要ならば司法大臣にお聴きしたいが、政府はこの戦争犯罪人、この中には積極的な者もあり、また消極的な者も含まれるが、これをどこまで徹底的に究明される所存であるか、何時、どのくらい、これを処置されるつもりであるか、これをお聴きしたい。
また第二、戦争を実際に廃たるためには、現在まだ秘密或るいは半公然と存在するところの反動諸団体、これの指導者、これに対する取締りを内務大臣はどのようにやっておられるのか。
第三には、実際に戦争を廃滅するためには、政治上に独裁機構を作ってはならない。これを徹底的に廃滅する、官僚主義、官僚機構、これに徹底的に廃滅しなければならぬ。この点において、どの程度まで政府はやっておられるか、やろうとされて居るか。
また、侵略戦争の原動力であるところの財閥、これの解体の状態がどの程度まで進行して居るのか。
また第五には、日本の封建主義の土壌であり、基礎であるところの封建的な土地所有制度、これの改革に付いて農林大臣はいまどのようにやられて居るか。すでに農地調整法が出来てから半年以上過ぎて居るが、一体どのように進行して居るのか。また、政府は土地改革を約束されたが、いつ、いかにしてこの約束を実行されようとするか、これをここで明言して戴きたいと思う。
六番目に、これは特に文部大臣にお聴きしたいが、戦争の犯罪性、侵略戦争の犯罪性、過去の日本の戦争が帝国主義的であり、侵略的であるということを、一般教育面においてどの程度まで徹底的に実行されて居るか。これを具体的に説明して戴きたいと思う。これが第六であります。

吉田総理大臣 また、戦争放棄に関する憲法草案の条項につきまして、国家正当防衛権に依る戦争は、正当なりとせらるるようであるが、私は、かくの如きことを認むることが有害であると思うのであります(拍手)。近年の戦争は多くは国家防衛権の名において行われたることは顕著なる事実であります。故に、正当防衛権を認むることが、たまたま戦争を誘発する所以であると思うのであります。また、交戦権放棄に関する草案の条項の期するところは、国際平和団体の樹立に依って、あらゆる侵略を目的とする戦争を防止しようとするのであります。しかしながら、正当防衛に依る戦争がもしあるとするならば、その前提において侵略を目的とする戦争を目的とした国があることを、前提としなければならぬのであります。
故に正当防衛、国家の防衛権に依る戦争を認むるということは、たまたま戦争を誘発する有害な考えであるのみならず、もし平和団体が、国際団体が樹立された場合におきましては、正当防衛権を認むるということそれ自身が有害であると思うのであります。ご意見の如きは有害無益の議論と私は考えます。

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(官報号外 昭和21年6月29日)

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by kenpou-dayori | 2015-05-08 21:02 | 吉田茂


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