2015年 05月 11日

憲法便り#991「自衛権まで放棄しなければならないのか」(原 夫次郎議員:日本進歩党)の質問)

2015年5月11日(月)(憲法千話)
同日、ツイッター向けに改題:「自衛権まで放棄しなければならないのか」

憲法便り#991 「原 夫次郎(はら・ふじろう)議員(日本進歩党)の質問」」:『検証・・』(第六版)第四章(5)

『検証・憲法第九条の誕生』(増補・改訂 第六版)より
第四章 第九十回帝国議会 衆議院本会議での憲法改正案論議(5)


【昭和二十一年六月二十六日(水)の質疑】
午後一時四二分開議、午後五時散会

原 夫次郎議員(日本進歩党)の質問
「自衛権まで放棄しなければならないのか」


原 議員 第三点と致しまして、改正案第二章の、いわゆる戦争放棄の問題であります。
首相は、度々これまで、本演壇におきまして、この度の改正案の非常に重大なる部分は第一条(第九条の誤り)なり、この戦争放棄の問題であるということを、高調せられていたのでありますが、まことにごもっともな次第と、私共も存ずるのであります。
この戦争放棄という条文が加入致したということに付きましては、総理大臣の説明を附加せられたところを見ましても、また我々がこの改正案を通読いたした場合におきましても、これは真に草案を作成せられた内閣において、考えられなかった問題であると思うのであります。
極めて我が国の前途に取りまして、非常なる関心事であります、この戦争放棄なるものは、結局、世界平和に寄与せんがためであると、一言にして申せば尽きるようでありますが、一面から独立国家の体面と致して、我が国が進んで戦争の指導者となるとか、戦争を勃発する計画をなすとかいうことは、この度の苦い経験に依って、誰一人考えるものはないのでありまするが、ただ恐るべきは、我が国を不意に、或いは計画的に侵略せんとするもの達、或いは占領せんとするものが出て来た場合に、我が国の自衛権といういうものまで放棄しなければならぬのか。この自衛権を確立するということのためには、この付き物は、当然その用意をして置かなければなぬ。これは即ち、陸、海、空軍とか、或いはその他の武力の準備であります。この準備なくしては、自衛権を全うすることは出来ないという所が、非常なる「ジレンマ」に掛って居る問題でありますが、しかしながら、そこに非常なる苦心を払われた跡かあると想像致します。
これはもし、そういうような不意な襲来とか、侵略とかいうようなことが勃発致した場合において、我が国は一体いかに処置すべきか、この問題に付いては、政府当局においても、当然考えられた問題だと思うのであります。
いろいろ国際情勢から考え来って、遂に、この条文を置かなければならないという立場に立ち到ったということは、深く想像に余りある所でありますが、何としても、こういう自衛権までも武力防衛が出来ないということになりましたならば、どうしても、他国に対する依存に依って、これを防衛しなければならぬ、こういうことに結論付けられると思うのであります。しからば、先ず、かかる条文を置かるる場合において、他国とそういう場合の何か条約でも、或いは取交わしでもあるのかどうか、これも当然想像しなけらばならぬのであります。
殊に、私はこの問題に牽関(けんかん?)してお伺い致したいのは、かの第一次世界大戦の後始末におきましては、国際連盟なるものが出来まして、ほとんど世界に戦争再発なんということは考えない位に発達させていたのでありますが、然るところ、この連盟は遂に失敗に終りまして、今次の大戦を再発するに至ったのであります。
その関係上、今日のこの戦争終息後における連合国の態度に付きましては、外電の伝うるところに依りますと、従来の経過に鑑みて、この度は、この轍を踏まないで、連合国が指導者の立場に立って、或いは世界連合国家までも創設しなければならぬというような、いろいろ話合いもあるということでありまするが、もしそういう機関が出来まするならば、一体、全世界の上の国家に対して、その国家の上に更に一つの厳然たる国家権力が行われるというようなことになれば、それこそ永遠の平和を保つことが出来、また日本が戦争を放棄することのために、それほど心配はしなくても宜しいじゃないかというような考えも起るのであります。
そこで私は、吉田前外相、この吉田総理大臣は、その立場において、これらの点に付いては非常に造詣の深い方でありまするから、一つこの点におきまして十分なるご説明を願いたいと存ずるのであります。以上をもって、吉田総理大臣に対する質問事項を終ります。

吉田首相 次に、自衛権についてのお尋ねであります。戦争放棄に関する本案の規定は、直接には自衛権を否定してはおりませぬが、第九条第二項において、一切の軍備と国の交戦権を認めない結果、自衛権の発動としての戦争も、また交戦権も放棄したものであります。
従来、近年の戦争は、多く自衛権の名において戦われたのであります。満州事変然り、大東亜戦争また然りであります。今日我が国に対する疑惑はー、日本は好戦国である、何時再軍備をなして、復讐戦をして世界の平和を脅かさないとも分からないということが日本に対する大なる疑惑であり、又誤解であります。
先ず、この誤解を正すことが、今日我々としてなすべき第一のことであると思うのであります。又この疑惑は誤解であるとは申しながら、全然根柢のない疑惑とも言われない節が、既往の歴史を考えて見ますると、多々あるのであります。故に我国においては如何なる名義をもってしても、交戦権はまず第一自ら進んで放棄する。放棄することによって全世界の平和の確立の基礎を成す、全世界の平和愛好国の先頭に立って、世界の平和確立に貢献する決意を、まずこの憲法において表明したいと思うのであります(拍手)。これに依って我が国に対する正当なる諒解を進むべきものであると考えるのであります。
平和国際団体が確立せられた場合に、もし侵略戦争を始むる者、侵略の意思を以って日本を侵す者があれば、これは平和に対する冒犯者であります。全世界の敵であると言うべきであります。世界の平和愛好国は相寄り、相携えて、この冒犯者、この敵を克服すべきものであるのであります(拍手)。ここに平和に対する国際的義務が、平和愛好国もしくは国際団体の間に自然に生ずるものと考えます(拍手)。
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by kenpou-dayori | 2015-05-11 14:52 | 自著連載


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