2015年 05月 11日

憲法便り#994「侵略戦争の反省に立ち、その根本原因の廃滅を」(野坂参三議員(日本共産党)の質問)

2015年5月11日(月)(憲法千話)
同日、ツイッター向けに改題:「侵略戦争の反省に立ち、その根本原因の廃滅を」

憲法便り#994 「野坂参三議員(日本共産党)の質問」」:『検証・・』(第六版)第四章(8)

『検証・憲法第九条の誕生』(増補・改訂 第六版)より
第四章 第九十回帝国議会 衆議院本会議での憲法改正案論議(8)

昭和二十一年六月二十八日(金)の質疑】
午後二時開議、午後五時十六分散会

野坂参三議員(日本共産党)の代表質問
「侵略戦争の反省に立ち、その根本原因の廃滅を」

野坂参三議員は共産党を代表して、①現行(帝国)憲法と憲法改正案の「継続性」という矛盾点に対する指摘、②憲法改正の手続きについて、③主権がどこにあるのか、④二院制の問題、⑤第三章の国民の権利と義務についてにつづき、最後に六番目として戦争放棄の問題を取り上げている。

この戦争廃棄に関する質問では、日本の侵略戦争という本質に迫り、その根本原因を「廃滅」するために、六点について問題提起と質問をしている。これに対する政府側の答弁も、多岐にわたっている。

野坂議員 さて、最後の六番目の問題、これは戦争放棄の問題です。ここには戦争一般の放棄ということが書かれてありますが、戦争には、我々の考えでは二つの種類の戦争がある。二つの性質の戦争がある。一つは正しくない不正の戦争である。これは、日本の帝国主義者が満州事変以後起したあの戦争、他国征服、侵略の戦争である。これは正しくない。同時に侵略された国が自国を護るための戦争は、我々は正しい戦争と言って差し支えないと思う。この意味において、過去の戦争において、中国或いは英米その他の連合国、これは防衛的な戦争である。これは、正しい戦争と言って差し支えないと思う。
一体、この憲法草案に戦争一般放棄という形でなしに、我々はこれを侵略戦争の放棄、こうするのがもっと的確ではないか、この問題に付いて、我々共産党は、こういう風に主張して居る。日本国は、すべての平和愛好諸国と緊密に協力し、民主主義的国際平和機構に参加し、如何なる侵略戦争をも支持せず、また、これに参加しない、私はこういう風な条項がもっと的確ではないかと思う。この問題に付いて、総理大臣に、ここでもう一度はっきり回答願いたい点がある。それは、徳田球一君がここで総理大臣に質問した場合に、徳田球一君はこの戦争は侵略戦争である、これに付いて総理大臣はどういう風に考えられたかといった場合に、総理大臣は、ただ徳田君の意見には反対であるという風に言われた。そうすると、このご回答は、徳田君が侵略戦争と性質付けたあの性質付けに反対されるのかどうか、逆に言い換えれば、首相は過去のあの戦争が、侵略戦争ではないと考えられるのかどうか、これをここではっきりと言って戴きたい。
一体、戦争の廃棄というものは、一片の宣言だけで、或いは憲法の条文に中に一項目入れるだけに依って実現されるものではない。軍事的、政治的、経済的、思想的根因、この根本原因を廃滅すること、これが根本だと思う。即ち、我々は戦争犯罪人を徹底的に究明すること、これに付いて先ほども申しましたように、政府は非常に緩慢なように見える。或いは、怠慢なようにも見える。私は、総理大臣、内務大臣、或いは必要ならば司法大臣にお聴きしたいが、政府はこの戦争犯罪人、この中には積極的な者もあり、また消極的な者も含まれるが、これをどこまで徹底的に究明される所存であるか、何時、どのくらい、これを処置されるつもりであるか、これをお聴きしたい。
また第二、戦争を実際に廃たるためには、現在まだ秘密或るいは半公然と存在するところの反動諸団体、これの指導者、これに対する取締りを内務大臣はどのようにやっておられるのか。
第三には、実際に戦争を廃滅するためには、政治上に独裁機構を作ってはならない。これを徹底的に廃滅する、官僚主義、官僚機構、これに徹底的に廃滅しなければならぬ。この点において、どの程度まで政府はやっておられるか、やろうとされて居るか。
また、侵略戦争の原動力であるところの財閥、これの解体の状態がどの程度まで進行して居るのか。
また第五には、日本の封建主義の土壌であり、基礎であるところの封建的な土地所有制度、これの改革に付いて農林大臣はいまどのようにやられて居るか。すでに農地調整法が出来てから半年以上過ぎて居るが、一体どのように進行して居るのか。また、政府は土地改革を約束されたが、いつ、いかにしてこの約束を実行されようとするか、これをここで明言して戴きたいと思う。
六番目に、これは特に文部大臣にお聴きしたいが、戦争の犯罪性、侵略戦争の犯罪性、過去の日本の戦争が帝国主義的であり、侵略的であるということを、一般教育面においてどの程度まで徹底的に実行されて居るか。これを具体的に説明して戴きたいと思う。これが第六であります。

吉田総理大臣 また、戦争放棄に関する憲法草案の条項につきまして、国家正当防衛権に依る戦争は、正当なりとせらるるようであるが、私は、かくの如きことを認むることが有害であると思うのであります(拍手)。近年の戦争は多くは国家防衛権の名において行われたることは顕著なる事実であります。故に、正当防衛権を認むることが、たまたま戦争を誘発する所以であると思うのであります。また、交戦権放棄に関する草案の条項の期するところは、国際平和団体の樹立に依って、あらゆる侵略を目的とする戦争を防止しようとするのであります。しかしながら、正当防衛に依る戦争がもしあるとするならば、その前提において侵略を目的とする戦争を目的とした国があることを、前提としなければならぬのであります。
故に正当防衛、国家の防衛権に依る戦争を認むるということは、たまたま戦争を誘発する有害な考えであるのみならず、もし平和団体が、国際団体が樹立された場合におきましては、正当防衛権を認むるということそれ自身が有害であると思うのであります。ご意見の如きは有害無益の議論と私は考えます。

木村国務大臣 今般、国家行政を民主主義の線に沿うて改革すべく、ただいま憲法改正案をご審議中でございまするが、中央政治を民主主義化するに付きましては、一面におきましては地方政治を大いに民主化する必要があるのであります。つきましては、近く地方行政制度の全般的改革案を提出致しまして、各位のご審議を仰ぎ、国政と相俟って、地方行政を民主主義の線に沿って徹底的に改正したいと考えて居ります。なお、地方制度の改正と共に、私共として最も意を用いなければならぬのは、警察の改善だと思います。警察を民主主義の線に沿うて改善致しますことに付きましては、終戦以来大いに努力致して来ておりまするが、現状を以ってしては、まだ満足すべきところまで到達していないことは、申し上げるまでもないことだと思います。警察の改善に付きましては、今後も大いに努力を継続するつもりで居ります。なお、それに伴うて必要なる法律の改正ないしご制定を仰ぐという必要も起って来るかと存じて居ります。それらは次の議会、なるべく案をそなえまして、各位のご協賛を仰ぎたく考えて居る次第であります。
なお、官僚制度、官僚組織の徹底的打破と申しますか、そのような意味のご質問がございましたが、従来の如き官僚制度、官僚組織に対しましては、民主主義的なる改善を加える点が多々あることと存じますが、しかし、官僚制度を全廃するという訳には参らないと考えます。議会政治の発達のためには、これと伴いまして、健全なる官僚制度、新しい官僚制度を打ち立てることが、絶対必要だと思うのであります。もし、官僚制度という名前が適当でないと致しましたならば、新しい意味をこれに持たせるために、吏僚制度と申しても宜しかろうかと思いまするが、この健全なる吏僚制度は、今後大いに打ち立てまして、そうして議会政治の健全なる発達に寄与しなければならぬと思うのであります。これにつきましては、恐らく近い機会に公務員法と申しますか、或いは官吏法とも言うべきものが制定せられまして、
その基準の下に、間違いのない、従来の如き誤らざる健全なる制度を打ち立てたいものと考えて居る次第であります(拍手)。

田中耕太郎文部大臣の答弁
「日本の過去の国策及び教育の誤謬並びに既往数年間の国家的罪悪を、根本的に反省することに決して躊躇するものではない」


田中文部大臣 お答え致します。過去の日本の戦争の罪悪性、侵略性を人民の間に徹底させることを決意して居るかどうか、またどういう風にやって居るかというご質問でありました。文部省と致しましては、或いは教育人事の方面に付きまして努力を致しまして居ります次第であります。教育人事の方面に付きましては、ご承知のように、教職員適格審査の規定の中におきまして、軍国主義、侵略主義の要素を徹底的に排斥する意味で以って、いま徐々に実現の緒に就いた次第であります。また、このことは教職員の頭の切り替えをする必要があるのでありまして、この教員の再教育という点に付きましても、或いは師範教育制度その他を根本的に反省致しまして、或いはまた、その時々の実状に応じた教員再教育を実行致したいと思って居る次第であります。
教育内容の方面に付きましては、我々は或いは教師用指導書であるとか、或いは追って段々出来上がって参りまする教科書のなかに、或いは講演その他の方法で以って、日本の過去の国策及び教育の誤謬並びに既往数年間の国家的罪悪を、根本的に反省することに決して躊躇するものではないのであります。我々はいま軍国主義、侵略主義から、民主主義、平和主義の方向への宗教的「コンヴァーション」の時期、関頭に立って居るということを反省致しまして、民主主義、平和主義、人類愛こそ世の初めから終りまで変わらない真理であることを、あらゆる方法を以って徹底させたいと努力致して居ります(拍手)。
しかし、この精神を国民全体に浸透させますことは、これは実に容易ならぬことでありまして、忍耐強くやらなければなりませぬ。相当の時日を要することでありますが、政府はこれに付きまして固い決意をなして居るものでありまして、その点に付きましては、野坂君におかれましては、ご安心あって然るべきだと思います(拍手)。
これで私の答弁を終ります。

樋貝衆院議長 野坂君に申し上げますが、和田農林大臣はもっか登院して居りませぬので、ご返事は回答出来ないことになって居ります。宜しうございますか。

野坂議員 この問題は、非常に重要な問題ですから、他の機会に回答願います。

樋貝衆院議長 それで宜しうございますか。

野坂議員 後からで宜しうございます。今の各大臣の答弁、特に総理大臣の答弁は非常に不満足なものでありました。私達の一番知りたい問題をお答にならなかったが、しかしこれ以上質問してもまた同じことだと思いますから、これで私の質問は打ち切ります。」

*田中耕太郎文部大臣の答弁は、記憶に残る「名答弁」である。
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by kenpou-dayori | 2015-05-11 15:48 | 自著連載


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