岩田行雄の憲法便り・日刊憲法新聞

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2015年 06月 01日

憲法便り#1020:第七章「戦争の放棄か」、「戦争の否認か」(秘密会による修正案討議③

2015年6月1日(月)(憲法千話)

憲法便り#1020:第七章 「戦争の放棄か」、「戦争の否認か」(秘密会による修正案討議③)

前回まで
憲法便り#1019:第七章 「国権の発動」か「主権の発動」か (秘密会による修正案討議②)

憲法便り#1018 第七章 憲法改正案委員小委員会での論議 (秘密会による修正案討議①)

第七章 憲法改正案委員小委員会での論議 (秘密会による、修正案討議)(p.106-107)
岩田注・この議事録は、50年間公開されなかった。私たちは幸いにして、現在、議事録を目にしているが、安倍政権が施行した秘密保護法は、最長60年とし、また、保存を義務化してはいない。したがって、このような検証も不可能となる。2015年5月31日)

憲法改正案第二章第九条の修正に関する論議は、第三囘、第四囘、第五回、第七回小委員会において集中的に行われた。

【第三回小委員会】七月二十七日(土曜日)
午前十時三十九分開議、午後四時十七分散会
出席委員一四名(全員)、政府委員一名



「戦争の放棄」か「戦争の否認」か

芦田委員長 それから字句の修正が、自由党のほうから出ておりますが、「戦争の抛棄」というのは「否認」としよう、「抛棄」という字は、山田悟六君も委員会で言われたように、戦争権なら「抛棄」で宜しいけれども、戦争を「抛棄」するということは、「抛棄」という字と相容れないと思うのです。何か具体的に物を打ち突けるようなものでなくては、「抛棄」と言わないそうです。もう一つは、「抛棄」という字は漢字制限に引っ掛かって居るから、「抛棄」の「抛」はどうも困る、そこでむしろ英文の意味から言うと、「否認」とした方が宜しいということで、自由党では「戦争の否認」というようにしたのですが、これはどうでしょう。

笠井委員 それは、賛成です。

大島委員 私の所も、大体「否認」とした方が宜しいという主張がありましたので、私も賛成であります。
原 委員 これは、私はやはり前の方が宜しいと思うのです。「否認」というと、頭の形式的な働きのようにも思われるし、「抛棄」というのは、これよりかまだ強い実際的の意味を含んで居る訳なのです。これはもう民法その他の法律には、皆「財産権の抛棄」なんということは、ざらに使って居るのですが……

芦田委員長 戦争権なら宜しいでしょう。戦争権の「抛棄」なら……

原 委員 それは結局、戦争抛棄権というものを持って居るだろうとは思いますが……

芦田委員長 実質においては一致するのでしょうな。

原 委員 「抛棄」の「抛」を「否認」というだけでは、制限的な意味から申しましても、弱いと思うのです。だから「抛棄」は、やはりこれはもう戦争は捨ててしまうのだ、投げるのだという所に、却って意味があると思うのです。これだけ申し上げておきます。

犬養委員 せっかくおまとまりになった所に、また波乱を起すようでありますが、私見を申します。第二章は非常に結構な法文で、この憲法の中の傑作ですが、何だか仕方がない、やめようかというような所があります。何か積極的な摂理として、戦争はいかぬというような字が入れば、なお宜しいと思いますが、そのためにこの委員会が非常に面倒になるなら固執致しませぬ。

鈴木委員 面倒になるどころじゃない。大いにそれは賛成するだろうと思いますがね。

犬養委員 原さんのご説はごもっともと思いますが、一方から言うと、心にあっても「抛棄」するという場合がある、「否認」というと理念的に否定する、こういう風にも考えられないでもないと思いますが、皆さんのお考えを聴きたいと思います。

廿日出委員 それを要求して居るのではありませぬか。
芦田委員長 どれを……

廿日出委員 いまの犬養さんのです。

芦田委員長 犬養さんのは、ご説はごもっともでありますが、そういう調子の高い文句で書くと、前文に書けば非常に映りは宜しいのですが、第何条として多少文学的な調子の高いもので一条を書くということは、なかなか難しいのではないですかね。

原 委員 ちょっと申し落としたのでありますが、「戦争否認」と言えば事実はその通りですが、認めない、戦争を認めない、つまり議論をしてもそれを認めない、そういうことになります。拒否することになります。この「抛棄」とはだいぶ字の意味が違うと思うのです。そういう感じがしますが、どうですか。

芦田委員長 そういう風にも見えるし、また読みように依っては、「否認」ということが強いと思うのです。戦を仕掛けてきたが、俺は戦がいやだと言って、鉄砲を捨ててごろごろ逃げてゆくのも「抛棄」ですね。

犬養委員 そういう風にも取れるが、「否認」ということは、危ないからやめておこうじゃないかという風にも取れると思う。

芦田委員長 それは読みようで、強くも弱くも取れます。

大島委員 「抛棄」というと、戦争をやって居る時とか、何か権利を捨てるという時には宜しいが、全然何もやっていない時に「抛棄」というのはおかしい。持って居るものを捨てるとか、または実際従事していることをやめるという時は、「抛棄」という言葉が適当でありましょうが、実際やって居ない戦争を「抛棄」するというのは、文字の使い方がおかしいと思う。

原 委員 それは、そうではないのです。第二項で、戦争権というものは国家にある。

鈴木委員 戦争権の「抛棄」ですからね。

大島委員 戦争を権利と見る訳ですね。

『憲法便り#821『 「抛棄」は、「放棄」とするのでは』へと続く。
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by kenpou-dayori | 2015-06-01 09:13 | 自著連載


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