2015年 06月 01日

憲法便り#1023第七章「永遠の国是として、戦争の抛棄を宣言す」(秘密会による修正案討議⑥

2015年6月1日(月)(憲法千話)

憲法便り#1023:第七章「永遠の国是として、戦争の抛棄を宣言す」(秘密会による修正案討議⑥)(p.111-114)

前回まで
憲法便り#1022:第七章『 「抛棄」は、「放棄」と直すのでは』 (秘密会による修正案討議⑤)(p.110ー111)
憲法便り#1021:第七章『 「抛棄」は、「放棄」と直すのでは』 (秘密会による修正案討議④)(p.110)
憲法便り#1020:第七章 「戦争の放棄か」、「戦争の否認か」(秘密会による修正案討議③)(p.108-110)
憲法便り#1019:第七章 「国権の発動」か「主権の発動」か (秘密会による修正案討議②)(p.107ー108)
憲法便り#1018 第七章 「小委員会の設置」: 憲法改正案委員小委員会での論議 (秘密会による修正案討議①)

第七章 憲法改正案委員小委員会での論議 (秘密会による、修正案討議)(p.106-137)
岩田注・この議事録は、50年間公開されなかった。私たちは幸いにして、現在、議事録を目にしているが、安倍政権が施行した秘密保護法は、最長60年とし、また、保存を義務化してはいない。したがって、このような検証も不可能となる。2015年5月31日)

憲法改正案第二章第九条の修正に関する論議は、第三囘、第四囘、第五回、第七回小委員会において集中的に行われた。

【第三回小委員会】七月二十七日(土曜日)
午前十時三十九分開議、午後四時十七分散会


犬養委員 私は敢えて固守致しませぬが、さっきの第九条の一等初めに「日本国は、永遠の国是として、戦争の抛棄を宣言する。即ち国権の発動たる戦争」云々というようなことを入れたら、少し強くなりはしないですか。このままだと、何だかどうも、とうとういけなくなっちゃったから戦争は止めようという風に聞こえてならぬです。どうも、そうとれる。しかし、これは国是だ。

鈴木委員 今おっしゃったのは……

犬養委員 「日本国は、永遠の国是として、戦争の抛棄を宣言する。即ち」と入れますか。いきなりぶっきら棒に「国権」としてもどうかと思うから、こういう風にやったら宜しいでしょう。委員長、こういう範囲の修正は可能ですか。

芦田委員長 無論可能でしょう。

佐藤政府委員 どちらでも結構です。

犬養委員 どうも、それは入れた方が宜しいと思う。

原 委員 それは宜いね。

犬養委員 どうも、めそめそしているように思う。

鈴木委員 それは第二項にしますか。

犬養委員 それは一つお考え願いたい。

芦田委員長 犬養君、これはこういう風になさったらどうですか。「日本国は永遠の国是として戦争の抛棄」、そうしてこの第九条の一項に残っているような文句を入れて……

犬養委員 それでも結構です。要は、あまり仕方なしにやめたという感じをもう少し少なくしよう……

廿日出委員 委員長の言うことは、「戦争を抛棄す」ですか。

芦田委員長 日本国は永遠の国是として他国との間の紛争を解決する手段としては戦争、武力に依る威嚇、そういうようなものを抛棄する。そうしないと、この九条の一項を生かしておいて、戦争の抛棄を宣言するとやって、また第九条の一項を入れると、重複するような気がするのです。だから、犬養君の初めの書き出しを以って第九条の一項と合体することにしたらどうかと思うのです。そうでなければ、この犬養さんの所に持って行って、永遠の国是としてむしろ平和を愛好するような趣旨で行くのだというようなことを書いて、それから国権の発動たる戦争云々と入れれば重複しないのですがね。社会党の案に何か平和愛好の意味の箇条があったのではないですか。

鈴木委員 こういう風にしようというのです。「日本国は平和を愛好し、国際信義を重んずることを国是とし、教育の根本精神をここに置く」というようなことを現わせば法律になる―法律になるかならないか疑問だが……

芦田委員長 教育の根本ということは後にして、外務省から来た印刷物に、「国際信義を重んじて条約を守る」ということが何処かにあって欲しいというような意見が出て居りましたがね。

犬養委員 あれは九十四条の削った後に入れようというのです。

芦田委員長 だが、私はあそこに条約のことを入れるのはまずいと思うのです。だから、もし条約のことを入れるのならば、第二章に入れる。

犬養委員 それならご参考までに、ちょっと九十四条を読みます。外務省が今日言って来たのは、「日本が締結または加入した条約、日本の参加した国際機関の決定及び一般に承認された国際法規は、この憲法と共に尊重せられなければならない。」こういうことを第二項に入れたらどうかということを言って来たのです。これはどちらでも宜しいと思うのですが。

吉田委員 いまの文章ですが、社会党の「日本国は平和を愛好し、国際信義を重んじ」、そうしていま犬養氏の言われた「重んずる」、次に「永遠の国是として戦争の抛棄を宣言する。」、こういったことではいかぬですか。

原委員 ここへは犬養君の言われたような、永遠の国是としてというような形で、平和愛好なんていうことはもう入れる必要はないことで、ごく簡単な、わずかな文字だけでその意味を現わすように願いたいと思うのですが。戦争の抛棄も平和愛好ということはすぐ分かりますから……

犬養委員 もしさっき私が申し上げたような修正文が、第九条第一項のおしまいの「永遠にこれを抛棄する。」と、これがかち合うおそれがあれば、こういう行き方も考えられます。「日本国民は永遠に平和愛好者たることを宣言する。国権の発動たる戦争」云々、こうやっても宜しいと思います。

廿日出委員 一つの案ですが、いろいろと折衷しまして、「日本国は平和を愛好し、国際信義を重んずることを国是とし、国権の発動たる戦争」と言って、後は続けても差し支えないと思うのです。

芦田委員長 私の個人の意見としては、平和を愛好するということよりは、世界平和の維持に努力するとか、協力するとかいうことを言いたいのであります。ただ平和が好きだというのみならず、自動的に平和維持のために努力する。

廿日出委員 それではこうしたらどうでしょう。「日本国は恒久平和の建設に志す」……

原 委員 どうでしょう。ただ簡単に犬養君の言うように「日本国家は永遠の国是として、国の主権の発動たる」と持って行ったのでは、あまり短すぎるですか。

犬養委員 おしまいの「永久」を削ってしまうのですか。

原 委員 削ってしまう。

吉田委員 それでも宜しいですね。あっさりして……

犬養委員 法律文らしくもある。

大島委員 私は犬養さんが一番先に言われた「日本国は永遠の国是として戦争の抛棄を宣言する。国の主権の発動たる戦争と武力による威嚇または武力の行使は、他国との間の紛争の解決の手段としては、永久にこれを抛棄する。」を言うからいけないので、「永久にこれを認めない」としたらどうでしょう。「抛棄」するはダブるから感じが悪いので、ここの所を「認めない」としたらどうでしょう。

犬養委員 それも宜しいですね。

森戸委員 「日本国は恒久平和の愛好者として、国権の発動たる戦争」云々というようにしても宜しいと思います。

吉田委員 いま、原君の言われたように、「日本国は永遠の国是として」、それから「国権の発動たる戦争」とずっと続けて行って、先の「永久」というのがあるから、これが邪魔になればこれを除いて、「これを認めない」、こう行ったらどうですか。「日本国は永遠の国是として、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、他国との間の紛争の解決の手段としては、これを認めない。」

犬養委員 「これを抛棄する」でも宜しいですね。

原 委員 どうです。宜しい加減なところでどうでしょうか。

犬養委員 その位の所で落ち着いてはどうです。

芦田委員長 しかし、これは来週まで考えましょう。今日中に考えなければならぬ問題ではないから……

森戸委員 「抛棄」というのはこういう難しい字ですが、僕らが普通に書く時には「放」を書くのですが、普通国民的には「放」ではないでしょうか。字引的にはこの字だけれども……

高橋委員 この「抛棄」という字は、今度の議会の詔勅にもありますね。

芦田委員長 あります。それは条約文にもあるのです。「抛棄」というのは法律には沢山ある。一九二八年の条約などにも使ってあります。

高橋委員 「抛棄」という以上は、「放」というのはまずいでしょう。

森戸委員 それはそうなのですが、漢字制限とかいうことがあれば、易しいのでも構わないのではないかという意味なので、ただ参考までに申し上げただけです。別に固執する訳ではありませぬ。

芦田委員長 こんどの漢字制限の中には、この「抛棄」の代わりに「放」という字を使うことになって居ります。

高橋委員 いまのは、こうなるのですか。「日本国は永遠の国是として、国権の発動たる」と行って、「永久」を取るのですか。

芦田委員長 その点は、なお明日一日各派で考えて、出来るだけ良い案を持ち寄ろうではありませぬか。そういうことにして、今日は最終的にこの文句を決定しないという案はどうですか。

高橋委員 それではそういうことにお願い致します。

芦田委員長 ちょっと、発表文のご相談を致します。「小委員会は午後一時半再会、憲法改正案の前文に関する字句の修正に付き一致点に到達した。次に第一章及び第二章の修正に付き意見を交換したが、結論に達せず、二十九日の会議に持ち越すことにして、午後四時散会した」、この程度で宜しいですか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

芦田委員長 これで宜しければ、そういうことに致します。それでは今日はこれで散会します。

憲法便り#1024:『第四回小委員会』へと続く。
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by kenpou-dayori | 2015-06-01 14:53 | 自著連載


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