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岩田行雄の憲法便り・日刊憲法新聞

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2015年 12月 18日

憲法便り#1476:『9・11直後のアメリカ論(2):キューバ危機とケネディ、二大政党制の危険性』

2015年12月18日(金)(憲法千話)

憲法便り#1476:『9・11直後のアメリカ論(2):キューバ危機とケネディ、二大政党制の危険性』


前回紹介した河内氏の文章の中で使われている、「気が狂う」という表現は妥当ではなく、好きではありません。しかし、その点を除けば全体として肯んぜられるもので、彼が日頃感じていることがひしひしと伝わってきます。
私は河内氏がふれている「根の深さ」は、言い換えればアメリカにおける民主主義の「根の浅さ」、脆弱性に起因していると考えています。
 九月十一日に引き起こされた同時多発テロのショッキングな映像を見ながら、世界経済の先行き不安と同時に、私の脳裏をよぎったのは河内氏が書いているようなアメリカ社会の急激な変化の予見でした。その根拠となったのは、まだ早稲田大学の一年生だった一九六七年に聴いた服部辨之助先生の「政治学」の鮮明な記憶です。彼はソ連がキューバにミサイルを持ち込もうとして一触即発の事態となった一九六二年の「キューバ危機」の時、アメリカに留学中でした。当時のアメリカ大統領はケネディで、彼が一九六〇年の大統領選挙で獲得した選挙人の数こそ共和党のニクソン候補を三〇三票対二一九票と引き離しましたが、全米の一般投票総数では六八〇〇万票のうちわずか十一万八千票の僅差でした。彼は「キューバ危機」の時まで必ずしも評判はよくなく、論敵や政敵も多数存在していました。しかしながら、「キューバ危機」で核戦争も辞さない構えを取り、キューバを海上封鎖したケネディの支持率は急上昇し、アメリカ全体が戦争モードに一変しました。服部先生の友人で、前日までケネディを批判していたインテリ達も一斉にケネディ支持者に変わりました。
 なぜ、アメリカ社会ではこのように歯止めが利かない事態が簡単に起きてしまうのだろうか? それには、基本的政策の九〇パーセントが共通している民主、共和両党しか選択肢がない、二大政党制によるアメリカの政治構造の「根の浅さ」が指摘できると思います。
 ひるがえって日本の政治状況を見ると、元自民党員の鳩山由紀夫氏が民主党と自民党による二大政党制を盛んに主張しています。これが現実のものとなった場合には、日本でも同根の政党間での地滑り的移動が簡単に起こり得ると思います。現に、改憲論議において鳩山氏は「鷹派」の本性を表しています。」
(第3回『アメリカ民主主義の「根の浅さ」と問題の「根の深さ」』に続く)

〔追加のひと言〕日本の国民が目の当たりにしている通り、マスコミも加わって二大政党制、内容抜きの政権交代が煽られ、私の予見は不幸にも現実のものとなりました。


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by kenpou-dayori | 2015-12-18 09:51 | エッセー


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