岩田行雄の憲法便り・日刊憲法新聞

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2016年 03月 24日

憲法便り#1612:【再録資料 四】 憲法研究会『憲法草案要綱』(全文)

2016年3月24日(木)(憲法千話)

憲法便り#1612:【再録資料 四】 憲法研究会『憲法草案要綱』(全文)

民間の研究団体である憲法研究会が、一九四五年十二月二十六日に発表。

内閣に対して参考意見として提出され、GHQにも届けられた。日本政府はこれを採用しなかったが、GHQ民政局に高く評価され、現行憲法の基礎となった。

起草者は、高野岩三郎、馬場恒吾、杉森孝次郎、森戸辰男、岩渕辰雄、室伏高信、鈴木安蔵。執筆者は憲法学者鈴木安蔵(劇映画「日本の青空」で紹介)。

八章五十八条の構成。戦争放棄にはふれていないが、軍に関する規定はない。

原文は、左記の通りの箇条書きで、第○章、第〇条の文字はない。句読点も、濁点もない。


憲法草案要綱 憲法研究会案

根本原則(統治権)
一、日本国ノ統治権ハ日本国民ヨリ発ス
一、天皇ハ国政ヲ親ラセス、国政ノ一切ノ 責任者ハ内閣トス
一、天皇ハ国民ノ委任ニヨリ専ラ国家的儀礼ヲ司ル
一、天皇ノ即位ハ議会ノ承認ヲ経ルモノトス
一、摂政を置クハ議会ノ議決ニヨル

国民権利義務
一、国民ハ法律ノ前ニ平等ニシテ出生又ハ身分ニ基ク一切ノ差別ハ之ヲ廃止ス(現行憲法第一四条、以下カッコ内は同じ)
一、爵位勲章其ノ他ノ栄典ハ総テ廃止ス
一、国民ノ言論学術宗教ノ自由ヲ妨ケル如何ナル法令ヲモ発布スルヲ得ス (二〇、二一、二三条)
一、国民ハ拷問ヲ加ヘラルルコトナシ(三六条)
一、国民ハ国民請願国民発案及国民表決ノ権利ヲ有ス
一、国民ハ労働ノ義務ヲ有ス(二七条)
一、国民ハ労働ニ従事シ其ノ労働ニ対シテ報酬ヲ受クル権利ヲ有ス(二七条)
一、国民ハ健康ニシテ文化的水準ノ生活ヲ営ム権利ヲ有ス(二五条)
一、国民ハ休息ノ権利ヲ有ス、国家ハ最高八時間労働ノ実施、勤労者ニ対スル有給休暇制療養所、社交教養機関ノ完備ヲナスヘシ(二五条)
一、国民ハ老年疾病其ノ他ノ事情ニヨリ労働不能ニ陥リタル場合、生活ヲ保証サル権利ヲ有ス(二五条)
一、男女ハ公的並私的ニ完全ニ平等ノ権 利ヲ享有ス(第二四条ほか)
一、民族人種ニヨル差別ヲ禁ス(一四条)
一、国民ハ民主主義並平和思想ニ基ク人格完成社会道徳確立諸民族トノ協同ニ務ムルノ義務ヲ有ス

議 会
一、議会ハ立法権ヲ掌握ス法律ヲ議決シ歳入及歳出予算ヲ承認シ行政ニ関スル準則ヲ定メ及其ノ執行ヲ監督ス条約ニシテ立法事項ニ関スルモノハ其ノ承認ヲ得ルヲ要ス
一、議会ハ二院ヨリ成ル
一、第一院ハ全国一区ノ大選挙区制ニヨリ満二十歳以上ノ男女平等直接秘密選挙(比例代表ノ主義)ニヨリテ満二十歳以上ノ者ヨリ公選セラレタル議員ヲ以テ組織サレ其ノ権限ハ第二院ニ優先ス
一、第二院ハ各種職業並其ノ中ノ階層ヨリ公選サラレタル満二十歳以上ノ議員ヲ以テ組織サル
一、第一院ニ於テ二度可決サレタル一切ノ法律案ハ第二院ニ於テ否決スルヲ得ス
一、議会ハ無休トス
ソノ休会スル場合ハ常任委員会ソノ職責ヲ代行ス
一、議会ノ会議ハ公開ス秘密会ヲ廃ス
一、議会ハ議長並書記長官ヲ選出ス
一、議会ハ憲法違反其ノ他重大ナル過失ノ廉ニヨリ大臣並官吏ニ対スル公訴ヲ提起スルヲ得之ガ審理ノ為ニ国事裁判所ヲ設ク
一、議会ハ国民投票ニヨリテ解散ヲ可決サレタルトキハ直チニ解散スベシ
一、国民投票ニヨリ議会ノ決議ヲ無効ナルシムルニハ有権者ノ過半数カ投票ニ参加セル場合ナルヲ要ス

内 閣
一、総理大臣ハ両院議長ノ推薦ニヨリテ決ス
各省大臣国務大臣ハ総理大臣任命ス
一、内閣ハ外ニ対シテ国ヲ代表ス
一、内閣ハ議会ニ対シ連帯責任ヲ負フ其ノ職ニ在ルニハ議会ノ信任アルコトヲ要ス
一、国民投票ニヨリテ不信任ヲ決議サレタルトキハ内閣ハ其ノ職ヲ去ルヘシ
一、内閣ハ官吏ヲ任免ス
一、内閣ハ国民ノ名ニ於テ恩赦権ヲ行フ
一、内閣ハ法律ヲ執行スル為ニ命令ヲ発ス

司 法
一、司法権ハ国民ノ名ニヨリ裁判所構成法及陪審法ノ定ムル所ニヨリ裁判之ヲ行フ
一、裁判官ハ独立ニシテ唯法律ノミニ服ス
一、大審院ハ最高ノ司法機関ニシテ一切ノ下級司法機関ヲ監督ス
大審院長ハ公選トス国事裁判所長ヲ兼ヌ
大審院判事ハ第二院議長ノ推薦ニヨリ第二院ノ承認ヲ経テ就任ス
一、行政裁判所長検事総長ハ公選トス
一、裁判官ハ行政機関ヨリ独立ス
一、無罪ノ判決ヲ受ケタル者ニ対スル国家補償ハ遺憾ナキヲ期スヘシ

会計 及 財政
一、国ノ歳出歳入ハ各会計年度毎ニ詳細明確ニ予算ニ規定シ会計年度ノ開始前ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
一、事業会計ニ就テハ毎年事業計画書ヲ提出シ議会ノ承認ヲ経ヘシ
特別会計ハ唯事業会計ニ就テノミ之ヲ設クルヲ得
一、租税ヲ課シ税率ヲ変更スルハ一年毎ニ法律ヲ以テ之ヲ定ヘシ
一、国債其ノ他予算ニ定メタルモノヲ除ク外国庫ノ負担トナルヘキ契約ハ一年毎ニ議会ノ経ヘシ
一、皇室費ハ一年毎ニ議会ノ承認経ヘシ
一、予算ハ先ツ第一院ニ提出スヘシ其ノ承認ヲ経タル項目及金額ニ就テハ第二院之ヲ否決スルヲ得ス
一、租税ノ賦課ハ公正ナルヘシ苟(いやし)クモ消費税ヲ偏重シテ国民ニ過重ノ負担ヲ負ハシムルヲ禁ス
一、歳入歳出ノ決算ハ速ニ会計検査院ニ提出シ其ノ検査ヲ経タル後之ヲ次ノ会計年度ニ議会ニ提出シ政府ノ責任解除ヲ求ムヘシ
会計検査院ノ組織及権限ハ法律ヲ以テ定ヘシ
会計検査院長ハ公選トス

経 済
一、経済生活ハ国民各自ヲシテ人間ニ値スヘキ健全ナル生活ヲ為サシムルヲ目的トシ正義進歩平等ノ原則ニ適合スルヲ要ス
各人ノ私有並経済上ノ自由ハ此ノ限界内ニ於テ保障サル
所有権ハ同時ニ公共ノ権利ニ役立ツヘキ義務ヲ要ス
一、土地ノ分配及利用ハ総テノ国民ニ健康ナル生活ヲ保障シ得ル如ク為サルヘシ
寄生的土地所有並ニ封建的小作料ハ禁止ス
一、精神的労作著作者発明家芸術家ノ権利ハ保護セラルヘシ
一、労働者其ノ他一切ノ勤労者ノ労働条件改善ノ為ニ結社並ニ運動ノ自由ハ之ヲ保障セラルヘシ
之ヲ制限又ハ妨害スル法令契約及処置ハ総テ禁止ス

補 則
一、憲法ハ立法ニヨリ改正ス但シ議員ノ三分ノ二以上ノ出席及出席議員ノ半数以上ノ同意アルヲ要ス
国民請願ニ基キ国民投票ヲ以テ憲法改正ヲ決スル場合ニ於テハ有権者ノ過半数ノ同意アルコトヲ要ス
一、此ノ憲法ノ規定並精神ニ反スル一切ノ法令及制度ハ直チニ廃止ス
一、皇室典範ハ議会ノ議ヲ経テ定ムルヲ要ス
一、此ノ憲法公布後遅クモ十年以内ニ国民投票ニヨル新憲法ノ制定ヲナスヘシ

このページは、国会図書館のホームページ「日本国憲法の誕生」を参考にして作成した。
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by kenpou-dayori | 2016-03-24 09:38 | 講演資料


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