岩田行雄編著『世論と新聞報道が平和憲法を誕生させた!』第四部より
【滋賀新聞】公布記念(十一月三日付一面より)街から村から
[彦根]▲今日三日、市内各学校では、中学校は式典を前日に繰り上げて、全生徒は各競技の校内大会を。
▲高女は創立記念式典に続いて記念式を。
▲女子商は朝八時から奉式後、記念運動会。
▲国民学校は、朝八時から一斉に記念式をそれぞれ挙行。
[愛知]愛知川文化体育協会では、三日夕六時から寶瀧(?)寺で児童談話会を催す。
[蒲生]八幡町八□マッチ会社では、三日午後一時から同工場内で従業員の慰安演芸会を開く。
[安曇]安曇町では、三日十一時町役場で町長以下全吏員、町会議員、並びに部落会長が参集し記念式典を挙行、新憲法公布式の中継放送を聴取し、町長と町会議員代表の祝辞演説を終え、一同記念撮影の後、“新生日本”誕生の祝杯をあげる。
(以下、十一月三日付二面より)〔彦根〕▲「水中の講演会」水口中学は三日午前九時から記念式を挙げ、畠中校長のの訓話の外に、同校寺本教官の新憲法についての講演を聞く。
▲「水女の音楽会」水口高女は三日午前十時から水口校の講堂を借受け、彦根市外多賀出身上池倭子さん(上野音楽学校出身)を招いて、午前午後の二回にわたり記念の音楽会を開催する。
〔八日市町〕「心の寄り処 青年会館 意義ある今日開く」
現代の世相に溺れ、悪に流れ易い青年たちを正しい道にもどし、日本再建の土台石となすべく、自然の中に青年たちを向上さして行きたいと、男女会員約百名を有する八日市町川合寺世年団では、青年たちが共に学び楽しく遊ぶ心の寄り処、青年会館を新憲法公布の三日、元八日市カフェー階下に開くが、この青年会館は会員の大半が勤労者である関係上解放日を毎週土、日曜とし皆が持ち寄ったり町民の寄付によって集まった書籍約百五十冊、ピンポン台などが据え付けられ、この解放日会員はここに集まってお互いに学び遊ぶほか、お互いが持ち寄った問題を討論し合ったり、研究を発表し合うなど皆が和気藹々、自然の中に向上して行きたいという試みで、将来は蓄音機、ラジオなども備えつけレコードコンサートや映画観賞会なども開いて行きたいと、真面目な計画である。
(以下、十一月四日付一面より)「足取りも軽やかに晴れやかな顔々々 湖國の公布記念式」菊薫る明治の佳節、新しい国、民主日本の大道は示され、県民達の足取りも軽やか、記念式に集う顔、顔、顔も晴れやかに、この日湖國は新憲法公布記念の一色に塗りつぶされた。県では正庁で十一時から公布記念式を挙行、知事はじめ部課長、職員ら県当局と県会議員参列し、中央の公布式典実況放送を聴取した後、柴野知事、長野県会議長の祝辞あり、十一時半厳粛裡に閉式した。
(以下、十一月四日付三面より)[大津市]▲大津市の南別所町内会では、三日長等校庭で、快適なレコード音楽の下、お父チャンヤーイ、お母チャン、お兄チャン早くと手を振るヨイ子達の声援のもとに、町内会長を中心とした隣組一同がたのもしいほどに融合し、民主主義日本に相応しい大会であった。
▲大津市立高女音楽班では、三日民主憲法記念の歌を発表した。四年四組金田俊子さんの作詞、佐武教官の作曲で、歌詞は左の通り。
【 民主憲法記念の歌 】一、菊香る霜月三日
新しき国の礎定まりぬ
世界の民ともろ手を組みて
とこしえの平和なる世界へ
二、あけぼのの色さわやかに
力強き国の歩みはととのいぬ
世界の民と共に睦みて
とこしえの平和なる世界へ
[彦根市]彦根市本町町内会では、新憲法公布記念行事として、三日朝午前九時半から城西校校庭で町内運動会を開催。娘さんの糸巻き競争や、親子競争、借り物競走、隣組対抗リレーなど、盛り沢山の番組を繰り出して、爆笑の渦を巻き朗らかな一日を終えた。
[高島]三日新憲法公布を記念する事業として、高島郡今津国民校で児童の競□会、芸能会、音楽会、野球を、高島第三国民校では植林事業を、同第四国民校では相撲大会を、青柳国民校では学芸会を、新儀国民校では図画習字展覧会及び植樹事業を行った。
昭和21年11月4日付『滋賀新聞』一面「新日本の指針は確立」
「足どりも軽やか 晴れやかな顔々々 湖国の公布記念式」の見出し。
昭和21年11月4日付『滋賀新聞』四面「宗教から スポーツから 民主化の窓開く湖北の農村」の見出し。
【写真説明】:「稲の穂波も民主の輝き」
(画像の典拠は、滋賀県立図書館所蔵マイクロ資料より)
【研究メモ】:私が地方紙を集中的に調査した時点では、『滋賀新聞』の必要な期間は、国立国会図書館にはありませんでした。滋賀県立図書館の所在地を確認し、現地調査の準備をしましたが、かなり疲労が重なっていたために、実行するまでに至りませんでした。
そこで、必要最低限の日時を指定して、滋賀県立図書館に調査依頼と、複写依頼を行いましたが、とても親切に対応して下さいました。いまでも、大変感謝をしています。
私は自分自身で資料確認することを研究する上での原則としていますが、国立国会図書館または、現地調査を経ないで、資料収集をした唯一の例です。
*次回は、京都篇。
※平和憲法を守る闘いに寄与するため、2014年5月に下記の新著を緊急出版しました。
『世論と新聞報道が平和憲法を誕生させた!』
―押し付け憲法論への、戦後の61紙等に基づく実証的反論―(これは『心踊る平和憲法誕生の時代』の改題・補訂第二版です)
闘いは、まだこれからも続きます。「押し付け憲法」論、自主憲法制定論に対する闘いに、是非とも本書を活用していただきたい。
ご注文は、下記の書店へ
美和書店 電 話03-3402-4146 FAX 03-3402-4147