岩田行雄の憲法便り・日刊憲法新聞

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2017年 09月 02日

憲法便り#2144:シリーズ『日本国憲法公布、その日、あなたの故郷では、No.34: 和歌山篇』

2017年9月2日(土)(憲法千話)
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憲法便り#2144:シリーズ『日本国憲法公布、その日、あなたの故郷では、No.34: 和歌山篇』

岩田行雄編著『世論と新聞報道が平和憲法を誕生させた!』第四部より、及び補足訂正

【和歌山県】
【 公布記念 】
和歌山県内の祝賀行事に関しては、『朝日新聞』(大阪)、『毎日新聞』(大阪)、『紀州民報』を調査したが、記事を見出すことが出来なかった。

【 施行記念 】
昭和22年5月3日正午、一斉に「平和のサイレン・鐘・太鼓」(和歌山県下)

拙著『世論と新聞報道が平和憲法を誕生させた!』の第四部で和歌山について紹介したのは、以上の通りです。
また、拙著『心踊る平和憲法誕生の時代】および『世論と新聞報道が平和憲法を誕生させた!』の表紙と標題紙に、「本書に反映すべき憲法報道がなかった4紙」として、『北羽新報』(能代)、『南海日日新聞』(奄美大島)、『琉球新報』と並んで、『紀州民報』の名を挙げていました。

【 お詫びと訂正 】
しかしながら、今回のシリーズ掲載にあたって、昭和21年11月3日(日)付『紀州民報』(第七十三号)を改めて読み直したところ、行事に関して、および祝賀広告に関して、全く見落としていた事が判りました。
ここで、『紀州民報』の関係者の方々、著作をご購入下さった方々、図書館等でお読み下さった方々、および和歌山県の皆様に、お詫びを申し上げ、訂正を致します。


見落とした原因は、いくつかの要素が重なってのことですが、最初に見たときに、二面のエッセー(社説に相当する)に目を奪われて、あとは、何回見ても、気がつかなかったこと、「他には何も載っていない」という思い込みです。研究者としては、言い訳にもならない恥ずかしい見落としです。いくら大量の資料を相手に「格闘」していても、あってはならないことです。

和歌山県内の当時の動きに関する情報が少ない中で、『紀州民報』に掲載されている記事は、貴重な資料です。
したがいまして、ここで、『紀州民報』そのものの紹介を含めて、詳しく掲載します。
これまで掲載してきた、『あなたの故郷では』シリーズが収録対象としていた内容と若干違うものもありますが、
シリーズの企画の形式よりも、当時の和歌山県内での出来事を収録することを優先します。
以下に見るように、高い見識と気骨、そしてユーモアを兼ね備えた知識人の新聞です。

【 『紀州民報』について 】
編輯発行兼印刷人:小松茂夫
発行所:和歌山県田辺市上屋敷町二九 紀州民報社 電話一番
発行頻度:月十回 タブロイド判、二頁建て
新聞代: 一部五銭、一ヶ月三円、送料共四円五十銭 

【憲法についてふれている記事】

【 一面 】
【記念行事】
見出し「田辺市の記念式典」
(二段目)
「田辺市の新憲法公布記念式典は三日午前十一時より市役所会議室で厳粛に挙行する。」
【コラム】
『(カエルの絵)の声』
(八段目)
「菊の佳節に新日本の基盤たる新憲法が発布された ▽然し法の制定のみで政治は自動的に進むものではない ▽第一次欧州大戦後のドイツ共和国のワイマール憲法は模範的な民主憲法であったが、ドイツの進んだ道は模範的なナチズムであった。 ▽これは社会秩序の混乱とこれを救済する中道政治へのじゅん教者の無きが為であった ▽健善なる政党は「人民たるの自覚と実力を有する人民の実行の上に立つ」事は言うまでもない ▽法は人外に存せず心中に存する ▽憲法発布のお祝い酒に酔ってる間は有難く、さめて終えば嫌法国民、それでは猫に小判ですハハノンキダネ」
【祝賀広告】
「祝 憲法公布」
の見出しのもとに、個人20名(順序不同)が連名で出した祝賀広告。

【 二面 】
【エッセー】(*「社説」あるいは「論説」とは銘打っていないが、それに相当する文章です。したがって、この文章は、憲法公布を迎えた際の一連の社説等と並べて紹介する予定でした)
「憲法公布のの大なる朝に誓う 新しき酒は古き革嚢に入れる事は出来ぬ」
(紀州民報社同人)名で。
「大いなる苦悩の夜が明けて世紀の朝が訪づれた。・・・・・・
 時將に西暦一九四六年十一月三日、日本の民主々義政治体制を確約する「日本国憲法」が公布されたのである。
 今我等はすべての過去の観念を洗い去りフレッシュな情熱を以て民主々義の理念に生きなければならない。
    *
 然らば民主々義の根本精神とは何であろうか、民主々義の理念は自由であるとか平等であるとか言われて居るが根本精神は人格の尊重であると思うのである。
 自由も平等も其の結果であると共にまた人格の尊重は自我の自覚という事から始まるのである。自我の自覚こそは近世における人間精神の歴史を貫くところの最も大きな流れであり、それは芸術の世界に於いてはルネッサンスとなって現れ、信仰の方面では宗教改革となり、政治生活では立憲運動と言う形をとり、倫理道徳の方面では良心至上主義又は自律主義となって現れて来たのである。それらは偶発的に現れ出た離れ離れの事柄ではなくて自我の自覚と言う力強い一つの根幹から夫々の方面に咲き出た花々に外ならぬのである。
    *
 カントは「自分が思うてみても思うてみても讃嘆措く能わざるものが二ツある。一つは天上に輝く星であり、今一つは胸の中に燦く良心である」と言った。我等も自ら良心に問うて善しと判断したことは怯まず臆せず断行する・・・・・・いわんや理由もないのに権力に盲従したり威武に屈従したりすることは民主々義の根本精神であるところの人格の尊重を冒涜するものであり、自治自律の精神にあ相反する事を、我らは断言するのである。
    *
「新しき酒は古き革嚢に入れることは出来ぬ」と言う。古き特権階級が如何にその地位を利用し己が非を蔽わんと強請しようとも我らは屈しない。真実は新聞の生命とする所、何者をも隠蔽せず、何事をも歪曲せず、只一筋に真理の光をめざして進まん事を、此の大いなる朝に當って、ふたたび読者諸兄姉に誓うものである。(紀州民報社同人)」

【コラム】
「大邊路(おおへんろ)便り」
(三段目から七段目)(*九項目の中の第二項目、第三項目、および第五項目)
第二項目「*大島では憲法発布記念行事として村を挙げての運動会を三日に催すが、当日の商品をつくるため学童から一名十円以上寄付を募る。
第三項目「*歌えや舞えやと憲法発布の日を手ぐすね引いて待っている串本の粋水連、めいめいの趣向を凝らしてひそかに猛練習中であるが、熊野タイムス追手組は四ッ竹で遠く錦富までのす由、彼氏曰く「向うは、農家のことだからね、米袋を用意して行こうと思う」は用意周到」
第五項目「串本婦人会では四日の憲法公布記念運動会にバザーを開き、利益金の一部を串本校修築費に、一部を会の基金にあてる。串本女子青年会では来る二十日頃、大正座で演芸大会を催す。」
【祝賀広告】
「祝 新憲法公布」
の見出しのもとに、地元の企業・商店28社が祝賀広告を出した。

昭和21年11月3日付『紀州民報』一面
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昭和21年11月3日付『紀州民報』二面
右上に、(紀州民報社同人)名でと題するエッセーが掲載されている。
最下段には、祝賀広告。
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(画像の典拠は、国立国会図書館所蔵マイクロ資料:請求記号YB-372)

*次回は、鳥取篇。

※平和憲法を守る闘いに寄与するため、2014年5月に下記の新著を緊急出版しました。
『世論と新聞報道が平和憲法を誕生させた!』
―押し付け憲法論への、戦後の61紙等に基づく実証的反論―

(これは『心踊る平和憲法誕生の時代』の改題・補訂第二版です)
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闘いは、まだこれからも続きます。「押し付け憲法」論、自主憲法制定論に対する闘いに、是非とも本書を活用していただきたい。
ご注文は、下記の書店へ
美和書店 電 話03-3402-4146  FAX 03-3402-4147

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by kenpou-dayori | 2017-09-02 11:44 | 日本国憲法公布、その日、あなたの故郷では


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