岩田行雄の憲法便り・日刊憲法新聞

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2017年 12月 05日

憲法便り#2246:出版予定の『日本国憲法制定に伴う民法改正ー女性の権利確立の視点から』への【追記】の紹介です!

2017年12月5日(火)(憲法千話)

憲法便り#2246:出版予定の『日本国憲法制定に伴う民法改正ー女性の権利確立の視点から』への【追記】の紹介です!

【追記】嫡出否認制度違憲訴訟の,20171129日の神戸地裁判決について

本稿執筆を終了したのちに、神戸地裁判決が報じられました。この違憲訴訟を応援したいと思い、その旨を1130日(木)に、岡山市にある訴訟代理人の作花(さっか)知志弁護士事務所に連絡をし、御意見を伺いました。同日、お礼の言葉とともに、「岩田さんの御判断にお任せ致します」とのお返事を頂きました。翌121日に電話で、作花弁護士の見解を発表した文書について質問し、「弁護士ドットコム」を教えていただきました。以下、122日に掲載された全文を紹介します。題名は、『民法「嫡出否認は夫だけ」違憲の訴え棄却…原告側が主張する「無戸籍児」問題の課題』

「生まれた子どもとの間の父子関係を法律上否定する「嫡出否認」の手続きは、夫にしかできない――。そのな民法の規定が憲法に違反するかどうかが初めて争われた裁判で、神戸地裁は1129日、「違憲でない」とする判断を下した。原告代理人は、控訴する方針を示したうえで「最終的には最高裁で判断してもらいたい」と話している。

●「嫡出否認」の手続きは夫にしかできない

民法上、妻が妊娠した場合、夫以外の男性との間の子どもでも、夫の子として推定される。そして、この父子関係を否定する「嫡出否認」の手続きは、夫にしかできないことになっている。/このような民法の規定について、神戸市の60代の女性とその子どもらが「憲法に違反するとして、国に損害賠償を求める裁判を起こした。しかし、神戸地裁は「合理性がある」として、原告側の訴えを退ける判決を言い渡した。

今回の裁判の背景には、いわゆる「無戸籍児」の問題がある。女性は約30年前、当時の夫の暴力から逃れて別居。離婚成立前に別の男性との間に子どもをもうけたが、出生届を提出できなかったため、子どもは無戸籍になっていた。

原告側の代理人をつとめた作花知志弁護士に今回の判決について聞いた。

●憲法に違反すると主張したが・・・

この事案は、元夫の暴力により元妻が子の出生届を提出できず、その子から親子2代にわたり無戸籍となった家族による憲法裁判です。無戸籍児問題は大きな社会問題として解決が図られているものの、その解決は遠い状態にあります。その解決を目的としたのが、今回の裁判です。

無戸籍児問題は、民法772条による父子関係の「嫡出制定」制度が容易に推定を覆ることを認めていないことと、その嫡出推定の否認権が父にしか認められていないこと(民法774条以下)により生じています。今回の裁判で、次のような主張をおこないました。

1)否認権を父にしか認めず、子や母(妻)に認めていない規定は、法の下の平等を定めた憲法14条に違反する

2)家族関係についての法律は、個人の両性の本質的平等に立脚して制定されなければならないと定めた憲法242項に違反する

 その主張に対して、神戸地裁は次のように判示しました。

a)民法が嫡出否認権を父にしか認めていないことは国会の裁量の範囲内であり、憲法に違反していない

b)ただし、妻が夫から暴力を振るわれるなど、やむにやまれぬ事情により夫と離婚することができない場合のために、個人情報の秘匿等の配慮や、離婚訴訟提起等への支援などが必要である

●「国会の裁量権の範囲内はおかしい

この判決は、民法が定める嫡出推定制度は、早期に父子関係を確定することで子の保護を図ることにあるのであるから、それを子や母(妻)側から否認することを認めると、子が法律上の父がいない状態になるため、父のみに否認権を認めても不合理ではない、としています。/ しかし、そのように早期に父子関係を確定することが、子の保護になるのであれば、逆に父だけに嫡出否認権を保障することは背理なはずです。裁判所が早期に保障されるべきと考えている「父子関係」は「血のつながり」ではないからです。/ それにもかかわらず、民法によって父にのみ、その父子関係を否定する権利が与えられ、子や母(妻)側には与えられていないのですから、やはりその不平等性は決して国会の裁量の範囲内のものではなく、そこから無戸籍児が生まれ続けているように感じています。

●実体法が変わらなければ、無戸籍児が生まれてくる

 また、今回の判決は、「個人情報の秘匿等の配慮や、離婚訴訟提起等への支援」などについて現在の法律制度は不十分であり、法整備が求められると、判示しました。でも、この判決が不十分であるとした内容は、あくまでも手続法についてのものであり、実体法についての法整備は触れられていないのです。/ しかし、手続法が完備されても、現在の嫡出推定制度の厳格さと嫡出否認権が父にのみ認められているという実体法が変わらなければ、無戸籍児が生まれることはなくならないように感じています。/ これらの点において、今回の判決には疑問があります。無戸籍児問題の解決のために控訴をおこなって、さらなる訴訟活動を続けていく予定です。/ 逆に、神戸地裁の判決が指摘した「無戸籍児問題の解決のためには現在の法制度は不完全であり、法整備が求められる」との点を引用して、整備が求められるのは手続法だけでなく、むしろ実体法である民法のほうであると、主張をおこなうつもりです。/ 無戸籍児問題を解決するためには、いわば車の両輪としての手続法と実体法の両方の整備が必要なはずです。

 そして最終的には、最高裁判所で憲法判断してもらい、無戸籍児問題の解決が実現される日が来ることが、原告のご家族と訴訟代理人の私との願いです。」



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by kenpou-dayori | 2017-12-05 21:29 | 民法、女性史


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