岩田行雄の憲法便り・日刊憲法新聞

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カテゴリ:外務省と第九条( 8 )


2016年 04月 06日

憲法便り#1670:外務省と第九条シリーズ:外務省「憲法改正大綱案」(極秘)(1945・10・11)(全文)

2016年4月6日(水)(憲法千話)

憲法便り#1670:【連載:外務省と第九条】外務省「憲法改正大綱案」(極秘)(1945・10・11)(全文)

2016年4月22日の『憲法講演』の資料より

〔資料6〕外務省内の憲法改正問題に関する検討文書より(外務省の公式文書!)
外務省「憲法改正大綱案」(極秘)(1945・10・11)(全文):(注)この文書は、外務省の田付景一条約局第二課長名の『帝国憲法改正問題試案』(1945・10・11)と一対の文書
【 第一 】根本方針 …… 憲法改正ノ指導理念ヲ左ノ通トス
① 天皇ノ地位ニ関スル現行憲法ノ建前ハ、之ヲ堅持スルコト(國體ノ護持)
② 一君ト万民トノ間ニ介在シ来レル従来ノ不純物ヲ除去(注)スルコト(一君万民ノ政治)
(注)内大臣府=天皇の側近。当時は、木戸孝一内大臣が中心。1945年11月24日廃止。
枢密院=天皇の諮詢に応えることを任務とした合議機関。1947年5月2日に廃止。
③ 真ニ民意ヲ基礎トシ、国民ノ福祉増進ヲ目的トスル政治ヲ実現スルコト(民本主義)
【 第二 】具体方策 …… 憲法及附属諸法令ノ改正ニ当リテハ左ノ諸点ヲ考慮スルモノトス
① 憲法改正ハ新日本ノ建設ヲ主眼トシ、ポツダム宣言ノ実施ヲ主眼トスルモノニ非ザルコト、従テ改正ノ範囲ハ、右宣言ノ条項ニ限定セラレザルコト
② 憲法ノ条章中、規定自体ニ不可ナカリシモ、過去ニ於ケル其ノ運用ニ誤リアリタリモノニ付テハ、其ノ運用ノ改正ニ主眼ヲ置クコト
③ 憲法及附属諸法令ノ全部ニ付、改正案ノ出揃フヲ待ツコトナク、事ノ緩急ニ応ジ事項別ニ逐次改正ヲ施スコトトスルコト
④「ポツダム」宣言ノ受諾ニ伴ヒ最小限改正ヲ必要トスル事項、即チ(イ)領土ノ変更(ロ)軍国主義ノ抹殺及(ハ)民主主義ノ中、(イ)ニ関連スル事項ニ付テハ講和条約ノ締結ヲ俟テ確定的ノ措置ヲ講ズルコトトスルコト
【 第三 】改正要目 …… 差当リ直ニ着手スルヲ要スベキ改正項目左ノ通
① 民本主義ノ実現ノ為ノ改正事項
(1)議会ノ組織ニ関スルモノ
イ、貴族院ノ組織ハ衆議院ト同様法律ヲ以テ定ムルコトトスルコト(憲、三四ノ改正、貴族院令ノ廃止、之ニ替ル新法律ノ制定)
ロ、貴族院ニ於ケル華族ノ特権的地位(員数、選挙方法)ヲ軽減スルコト(貴族院令ニ替ル新法律ノ制定)
ハ、衆議院議員選挙ヲ大選挙区制(一府県一選挙区)ニ改ムルコト(衆議院議員選挙法別表ノ改正)
ニ、婦人ニ対シ衆議院議員ノ選挙権及ビ被選挙権ヲ認ムルコト、但シ男子トノ間ニ、年齢ノ差ヲ設クルコト(衆議院議員選挙法ノ改正)…(同じ10/11の閣議決定と違う)
(2)議会ノ活動ニ関スルモノ
イ、議会ニ対シ召集ヲ求ムルノ権限ヲ認ムルコト(憲、七ノ改正)
ロ、議会ノ会期ヲ延長スルコト及議会ニ対シ会期ノ延長ヲ求ムルノ権限ヲ認ムルコト(憲、四二ノ改正)
ハ、議会ニ対シ憲法改正ノ発案権ヲ認ムルコト(憲、七三ノ改正)
② 軍隊ノ解消ニ伴フ改正事項
(1)統帥大権及軍編成大権ヲ廃止スルコト(憲十一、十二ノ削除、大本営令、参謀本部条例、軍令部令、陸、海軍省官制等ノ廃止)
(2)兵役ノ義務ヲ廃止スルコト(憲二十ノ削除、兵役法等ノ廃止)
(3)軍人ノ身分ヲ廃止スルコト(憲十、十九ノ改正、憲三二ノ削除)
(4)戒厳ヲ廃止スルコト(憲十四ノ削除、戒厳令ノ廃止)但シ之ニ代ル非常行政的制度ヲ設クルコト(憲三一ノ活用)

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by kenpou-dayori | 2016-04-06 09:22 | 外務省と第九条
2016年 04月 05日

憲法便り1663:【外務省と第九条シリーズ】の連載を開始しました。

2016年4月5日(火)(憲法千話)

憲法便り1663:【外務省と第九条シリーズ】の連載を開始しました。

憲法便り#1662:【連載:外務省と第九条シリーズ】国連への加盟申請書(こちらへ
[ 2016-04-05 18:23 ]
憲法便り1661:【連載:外務省と第九条シリーズ】元外務省条約局長西村熊雄氏の証言(第5回)(こちらへ

憲法便り#1660:【連載:外務省と第九条シリーズ】元外務省条約局長西村熊雄の証言(第4回)(こちらへ
[ 2016-04-05 16:03 ]
憲法便り#1659:【連載:外務省と第九条シリーズ】元外務省条約局長西村熊雄の証言(第3回)(こちらへ
[ 2016-04-05 15:58 ]
憲法便り#1658:【連載:外務省と第九条シリーズ】元外務省条約局長西村熊雄氏の証言(第2回)(こちらへ
[ 2016-04-05 14:36 ]
憲法便り#1657:【連載:外務省と第九条シリーズ】元外務省条約局長西村熊雄氏の証言(第1回)(こちらへ
[ 2016-04-05 14:15 ]
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by kenpou-dayori | 2016-04-05 18:29 | 外務省と第九条
2016年 04月 05日

憲法便り#1662:【連載:外務省と第九条シリーズ】国連への加盟申請書

2016年4月5日(火)(憲法千話)

憲法便り#1662:【連載:外務省と第九条シリーズ】国連への加盟申請書

2008年に刊行した拙著『検証・憲法第九条の誕生』(第五版)に収録した、国際連合への加盟申請書を掲載します。

(国立国会図書館憲政資料室所蔵外交記録
「第八回公開」マイクロフィルムより)

「国際連合への加盟申請書」(英文は省略)
書簡をもって啓上いたします。本大臣は、日本国が国際連合憲章第四條(注1)に従って国際連合への加盟を申請する旨申し述べる光栄を有します。
千九百五十一年九月八日にサンフランシスコで署名された日本国との平和條約は、千九百五十二年四月二十八日から効力を生じ、日本国は、独立国として、国際の友好関係に復帰しました。
この條約の前文(注2)において、とりわけ、「日本国としては国際連合への加盟を申請し且つあらゆる場合に国際連合憲章の原則を遵守する意思を宣言する」こと及び「連合国は、日本の意思を歓迎する」ことが述べられています。
日本国民は、国際連合の事業に参加し且つ憲章の目的及び原則をみずからの行動の指針とすることを熱望しています。日本国民の間には、諸国間における平和及び協力を助長しようとする国際連合の目的に対し、挙国的な共感がみなぎっています。よって日本国政府は、国際連合への加盟を熱意をもって申請するものであり、また、国際連合の加盟国としての義務を、その有するすべての手段をもって、履行することを約束するものであります。
このような事情の下に、本大臣は、閣下に対し、日本国のこの申請に対し、国際連合の権限を有する機関による妥当な審議が行われるため必要な措置が執られるよう要請する光栄を有します。
日本国政府が国際連合憲章に掲げられた義務を受諾する旨の公式宣言をここに同封いたします。
以上を申し進めるに際しまして、本大臣は、ここに閣下に向って敬意を表します。
昭和二十七年六月十六日 東京において
日本国外務大臣 岡崎勝男
国際連合事務総長 トリグヴェ・リー閣下

宣 言
日本国政府から正当な権限を与えられて、外務大臣岡崎勝男は、日本国が、国際連合憲章に掲げられた義務をここに受諾し、且つ、日本国が国際連合の加盟国となる日から、その有するすべての手段をもって、この義務を遵奉することを約束するものであることを声明する。
昭和二十七年六月十六日 東京において
日本国外務大臣 岡崎勝男
(英文)
Declaration
Tokyo, June 16, 1952
I. Katsuo Okazaki, Minister for Foreign Affairs, having been duly authorized by the Japanese Government, state that the Government of Japan hereby accepts the obligations contained in the Charter of the United Nations, and undertakes to honour them, by all means at its disposal, from the day when Japan becomes a Member of the United Nations.
(Signed) Katsuo Okazaki
Minister for Foreign Affairs of Japan

(注1)国際連合憲章第四条
一、 国際連合における加盟国の地位は、この憲章に掲げる義務を受諾し、且つ、この機構によってこの義務を履行する能力及び意思があると認められる他のすべての平和愛好国に解放されている。
二、前記の国が国際連合加盟国となることの承認は、安全保障委員会の勧告に基いて、総会の決定によって行われる。
(注2)日本国との平和条約(前文)
連合国及び日本国は、両者の関係が、今後、共通の福祉を増進し且つ国際の平和及び安全を維持するために主権を有する対等のものとして友好的な連携の下に協力する国家の間の関係でなければならないことを決意し、よって、両者の間の戦争状態の存在の結果として今なお未決である問題を解決する平和条約を締結をすることを希望するので、
日本国としては、国際連合への加盟を申請し且つあらゆる場合に国際連合憲章の原則を遵守し、世界人権宣言の目的を実現するために努力し、国際連合憲章第五十五条(注3)及び第五十六条(注4)に定められ且つ既に降伏後の日本国の法制によって作られはじめた安定及び福祉の条件を日本国内に創造するために努力し、並びに公私の貿易及び通商において国際的に承認された公正な慣行に従う意思を宣言するので、
連合国は、前項に掲げた日本国の意思を歓迎するので、
よって、連合国及び日本国は、この平和条約を締結することを決定し、これに応じて下名の全権委員を任命した。これらの全権委員は、その全権委任状を示し、それが良好妥当であると認められた後、次の規定を協定した。
(注3)国際連合憲章第五十五条
人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の平和的且つ友好的関係に必要な安定および福祉の条件を創造するために、国際連合は、次のことを促進しなければならない。
a 一層高い生活水準、完全雇用並びに経済的及び社会的の進歩及び発展の条件
b 経済的、社会的及び保健的国際問題と関係国際問題の解決並びに文化的及び教育的国際協力
c 人種、性、言語又は宗教による差別のないすべての者のための人権及び基本的自由の普遍的な尊重及び遵守
(注4)国際連合憲章第五十六条
すべての加盟国は、第五十五条に掲げる目的を達成するために、この機構と協力して、共同及び個別の行動をとることを誓約する。
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by kenpou-dayori | 2016-04-05 18:23 | 外務省と第九条
2016年 04月 05日

憲法便り1661:【連載:外務省と第九条シリーズ】元外務省条約局長西村熊雄氏の証言(第5回)

2016年4月5日(火)(憲法千話)

憲法便り1661:【連載:外務省と第九条シリーズ】元外務省条約局長西村熊雄氏の証言(第5回)

高柳会長: 政府の解釈では、自衛権というのは、いわゆるテリトリアル(領土の)なんだから海外における日本人の保護とか、そういうために兵力を使うというのは、これは自衛権の範囲ではないということですね。アメリカあたりの解釈は、そうではないでしょう。自衛権の解釈は……。
西村参考人 : 自衛隊法にそれをカバーするような条文がないのです。
高柳会長 ただ、これは憲法の解釈が現在、変ってきておりますね。当初から今日まで……。
西村参考人 : そうです。
下田参考人: さきほどの広瀬先生の、外国はどうみているかということは、常識的にはやはり軍隊とみております。日本では一佐、二佐といっておりまするけれども、外国人は何といっておるかというと、カーネル、リューテナント・カーネルと呼んでおります。常識的には。
広瀬委員 : 軍隊でしょうね……。
下田参考人 : そうです。
広瀬委員 : 将来、警察軍になると思いますが、やはりそれは軍であって、警察官ではないと思うのですね。問題はそこですね。
西村参考人 : 警察官ではないですね。
広瀬委員 : 警察官ではない。やはり軍隊だ。警察軍なんだ。そこで、軍隊はやはり国内的にも普通の警察をバック・アップしている警察のうしろにある一つの機関だ。それは同時に世界的な国際警察軍の一翼を担当する、こういうふうにいかなければ、ダメなんだと思う。
高柳会長 : これは少し話が離れますが、吉田さんの「回顧十年」の中に、MSA協定について、幣原さんと吉田さん、その他の方が会って話しをされたことがのっている。そのときに幣原さんは、普通の人と違った発言をされたとかいうようなことをちょっと書いてあるのですが、その会談にはお出にならなかったのですか。それにどんな発言をされたのか知りたいと思って、何か資料がないかと思っておったのですが、それにはお出にならなかったのですね。
西村参考人 : 私は出ませんでした。
下田参考人 : 私も出ておりません。
広瀬委員 : それからもう一つ伺いたいのは、いつかニクソンが来て、日本の憲法に、ああいう言葉を……、第九条を入れてあるのは困る、というような意味のことを言いましたね。あの後、マッカーサーが代わって、リッジウエイになったのですが、その間、ダレス氏は非常に強硬な意見で、日本はとにかく独立国としても重要だし、また世界の一国として世界の平和のために寄与すべし、というような意見をもっておった。それにもかかわらずアメリカあたりも日本の憲法改正について何ら向うからは日本に対して要請しては悪いという態度ばかりだったですか。
西村参考人 : 私の関係しておりました五か年間を通じまして、先方から憲法改正をうんぬんしたことは、一度もございませんでした。
下田参考人 : 私もアメリカに三年おりました間に、官辺筋のみならず、アメリカの国民からも、日本の憲法を改正した方がいいということは、一度も聞きませんでした。これは完全に日本国民の自由だ。自由に決める問題だという態度ですね。
高柳会長 : これは反対党の方からは、アメリカ政府から要請がなされた、ということを始終いうのですが……そういう発言がされておりますね。これは事実と違うのですね。
下田参考人 : はあ、違います。
広瀬委員 : 今度の安保条約について非常に苦労をされたわけですが……まあ、不当な苦労をしたようにわれわれは思うのですが……ああいうことになったことについては、あなた方はどうお考えですか。安保条約の問題を、どうお考えですか。あるいは憲法第九条の問題だとお考えになりますか。これは非常に重要な問題ですね。
外国では、どうなっておるのでしょうか。やはり安保条約自体の問題だと見ておるのでしょうか。
下田参考人 : 安保条約だけの問題とは、見ておりませんですね。うしろに非常にバック・グランドがあると見ておるでしょうね。
広瀬委員 : そのバック・グランドは、ただコミニズムだけと考えるのでしょうか、私は、全学連の活動あたりについて外国の批判はどうあるか、よくわかりませんが。
下田参考人 : 外国人には非常にわからないようですね。理解し難いようです。
広瀬委員 : 国際共産主義だけということに、おっかぶせておいていいだろうか、安保条約を社会党は、これから破棄するといっておる。ああいう大事件があったことについての背後関係というのは、やはり明かにしなければならないと、私は思うのです。外国などにたいしても明らかにしてやらなければ、いけないのではないか……。
高田委員長 : それではこれで本日の会議を終ります。どうも有難うございました。
なお次回は八月二十五日、第四木曜日に開催します。当日は、前法制局長官佐藤達夫氏、法制局長官林修三氏、それから防衛庁の参事官の佐伯喜一氏に、参考人として御出席をいただきます。佐藤、林両参考人からは、憲法運用上の各般の問題について、また佐伯参考人からは、各国の防衛制度について、それぞれ御説明を伺いたいと思います。
午後四時十五分閉会

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by kenpou-dayori | 2016-04-05 16:21 | 外務省と第九条
2016年 04月 05日

憲法便り#1660:【連載:外務省と第九条シリーズ】元外務省条約局長西村熊雄の証言(第4回)

2016年4月5日(火)(憲法千話))

憲法便り#1660:【連載:外務省と第九条シリーズ】元外務省条約局長西村熊雄の証言(第4回)

広瀬委員: スエズの出兵のとき、日本は金を負担したということがあるのですか。
下田参考人: ございません。
広瀬委員: あのときはなかったですか。
下田参考人: スエズ問題のとき、ロンドンで会議がありまして、重光大臣も出席されましたが、経費負担の話しはありませんでした。
広瀬委員: 何か金の負担があったと……。
下田参考人: それは政府でなしに、スエズを利用しております郵船や商船等の船会社が負担したことはあるかもしれません。
広瀬委員: 政府としての問題はなかったのですね。それからとにかく第九条と条約の関係では、国際法的に国連のいわゆる集団的自衛権は日本は持たないという解釈をとっているわけですね。
西村参考人: とっております。
広瀬委員: そうすると、国内法の第九条からくる制限のために、これから国連下における集団的自衛権もだめだと……。
日本は吉田(首相)さんが「日本は貧乏だ」といわれたころとまるで違ってしまって、今日は相当なものになった。日本は人口が多いということからも、経済能力からいっても世界ではもう五番目にははいるでしょう。貿易の上でもなかなか最近はいい。とにかくこれだけの国がそんなびっこでいる―ゆがめられているといってもいいのですが―と私は思うのです。集団的自衛権がないというびっこの形でおることが国連加盟国の一員として堂々たる―堂々たるという文字をつけたいと思うのですが―一員としてあなた方が外交上、貿易上、その他の点から困るということを感ずることはないのですか。
下田参考人: 集団的自衛権がないという明確な否定は、最近新安保条約に関連しての国会の答弁で、一回も申したことはないんです。日本の場合は、集団的自衛権を以て説明する必要がないという言い方をしております。集団的自衛権そのものは、平和条約でも安保条約でも、日本は個別的、及び集団的な固有の自衛権を持つということになっております。ただ集団的自衛権という言葉を不用意に使うと、日本はあたかもアメリカまで守りにいくような誤解を与えるので、通常の意味における集団的自衛権というものは確かに日本の場合には該当しない。該当しないとすれば、誤解を招くような表現はなるべく避ける。現実に日本の場合は個別的自衛権ですべて説明がつくのであるから、あえて集団的自衛権をもって説明をする必要はないという言い方をしておるわけです。
広瀬委員: わかりました。そこで私の言いたいことは、外交官の諸君は苦しい立場が相当あるのだろうと思うのですが……。日本がこれから貿易の関係とかいうような面でも、こんなびっこでおることが非常に不利益になるということもないのですか。
下田参考人: ワシントンにおりましても、政府からそういうことを正式にいってくることは全然ございませんね。占領時代に日本におりました将軍や提督連中がすでに責任のある地位を退きまして、気楽な発言をしておりますが、今日アメリカでウエスト・アンド・ジャパンというくらい、西欧諸国と肩を並べて経済力を高く評価されている日本は、もう少し自衛力を……。
広瀬委員: そういうことですね。要するに安保条約の前文にあったようなことですね。それからダレスが言ったように、独立国として世界の一員として寄与するところあるべしという心持は相当あるでしょうね。
下田参考人: アメリカ国民の内心抱いておる感情でございましょうね。ただ政府の表向きの要請としては決して出てこない。
広瀬委員: そういうことは相当あると思う。それからこれは見通しの問題になるのですが、私どもは独立国として自衛の軍を持つべきだ。しかしながら、自衛の軍は持っても同時に、世界の平和組織にわれわれは加盟する責任を負う。自衛の軍は持つけれども、世界の平和組織の中に責任をもって入るのだ。これだけは憲法に明記したい。そういうぐあいにして集団的自衛権のできる形に持っていきたいと思うのです。そこで憲法を改正するとすれば、軍縮というものに順応した憲法の改正をしなければならない。これはあとのことでどうなるかわからないことであるけれども、これからの軍縮は、管理のもとにおける軍縮であると考えている。その管理のもとにおける軍縮を考える場合には、各国の立場からすれば、いわば自国の警察をバックアップするだけの自衛軍がなければならない。そうしてそれが同時に国際警察軍つまり国連警察軍の一翼を担当し得るものでなければならない。こういうぐあいに持っていかなければ第九条に変わるものはできないと思うのですが。そこで私のお伺いしたいことは、どういうぐあいにするかということよりも、一体管理下における日本の軍縮の将来、世界の軍縮の将来、それに対して日本が今の日陰者のような自衛隊式のことでいって、どういう立場になるかということを非常に心配しているのです。今の自衛隊というものは国際的にみれば軍隊とみることができるか。非常にむずかしい問題で外交官としておっしゃれないことかもしれませんが。
西村参考人: 私だけの考えですけれども、最近の軍縮問題のなりゆきをみておりますと、軍備縮小ということではなく、アメリカの意向もソビエトの意向も、軍備撤廃です。それでソビエトは軍備を撤廃して自国の防衛に必要な警察力を維持しようというし、アメリカの考え方は軍備を撤廃して国際警察軍をつくろうといいます。こういう考え方で、根本的には双方近いと思います。軍備縮小ではなくして、軍備の撤廃です。そして各国とも、警察軍隊をおくということです。ですから、そういう見地からみますと実現するには、十年かかるか、二十年かかるか、ずいぶん先のことでございましょうけれども、憲法のような長い時代にわたる根本的な制度をうちたてるものの形としては、現在の憲法第九条は、表現はとにかくとして、精神と実質からいいますと、今日の軍備撤廃の到達点を表現しておるものといえるのではないかと思います。軍隊をもたない、しかし警察隊だけ持つという、この考え方に一致しておるものでして、少し手を入れれば、まさに今日の世界の帰する、大勢に合致した、もっとも進歩した憲法だと言っていいように思うのです。
ただ外交の面から見ますと、今日の自衛隊について一番困る点は、海外派兵は出来ないとされていますので、従って、国連憲章の下にとられる国際警察行動にいっさい参加しないという方針がとられていることであります。もっとも憲法第九条の第一項、第二項に手を入れなくても、国連憲章の下に行なわれる国際警察行動には参加できるという性格が自衛隊に与えられるならば、第九条は日本の外交にさしつかえになるようなことはなくなろうと個人的には考えておりますが。
矢部副会長: 下田さんから今お話しの国際警察軍のことで伺おうと思ったのですが、たとえば今コンゴに派遣されているとか、またスエズ事件のようなときとか、ああいうものには日本の自衛隊は参加できない、という解釈を外務省はとっておるわけですか。
西村参考人: スエズ問題のときですか、そういう解釈をとっておりました。
下田参考人: まあ公務員の海外派遣という名目で、戦争行動には参加しないで、それ以外の平和的措置、たとえば運河の清掃行動に参加するのはさしつかえないという説もありました。
西村参考人: スエズの事件ではなくて、レバノンのとき―レバノンにアメリカが出兵した当時―国連からそういう要請があって、自衛隊をすぐにという……。
広瀬委員: それで金を出したと私は思う。スエズでも金を出したと思う。
高柳会長: 法律の解釈ではそうなっておりますね。
広瀬委員: 海外派兵ということではないのですか……。
西村参考人: 私は憲法の解釈だと思うのです。憲法の解釈として、自衛隊は海外に派遣しない方針が決定されていて、それが歴代政府によって国会で声明されておりますので、やはりそれにしばられると思います。
高柳会長: それに基づいて法律ができているわけでしょう。
西村参考人: なにもございません。

第5回に続く。こちらへ
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by kenpou-dayori | 2016-04-05 16:03 | 外務省と第九条
2016年 04月 05日

憲法便り#1659:【連載:外務省と第九条シリーズ】元外務省条約局長西村熊雄の証言(第3回)

2016年4月5日(火)(憲法千話)

憲法便り#1659:【連載:外務省と第九条シリーズ】元外務省条約局長西村熊雄の証言(第3回)

高田委員長 新安保条約改定に触れた問題というのがございますれば、合わせてお話しを伺いたいと思います。
下田参考人 実は私、新安保条約の締結まではアメリカにおり、まあ国外からは見ておりましたが、実際の交渉の衝には当ってはおりませんので、あるいはもしお話し申し上げる必要がございますれば、高橋現条約局長をお呼びになった方がいいかと思います。私は条約ができましてから後、国会での関係になりましてから……。
大石委員 日本は国連の一員になっておるけれども、軍事的な負担はやらないということについて、現在でも他の諸国ははっきり認めているのでしょうか。こちらの意図は先ほどのお話しでも非常に明らかのように、軍事負担はしないのだという了解のもとに国連に加盟したということになっておるということですけれども、それは客観的にもそうなっておるのでしょうか。現在その点はいかがでしょうか。
西村参考人 加盟申請書は外務大臣の声明をそえて各加盟国に送付されています。また、その後ずいぶん長い間かかって日本の加盟は安保理事会と総会で審議されたのでございますので、日本の特殊条件といいますか、日本の加盟申請の特殊な意義は各加盟国で承知の上可決になったものだと思います。
大石委員 それから先ほどのお話しでわかるように、当時の吉田首相の意見が非常にはっきり出ておりましたけれども、吉田首相としてはやはり、今下田さんからお話しがありましたように、当時の日本の経済的条件、といったことが問題なんで、憲法第九条の解釈それ自体としては、日本は永久に戦力は持てないのだというたてまえからいったのではなく、その当時の刺激的な条件を顧慮して戦力は持てないのだ、という点ははっきりしているのでしょうね。その点いかがでしょう。
西村参考人 御説の通りに考えます。吉田総理は、四つの理由を申されましたけれども、主な理由は三つで、憲法上の困難はつけたしとまでは申しませんけれども、「憲法上の困難もありますよ」ということだと思います。まあ、先方の希望に応じられない一つのよりどころといったふうに考えております。
大石委員 それから第三点ですが、外務の衝の方々としては、アメリカでも、ソ連でも日本は決して憲法上永久に武力は持てぬのだというように考えないで、かえって逆に持てるということを前提としての意見であったという話でしたが、その連合国側の意図がはっきりわかっておっても、なおかつ外務省当局の憲法解釈としては、戦力は持てぬのだというたてまえをずっと固執しておったのでしょうか、あるいはそれは政策からきていたのですか。
西村参考人 政策ではなくて、それは御指摘の通りだと思います。ほんとうに平和条約の交渉に当られたダレス代表、アリソン公使やマグルーダ国防省占領地行政担当官が、日本の憲法の特殊性を知っておらなかったとも思われません。しかし、ソ連、その他の連合国は日本憲法第九条を知っていなかったと思います。と申しますのは、御承知のように、平和条約発効直後ヨーロッパに(フランス大使として)赴任いたしましたが、任国外務省の諸君や外交団の同僚諸君で、日本が憲法上軍隊を持てない国であるということを知っているものは一人もいなかったからです。こちらから進んで実はこういう国であると説明しますと、そういう国が今あるのかとびっくりするというようなことでございました。日本の憲法第九条は、制定された当初においてはアメリカあたりでも相当知っておった人もあると思いますが、今日どこの国をとらえても第九条第二項を知っている政治家や当局者はないのではないかという印象を持っています。
高柳会長 今の点ですが、「by all means at its disposal」と書いてありますが、これは今の国連の加入のときに、日本の憲法の下では、日本から軍隊を呼び出すというようなことはできない、というようなことも考えたという何か証拠があるんですか。そういうディスカッションでもあったということは何もありませんでしたか。
下田参考人 実は国連加盟申請書の苦心の作は、西村前局長がお話しになった通りですが、この加盟が実現いたしましたのは、私の条約局におりましたときのことですので、一言申し上げたいと存じます。加盟申請後、ときの移るに従いまして、政府当局の考え方もだんだん変りました。先ほどの第九条と自衛力増強の関係の問題も、まあ御承知のように、自由、民主両党合併の際なんか、民主党の方から芦田さん、重光さんが条件をつけて、逆に自衛力増強について注文が出るというようなこともあり、吉田内閣時代の「再軍備は絶対にいたしません」という空気と、だいぶ違って参りました。また国際的に見ましても、すでに朝鮮事変の際も現実に軍事的措置に参加した加盟国はごくわずかで、大部分の加盟国は参加していない、たとえ参加しても衛生兵だけしか出さないというような有様でした。大部分の国が軍事的措置に参加しないで、しかもそれで何ら憲章上の加盟国の義務に反していないという事態が発生しておりました。その後も同様の事例があって、加盟国の大部分は現実には軍事的措置に参加しないで済んでおる。それですからこの問題は私が局長をしておりましたころはすでにアカデミックな問題になって了っておりまして、理論的には議論が行なわれましたけれども、現実問題としては憲法第九条のために国連の加盟が妨げられる、あるいは国連加盟後に義務が履行しえないことになるというような危ぐを政府当局が抱いたことはないように思っております。
高柳会長 とすると国際会議でも第九条を留保するというような明文はなくても、そのことは含まれているのだ、というようなことについて議論を始めた人はいないのですね。
西村参考人 ございません。そういう点で、冒頭に申しましたように過去を振り返ってみますと、わたしが局長をいたしておりました五年間は結局憲法制定直後であったということと、占領下の時代であったということで、全く神経過敏に第九条を気にして諸般の問題を処理していたといえましょう。その後は国内的にも改正論も出てきたときでしてその時々の情勢の要求に応じた考え方に立って外交がなされたというふうにみております。

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by kenpou-dayori | 2016-04-05 15:58 | 外務省と第九条
2016年 04月 05日

憲法便り#1658:【連載:外務省と第九条シリーズ】元外務省条約局長西村熊雄氏の証言(第2回)

2016年4月5日(火)(憲法千話)

憲法便り#1658:【連載:外務省と第九条シリーズ】元外務省条約局長西村熊雄氏の証言(第2回)

(第1回の続き)

西村参考人:いよいよ先方の代表が来日しそうだという情勢になり、総理から官邸に呼びだしがありまして「合衆国軍隊の駐留を認めることによって日本の安全を保障する趣旨の条約案を書け」という御命令をうけました。それでそれにそった安全保障条約案を作成して提出いたしました。その後さらに呼び出しがありまして、今度は全く違った考えに立つ条約案すなわち朝鮮と日本を非武装地帯にし、かつその周辺の非常に広い範囲内にアメリカ、ソ連、中国、イギリスが平時ある程度の陸、海、空軍を配備することによって、西太平洋地域の平和と安全を確保する趣旨の条約案を書けという命令がございました。これはなかなかむずかしい条約でございますけれども、とにかく軍事専門家の協力を得て、一案を作成いたし提出しました。こうして二つの条約案ができました後、アメリカの方で対日平和七原則を発表―これを合衆国は連合各国の送りました―いたしました。その中に安全保障という一条項がございまして、そこには、合衆国、またはその他の連合国の軍隊と日本の提供する施設との協力によって日本地区の安全を維持すること、といってありました。それで初めて日本政府は、合衆国が平和条約そのものの中に合衆国軍隊の駐屯条項を置く考えであることをはっきり知ったわけであります。しかしこの平和条約に駐屯条項を置く考えは絶対に承服できない、というのは文面は一応日本地区の安全のためとありましても、実際は同時に、当時日本の平和条約履行、とくに日本の南下に対して非常な懸念を示していたフィリピン、インドネシア、豪州、ニュージーランドのためにする安全保障ともなるからです。それゆえこちらで用意してあるような平和条約とは別個に日米間に安全保障条約を結び、その一条項として合衆国軍隊の駐留を認めるべきであると考えた次第であります。交渉がはじまりまして、先刻申し上げましたように、再軍備に関する先方の希望を日本で拒否いたしました関係上、こちらから独立回復後軍隊を持たないで、こういうふうにして安全を保障する方針であるといって、総理から進んでかねて用意してありました安全保障条約案を提示されたいきさつになっております。結局この案がもとになって最近新安全保障条約によってとって代わられましたが、旧安全保障条約ができた次第でございます。交渉の経緯とか旧条約の内容とかにつきましては御承知のことでございますから、説明申し上げません。
ただ申し上げておかなければならないことは、旧安全保障条約を交渉いたしましたとき一番気を使いましたのは、砂川事件でも問題になりましたように、軍隊は持たない、戦争は放棄するという明文規定のある憲法のもとで、条約によって外国軍隊を国内に駐屯させることが憲法違反になりはしないかという点であったということであります。憲法は自らの軍隊を持たないというのである、だから条約に基づいて外国軍隊を置くことまで否認していない、つまり条約によって駐留する外国軍隊は、日本の軍隊にはならない、憲法の規定は文字のとおりの解釈をすべきであろうという考えを持って安保条約を締結された次第でございます。
条約ができました後、第九条との問題についてむずかしい問題がいろいろ生じたことは御承知のとおりでございますが、わたくしの一番気になりますことは、平和条約でも明言しておりますし、また国連憲章にも明言しておりますように、国家は個別的の、また、集団的の自衛権を持っておるのであり、そして集団的自衛権という観念のもとに現在の安全保障体制は組み立てられておりますが、この場合、安保条約のもとにおける日米間の関係においては、日本に対して外部から武力攻撃があった場合合衆国が発動する自衛権は集団的自衛権であるけれど、日本は自国に対する武力攻撃であるから個別的の自衛権を発動するのであるという考えがとられております。これが今日の解釈でございます。私どもが旧安保条約を交渉しましたときはその点を深く考えないでいました。一日も早く平和条約を獲得して、とにかく独立を回復したいというのが先に立っておりましたので、第九条の問題も、主として条約によって外国軍隊を日本に置くことが憲法第九条との関係において問題になるかどうかという点に限定されていた次第であります。
第三は、国際連合加入申請の場合でございます。平和条約ができまして、日本は一九五一年の秋に批准を完了いたしました。御承知の通り平和条約の前文には、日本は国際連合に加盟する意思を表明し、連合国はこれを支持することをうたっております。それで平和条約の批准が完了すれば、その次に日本がやるべきことは、一日も早く国際連合へ加盟申請の意思表示をすることだと考えました。
それでその趣旨にもとずき事務的に研究を始めまして、まず第一に作製いたしましたのが国連加盟申請書でございます。このときまた憲法第九条との問題にぶつかりました。と申しますのは、国連憲章第七章の「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」の規定をみますと、国連加盟国はいわゆる平和維持のための集団的軍事行動に参加し、これに協力しなければならないことになっております。もっとも先決条件として各加盟国と安全保障理事会との間に特別協定ができなければなりませんから、(戦前の)国際連盟の場合と違って国際連合においては安保理事会の決定する集団安全保障措置が発動される場合には、好むと好まざるとを問わず加盟国はその義務を履行しなければならないたてまえになっております。したがって黙っておれば、日本は国連憲章の規定によりまして当然安保理事会の決定する集団安全保障のための軍事行動に参加し、またこれに協力をしなければならないことになります。いわゆる国際的軍事行動に参加する義務を負うことになりますが、これは一見憲法第九条の関係で実行できない国際的義務でございます。だから憲法第九条に基く留保をする必要があると結論したわけであります。国際連合事務総長あて加盟申請文の最後に日本政府の声明として、日本は国連に加盟したあとは国際連合憲章から生ずる義務を忠実に果たす決意であるということを宣言いたし、そのあとに、ただし日本政府はこの機会に戦争を放棄し、陸海空軍三軍を永久に所持しないということを明らかにしている憲法第九条に対し注意を喚起するという一項をつけ加えておいたわけです。当時はまだ占領管理のもとにございましたので、―占領管理がはずされましたのは翌年の昭和二十五年四月でございます。私どもがこの案文を書きましたのはその前でございます―外交部の友人に感想を求めたことがあります。外交部の友人から、日本政府として直接憲法第九条に注意を喚起するとまでいう必要はないではないか、間接的にそれをいった方がいいのではないかというサゼッションがございましたので、確定した文書では間接に言うことになりました。原文は御参考までに見ていただきたいと思いますので残しておきます。(一六三頁参照)一九五二年六月十六日づけで、事務総長宛に発送されております。
そこでは第九条を直接いわないで、日本政府はその有するあらゆる手段によって国際連合憲章から生れる義務を遵守するが、日本のディスポーザル(注disposal=処置の仕方、思い通りにできること) にない手段を必要とする義務は負わない、すなわち軍事的協力、軍事的参加を必要とするような国際連合憲章の義務は負担しないことをはっきりいたしたのであります。この点は忘れられておりますけれども、この機会に報告しておきます。この国連加盟申請は、それより以前に日本議会が国連憲章とその不可分の一体をなしておりまする国際司法裁判所規定への参加承認を経ました上で、今申し上げましたように、一九五二年六月十六日正式に提出された次第でございます。
以上私が関係いたしました外交問題で憲法第九条に直接間接関連して考えさせられた諸問題でございます。その後憲法第九条の問題について外務省として関係されましたのは私のあとを引き継がれた下田公使でございますので、その辺のことは同公使の御説明をお聞きくださるようお願いします。
(引き続き下田参考人の話しがあるが、本書では省略し、その後の質疑応答に移る)

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by kenpou-dayori | 2016-04-05 14:36 | 外務省と第九条
2016年 04月 05日

憲法便り#1657:【連載:外務省と第九条シリーズ】元外務省条約局長西村熊雄氏の証言(第1回)

2016年4月5日(火)(憲法千話)

憲法便り#1657:【連載:外務省と第九条シリーズ】元外務省条約局長西村熊雄氏の証言(第1回)

2008年に刊行した拙著『検証・憲法第九条の誕生』(第五版)から、1960年8月10日に行われた
西村熊雄元外務省条約局長の証言を、5回にわたって掲載します。
 

(典拠は、国立国会図書館憲政資料室所蔵「西沢哲四郎旧蔵憲法調査会資料」より引用)


憲法調査会第三委員会第二十四回会議議事録より
昭和三十五年八月十日(於 全国町村会館)
午後一時三十七分開会

出席委員 村上義一、大石義雄、高田元三郎、広瀬久忠、八木秀次、
委員以外の出席者 高柳賢三会長、矢部貞治副会長
委員 大西邦敏、田上穣治
専門委員 佐藤 功
参考人 広岡謙二、堀田政孝、西村熊雄、下田武三

当日の進行は、初めに、国防会議事務局長・広岡謙二参考人の「国防会議の活動状況等について」の話しと質疑応答、第二に、元外務省条約局長・西村熊雄参考人及び前外務省条約局長で当時は外務省審議室審議官・下田武三参考人から「日米安保条約の締結、国連加入、MSA協定の締結などにおける第九条の運用上の問題点」についての話しと質疑応答の順で行われた。
本書では、西村参考人の話しと後半の質疑のみを収録した。(傍線は、編著者岩田による)

西村参考人 御紹介いただきました西村でございます。今日は憲法第九条との関係で、条約局長をいたしておりました当時当面しました三つの問題、すなわち平和条約、安保条約および国連加盟の申請について、第九条に直接、間接関係した事柄を説明するようにとの御要求でございました。私が条約局長を拝命しましたのは、昭和二十一年の十一月三日新憲法が制定されましてから間もなくのことでございました。本日御出席の下田君に局長の席を譲りましたのがちょうど二十七年の四月末でございまして、平和条約発効直後でございました。したがって、私が働いておりました約五か年間は、憲法制定の直後であるということと、もうひとつ、占領軍総司令部の厳重な監督のもとに外交を行なっていた時期であることを特徴としますので、概して申しますと、その当時の外務事務当局は新憲法第九条の精神を文字通り外交の面で守ることにあらゆる注意を払った、と申し上げていいと思います。
それで憲法第九条の関係で第一にぶつかりました問題は平和条約でございます。平和条約の交渉になりますまで、外務事務当局は常時対日平和問題を中心とする国際情勢を調査いたしまして、随時きたるべき平和条約に関する連合国の構想、それに対する日本政府の対策というようなものを作業いたしておりました。
今日これらの作業を振り返ってみますと、こちらの想定として、連合国は平和条約のなかで新憲法の根本原則を再確認してくるであろうという予測をしておりました。そうしてその対策としてわが方は真の独立国として完全な自由意志に基ずく自国の憲法を持つべきであるから、新憲法の大原則を平和条約で再確認させられるようなことのないよう連合国に要請すべきであるということをうたっておりました。一九五一年の一月に第一回の日米交渉にはいりましたとき、一月二十六日初めてアメリカ側から議題表を受け取りましたが、その第三項が再軍備でありました。そこには、もし軍備を置くとするならば、日本の再軍備を制限するためにいかなる規定を設くべきかということがかいてございました。他方共産三国のリーダーとして対日平和問題に大きな発言権をもっておりましたソ連は、一九五一年の九月五日の第二本会議において、米英が作りました平和条約案に新たな追加条項としまして、日本の軍備制限条項をそう入することを提案しました。すなわち、陸軍を十五万人、海軍を人員二万五千人、艦船七万五千トン、空軍を戦闘機及び偵察機二百、運送機、訓練機、救助機その他百五十機、外にタンク二百、こういう規定を置くべきであると提案しました。これではっきりしますように、平和条約の交渉となってみますと、英米、またソ連も日本国憲法が戦争を放棄し、陸海空の三軍を持たないと定めていることを完全に無視しまして、アメリカの方では日本に再軍備をさせ、それにある種の制限条項を置こうという意向であるに対し、ソ連は今申し上げましたようにはっきり陸海空三軍について日本の保有量を具体的に規定する考えでいたわけでございます。これは主として国際情勢のしからしめたところでありまして、外務事務当局が交渉にはいる前の数か年間(の、)連合国は日本に新憲法の原則を平和条約で再確認させはしまいかという懸念は一掃されてしまった次第であります。
日米間の交渉にはいって第一日から先方の希望する再軍備についていかように対応するかという問題があったわけですが、再軍備問題に対する日本政府の態度は、全く当時の吉田総理の決定によったものでございます。先方から交付されました議題表に対して、日本政府の態度を簡単な文書で提示し、そのあと両代表間の話し合いにはいることになりまして、まず議題各項目について日本政府の根本態度が文書で先方に出されました。その文書のうち、再軍備、安全保障、領土というような問題についてほとんど総理の口述によるものであります。再軍備については、次のようになっています。「日本の経済復興がまだ完全でなくして再軍備の負担に耐えない。次に今日の日本にはまだ軍国主義の復活の危険がある。さらに日本の再軍備は近隣諸国民が容認するようになってからしなければならない。最後に憲法上の困難がある。以上の理由によって再軍備は不可能である。」というのであります。この態度は最後までかえられませんでした。先方も、結局、日本が再軍備できない事情は了解したが、いつまでも再軍備しないで、国の安全を米国の好意にまつわけにはいかない。独立国として平和愛好国の一員として応分の力を世界の平和のために致すべきである、という趣旨を述べました。それで再軍備問題の討議は終っております。そういうわけですから、先方の希望した再軍備につきまして憲法第九条があったことは日本の立場を先方に容認させる一つの理由になっているわけであります。新憲法第九条は日本の外交を通す一つの道具になったといえましょう。
第二は安全保障条約の場合であります。この問題は日米両代表間の問題であるというよりも、むしろ外務省内部での問題であったと申さねばなりません。当時の国際情勢から考えまして、一方では、平和条約によって日本の独立が回復したあとにも、アメリカ軍隊の駐留を認めるのでなければ、日本の独立は与えられないであろう、という情勢判断が生まれたのであります。他方、憲法は軍隊を持たない、戦争を放棄すると言っておりますから、条約によって外国軍隊の駐留を認めることは果して憲法上許されることであろうかどうか、という疑問が生れるわけであります。政策的にいうとどうしても平和条約がほしい。だが平和条約を得るためには合衆国軍隊の駐留をどうしても認めざるを得ないという次第です。しかし占領後そう長い年月もたっておらず、また新憲法の第九条は強く国民の頭に響いております。加うるに将来世界における日本の外交政策をどうすべきかという問題についてアメリカ側ことに占領軍の最高責任者の口から、日本は極東のスイスたれ、としばしば言われておりました。
こういう事実を前にして、合衆国軍の駐留を認める日米間の安全保障体制をつくるためには頭の切りかえを必要といたします。従って中立政策論と自由陣営参加論とが対立して、決することが出来ない状況でありました。いよいよ平和条約交渉を差し迫って参りまして、どうしても独立後の日本の安全保障体制を考え、その具体案を用意しなければならない段階になりまして、事務当局の間で、安全保障対策要綱というようなものを作成しました。それは第一に、できるならば合衆国軍隊の駐屯地点を日本本土外の島に限ること、第二に憲法第九条との関係で国内的に問題を起さないために、まず国際連合総会において、日本の安全が極東の平和に直接関係する重要問題であることを認めると同時に、よって日本の安全の維持を合衆国に委託するという趣旨の決議をしてもらい、この決議に基づいて日米間に安全保障の取りきめを結び、その一環として合衆国軍隊の日本駐留を認めること……こういう考えを採用したものでありましたこの事務当局案を吉田総理に提出いたしましたが、総理から「以来事務当局経世国的経りんなし、社会党の口吻のごとし、いま一段の工夫を要す」というような評言を付けて差しもどされたことがあります。

(続きは、憲法便り#1658ヘ)
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by kenpou-dayori | 2016-04-05 14:15 | 外務省と第九条