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2015年 05月 31日

憲法便り#816 ♪ 杉並ぞうれっしゃ合唱団 ♪ 2015 ファミリーコンサート(6月25日)

2015年5月31日(日)(憲法千話)
2015年6月5日加筆:小林久枝さんからの手紙の部分
2015年6月7日加筆:末尾の部分

憲法便り#816 ♪ 杉並ぞうれっしゃ合唱団 ♪ 2015 ファミリーコンサート 平和と愛と子どもたち

このチラシを送って下さった、小林久枝さんからお手紙が届きましたので、紹介します。

岩田登美子様

『ぞう列車』は、小学校の教員をしておりましたときに出会い、
学芸会用に脚本を書いて、何回か発表しました。

教え子と合唱団に入り、いっしょに舞台に出たこともあります。

いまは、教え子のお母さんが、いっしょに歌っています。
孫たちも大好きで、舞台に出ています。

『かわいそうなぞう』とちがい、
ぞうを戦禍から守り、
戦後の民主教育の中で、
子どもたちの願いをかなえるところが、
気にいっています。

小林久枝

【2015年6月7日加筆部分】

当日は、妻とともに聴きに行く予定です。

実は、2006年6月25日、この会場で、「杉並シンフォニーの会」のお招きにより、憲法講演を行ったことがあります。

また、『ぞうれっしゃ』の原作者小出隆司さんと、昨年8月2日に、歴史教育者協議会の研究大会に参加した帰りに、友人の紹介で、初めてお目にかかる機会がありました。

彼は、拙著『世論と新聞報道が平和憲法を誕生させた!』を購入してくださり、さらに他の著作も求めて下さった。
そして、名古屋のご自宅にお帰りになった後で、サイン入りの『そうれっしゃ』をお贈くり下さった。
そんなこともあって、今回のコンサートを、とても楽しみにしています。
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by kenpou-dayori | 2015-05-31 20:41 | 音楽・舞台芸術・芸能・映画
2015年 05月 31日

憲法便り#1019:第七章 「国権の発動」か「主権の発動」か (秘密会による修正案討議②

2015年5月31日(日)(憲法千話)

憲法便り#1019:第七章 (秘密会による修正案討議②)

前回まで
憲法便り#1019:第七章 憲法改正案委員小委員会での論議 (秘密会による修正案討議)

第七章 憲法改正案委員小委員会での論議 (秘密会による、修正案討議)(p.106-107)
岩田注・この議事録は、50年間公開されなかった。私たちは幸いにして、現在、議事録を目にしているが、安倍政権が施行した秘密保護法は、最長60年とし、また、保存を義務化してはいない。したがって、このような検証も不可能となる。2015年5月31日)

憲法改正案第二章第九条の修正に関する論議は、第三囘、第四囘、第五回、第七回小委員会において集中的に行われた。

【第三回小委員会】七月二十七日(土曜日)
午前十時三十九分開議、午後四時十七分散会
出席委員一四名(全員)、政府委員一名


「国権の発動」か「主権の発動」か

芦田委員長 それでは、第二章に入ります。これも社会党の修正案から……

鈴木委員 これは私が出そうと思って居る内に、自由党から出されてしまったのですが、「国権の発動たる戦争」、こう直すように―これは法律的に「主権の発動たる戦争」というのは変なのです。

芦田委員長 どうも私共もこれを法律的に説明出来ませぬが、佐藤君、あなたの方が説明は正確だろうと思うのですが……

佐藤達夫政府委員 委員長以上のご説明は出来ませぬ。

芦田委員長 あなたの意見を一つ―国権とやる方が宜しいか、国の主権とやる方が宜しいか、鈴木君からのお話しも委員会に出て居る筈ですが……

鈴木委員 戦争に訴える権力の問題です……

佐藤政府委員 私の方の少くとも今日までの考えでは、国権として戴いた方が宜しくはないか、その意味で国の主権という言葉を使って居ります。

鈴木委員 国権という方が簡略で宜しい。

佐藤政府委員 前文の後ろの方に「自国の主権」ということがありまして、それとの関係を実は密かに心配して居りますので、これは皆様のお教えを仰ぎたいと思います。

鈴木委員 前文の方はあれで宜しいが、大綱で独立性という言葉を意味して居るのですから、それこそ主権ということばを使うとすれば使える。こっちの方は戦争ですから、国権の発動です。何も一つの言葉を使っていけないということはないでしょう。統治権という言葉を使うか使わぬかということは、別の問題になります。それから社会党は、この総則の方へ持って来るならば、いま一条平和愛好国であるというようなことを出したいと思った。日本国は平和を愛好し、国際信義を重んずる―これは法律に直すにはかなり難しい技術を要しますが、これは道義的の規定になりますから、ほかにも道義的の規定は沢山ありますけれども、その趣旨は前文に出ておりますから、無理にそういう一条を設け、或いはこの前に出すことはないと思います。強いて固執は致しませぬが、皆さんのご意見を伺います。ただ戦争をしない、軍備をみな棄てるということは、ちょっと泣き言のような消極的な印象を与えるから、先ず平和を愛好するのだということを宣言しておいて、その次にこの条文を入れようじゃないか、そういうことを申し出た趣旨なのであります。

【憲法便り#1020: 「戦争の放棄」か、「戦争の否認」か、へと続く。
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by kenpou-dayori | 2015-05-31 11:20 | 自著連載
2015年 05月 31日

憲法便り#1018 第七章 憲法改正案委員小委員会での論議 (秘密会による修正案討議)①

2015年5月31日(日)(憲法千話)

憲法便り#1018:第七章 憲法改正案委員小委員会での論議 (秘密会による修正案討議)

第七章 憲法改正案委員小委員会での論議 (秘密会による、修正案討議)(p.106-107)
岩田注・この議事録は、50年間公開されなかった。私たちは幸いにして、現在、議事録を目にしているが、安倍政権が施行した秘密保護法は、最長60年とし、また、保存を義務化してはいない。したがって、このような検証も不可能となる。2015年5月31日)

【小委員会および速記録について】

平成七年に刊行された速記録の「まえがき」には次のように書かれている。
「この「第九十回帝国議会衆議院帝国憲法改正案委員小委員会速記録」は、昭和二十一年七月二十五日から八月二十日までの間に秘密会で開かれた帝国憲法改正案委員小委員会の速記録を原文に忠実に収録したものである。(中略)
帝国憲法改正案委員小委員会の速記録は、昭和三十一年五月十日の衆議院議員運営委員会決定によって国会議員に限り閲覧を許可されることとされ、それ以外には、特例として憲法調査会委員に閲覧が許可されたのみであった。
この速記録公開の問題については、衆議院議会制度協議会等においてかねてから熱心に協議がなされてきたが、平成七年六月十六日の衆議院議院運営委員会において帝国議会時代の衆議院秘密会議事速記録(懲罰事犯の件を除く)の公開が決定されたものである。そして、その実施に当たっては、まず「第九十回帝国議会衆議院帝国憲法改正案委員小委員会速記録」を刊行し、引き続き「帝国議会衆議院秘密会議事速記録集」を刊行することとしている。」(後略)

【小委員会の構成(十四名)】

昭和二十一年七月二十三日
「芦田均委員長の指名により委員会で選出された小委員」


芦田 均(日本自由党)
廿日出 厖(日本自由党)
江藤夏雄(日本自由党)
犬養 健(日本進歩党)
吉田 安(日本進歩党)
鈴木義男(日本社会党)
森戸辰男(日本社会党)
林 平馬(協同民主党)
大島多蔵(新政会)
笠井重治(無所属倶楽部)

昭和二十一年七月二十五日
「芦田均委員長により第一回会議で追加指名された小委員」


北 令吉(日本自由党)
高橋泰雄(日本自由党)
原 夫次郎(日本進歩党)
西尾末広(日本社会党

なお、政府委員としては、佐藤達夫法制局次長が出席した。

【小委員会が行われた日時】

第一回(七月二十五日)
第二回(七月二十六日)
第三回(七月二十七日)
第四回(七月二十九日)
第五回(七月三十日)
第六回(七月三十一日)
第七回(八月一日)
第八回(八月二日)
第九回(八月八日)
第十回(八月十日)
第十一回(八月十三日)
第十二回(八月十六日)
第十三回(八月二十日)

憲法改正案第二章第九条の修正に関する論議は、第三囘、第四囘、第五回、第七回小委員会において集中的に行われた。

『憲法便り#1019』へと続く。
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by kenpou-dayori | 2015-05-31 11:07 | 自著連載
2015年 05月 31日

憲法便り#1017芦田委員長による改正案委員会論議のまとめと、小委員会の設置

2015年5月31日(日)(憲法千話)

憲法便り#1017芦田委員長による改正案委員会論議のまとめと、小委員会の設置

第六章の前回まで、
憲法便り#1016 第九条:笹森順造委員(日本民主党準備会)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(9)
憲法便り#1015 第九条:高橋英吉委員(日本自由党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(8)
憲法便り#1014 第九条:山崎岩男委員(日本進歩党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(7)
憲法便り#1013 第九条:笠井重治委員(無所属倶楽部)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(6)
憲法便り#1012 第九条:加藤一雄委員(日本自由党)の質問の続き:『検証・・・』(第六版)第六章(5)
憲法便り#1011 第九条:加藤一雄委員(日本自由党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(4)
憲法便り#1010 第九条:山田悟六委員(日本進歩党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(3)
憲法便り#1009 第九条:鈴木義男委員(日本社会党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(2)
憲法便り#1008 第九条:野坂参三委員(日本共産党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(1)
憲法便り#1014 山崎岩男委員(日本進歩党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(7)
憲法便り#1013 笠井重治委員(無所属倶楽部)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(6)
憲法便り#1012 加藤一雄委員(日本自由党)の質問の続き:『検証・・・』(第六版)第六章(5)
憲法便り#1011 加藤一雄委員(日本自由党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(4)
憲法便り#1010 山田悟六委員(日本進歩党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(3)
憲法便り#1009 鈴木義男委員(日本社会党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(2)
憲法便り#1008 野坂参三委員(日本共産党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(1)


『検証・憲法第九条の誕生』(増補・改訂 第六版)(p.103ー105)より
第六章 第九十回帝国議会 衆議院憲法改正案委員会での逐条審議(8)


改正案委員会の審議は、第九回(七月九日)で一般質疑を終了し、第十回(七月十一日)から逐条審議を開始した。第九条に関する審議は、第十二回(七月十三日)の後半と第十三回(七月十五日)の前半において、集中的に行われた。
そして、憲法改正案委員会の論議は、第二十回をもって終了し、「小委員会」での論議に引き継がれることになる。
本書第七章は、小委員会の論議の中から、憲法第九条、特に「戦争放棄」の表現の確定までの、様々な論議を引続き掲載する。
(2015年5月31日加筆部分)

【第二十回委員会】七月二十三日(火曜日)
午後一時四十七分開議、午後一時五十五分散会
出席委員四十二名・国務大臣八名・政府委員一名


【芦田委員長による改正案委員会論議のまとめ】
「世界が依然として偏狭な国家思想と民族観念に囚われている限り、戦争の原因は永久に除かれない」


芦田委員長 会議を開きます。本日は第九十八条以下の質疑に入るのでありますが、本条より第百条までは発言の申し出がありませぬ。これにて第十一章に対する質疑は終了致しました。
昨日まで二十回(十九回の誤り)にわたる会議において、憲法改正案に対する審議は詳細にかつ熱心に行われました。本日質疑を終了せんとするに当たり、委員長より政府に要望する点を二、三明白にしておきたいと存じます。

一、本改正案は、憲法付属の諸法典と相俟って、初めて完全なる運用を期待せられることは、言うまでもないことでありますが、皇室典範、国会法、参議院法、内閣法その他の多数に上る各種の法令は、政府の準備が整わないために、必ずしもその全貌を捕捉し得たとは考えませぬ。然るに改正憲法はここ数ヶ月にして実施せられるのでありますから、政府は一日も速やかにこれら憲法附属の法典を起案し、国民の世論に問う準備を進められんことを望みます。
二、本改正案が軍備を撤廃し、戦争を否認して、人類の平和を永遠に確保する理想を掲げたことは内外の斉(ひと)しく歓呼を以って迎えたところであります。しかしながら、単に我が国が戦争を否認するという一方的行為のみを以っては、地球表面より戦争を絶滅し得る訳ではありませぬ。すでに成立して居る国際連合機構といえども、その組織は戦勝国の平和維持に偏重した機構であって、いまなお敵味方の概念に支配せられた感なきを得ませぬ。我が国としては更に進んで、一視同仁の思想による普遍的国際連合の建設に邁進すべきであり、これを以って精神的に世界を指導する気迫を明示すべきであると信じます。
三、本改正案の運用に当たっては、すべからく、新世界に適応すべき民衆を教養することから出発しなければなりませぬ。世界が依然として偏狭な国家思想と、民族概念に囚われて居る限り、戦争の原因は永久に除かれないと思います。しかし真に世界平和の理想に向かって、民衆の思想感情を養成することは、非常に困難を伴う仕事であります。私は政府が将来この点に一層の注意を払われんことを要望致すものであります。
四、過去二十日間にわたる本委員会の質疑応答において、政府が改正憲法の法理的究明に、多大の努力を致されたことは、十分に諒といたすものであります。しかしながら、民主主義憲法の運用は法理のみに依って完璧を期し得るものではありませぬ。本委員会に現われた限りにおいて、政府が民主主義政治の運用に付き、内政外交の両面にわたり、新日本の建設に相応しき方策と、これを実行する熱意とを示すことに躊躇(ちゅうちょ)せられた感のあることは、国民に多少の失望を与えたこととおもいます。政府当局は自ら新憲法の精神を身に着けて、日本再建の先陣となり、官界、財界、各方面の民主化を徹底して、以って諸外国が信頼と友誼(ゆうぎ)とを以って我が国に対処するごとく、十二分の努力を払われんことを熱望する次第であります(拍手)。ご異議はありませぬか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

これにて帝国憲法改正案に対する質疑は終了しました(拍手)。これより委員会は、憲法改正案の討論に入るのでありますが、議事の進行上、十名位の小委員会を設け、修正案の取扱いを担任させることと致したいと存じます。

【小委員会の設置と付託について】

芦田委員長 さように決定致します。ついては、右小委員会の選挙の方法に付いて、おはかり致します。

鈴木義男委員 委員の選挙に付きましては、便宜選挙を省略して委員長のご指名に致したいと思います。

芦田委員長 鈴木君の動議にご異議ありませぬか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

芦田委員長 それでは委員長より小委員会の委員を指名致します。
廿日出厖君、江藤夏雄君、犬養健君、吉田安君、鈴木義男君、森戸辰男君、林平馬君、大島多蔵君、笠井重治君、これに不肖(ふしょう)委員長が参加して合計十名の小委員会を構成することに致します(拍手)。
つきましては、議題の条文に付いて修正等の意見ある場合には、すべてこれを小委員会に付託いたしまして、小委員会において修正に対する意見をまとめることとして進行致します。また、小委員会は案文全条にわたって検討する権能を持つことに致したいと思います。小委員会において一応の成案を得る運びに至りますれば、各派においてこれに対する態度決定する順序となるのであります。小委員会が成案を得ました時には、即刻委員会を開きこれを報告した後に、討論に入ることに致します。小委員会の開会に付いては後刻通知いたします。本日はこれにて散会致します(拍手)。

憲法便り#1017:第七章へと続く。
「戦争放棄」の表現確定までの、論議、論争です。是非ご一読、リツイートを!
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by kenpou-dayori | 2015-05-31 10:34 | 自著連載
2015年 05月 30日

憲法便り#1016 第九条:笹森順造委員(日本民主党準備会):『検証・・・』(第六版)第六章(9)

2015年5月30日(土)(憲法千話)

憲法便り#1016 第九条:笹森順造委員(日本民主党準備会)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(9)

第六章の前回まで、
憲法便り#1015 第九条:高橋英吉委員(日本自由党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(8)
憲法便り#1014 第九条:山崎岩男委員(日本進歩党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(7)
憲法便り#1013 第九条:笠井重治委員(無所属倶楽部)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(6)
憲法便り#1012 第九条:加藤一雄委員(日本自由党)の質問の続き:『検証・・・』(第六版)第六章(5)
憲法便り#1011 第九条:加藤一雄委員(日本自由党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(4)
憲法便り#1010 第九条:山田悟六委員(日本進歩党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(3)
憲法便り#1009 第九条:鈴木義男委員(日本社会党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(2)
憲法便り#1008 第九条:野坂参三委員(日本共産党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(1)
憲法便り#1014 山崎岩男委員(日本進歩党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(7)
憲法便り#1013 笠井重治委員(無所属倶楽部)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(6)
憲法便り#1012 加藤一雄委員(日本自由党)の質問の続き:『検証・・・』(第六版)第六章(5)
憲法便り#1011 加藤一雄委員(日本自由党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(4)
憲法便り#1010 山田悟六委員(日本進歩党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(3)
憲法便り#1009 鈴木義男委員(日本社会党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(2)
憲法便り#1008 野坂参三委員(日本共産党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(1)


『検証・憲法第九条の誕生』(増補・改訂 第六版)(p.97ー103)より
第六章 第九十回帝国議会 衆議院憲法改正案委員会での逐条審議(8)


改正案委員会の審議は、第九回(七月九日)で一般質疑を終了し、第十回(七月十一日)から逐条審議を開始した。第九条に関する審議は、第十二回(七月十三日)の後半と第十三回(七月十五日)の前半において、集中的に行われた。

【第十三回委員会】七月十五日(月曜日)
午前十時二十四分開議、午後四時十五分散会
参加委員五十六・国務大臣六・政府委員四名



笹森順造委員(第十二回委選定・日本民主党準備会)の質問
「「放棄」よりも「排除」の方が適切ではないか」

芦田委員長 笹森順造君。

笹森委員 第二章の見出しに「戦争の放棄」という文字があり、第九条の第二行目に「放棄する」とありますが、この放棄という文字に付きまして、もっと適切な文字があったならば改めても宜しいというお考えがあるやにも伺って居ったのでありますが、このことでもう少しお尋ねを申し上げたいと思います。第九条の……

芦田委員長 笹森君に申し上げます。同じ質問は山田悟六君より既に出ているのであります。政府はこれに対して答弁を与えられて居りますが、その他の角度からのご質問ならば宜しかろうと思います。

笹森委員 他の角度からであります。それは先ほども総理大臣がお話しになりまして、単に戦争を放棄するばかりではなく、自衛権をも否定して、進んで世界の平和国家の先頭に立つということを仰せになって居りますることからしても、単にこれは国際連合というものに加入し、これに依存するという立場から、更に一歩を進んで、日本が独自的にこの目的を達成せしむるというようなことから考えますると、一昨日金森国務相が仰せになりました、否定、認定、断念というような言葉を用いようとしたが、結局放棄となったというのであるが、それよりもっと進んで、むしろ日本の国土全体を戦争に参加せしめないというように考え、或いはまた進んで日本が世界の指導者となるという観点からするならば、この放棄という文字は弱い。これはむしろ排除という文字を使ったならばどうか。
英語の方の翻訳を見ますと、「レナンシェーション」(renunciation)という文字が使ってあるようでありますが、この意味の内容は、単に棄てるという意味ばかりではなく、「レジェクト」「レフューズ」する、これを拒否する、こっちから止めてしまう、排除するという風に考えて居りますので、これは英文はこのままで結構でありますが、この「放棄」を「排除」とすればもっと適切で、しかも意味がもっと徹底するではないかということから、金森国務相にこの点を、簡単なことでありますが、お尋ねしたい、こういうことであります。

金森国務大臣 排除するですな。

笹森委員 排除、押し除ける、そうするともっと積極性がある、こういう意味で申し上げたのであります。
金森国務大臣 いまお示しになりました排除という言葉と放棄するという言葉と、何れが適切であるかということは、もっとよく時間を戴いて考えて見ないと正確なお答えは出来かねますけれども、差し当たり考えて見ましても、何か排除するというだけでは放棄ほど決意が十分に表われない、傍らの方に向けるだけであって、不十分なような気がします。はっきり致しませぬから、この程度で止めておきます。

笹森委員 次に「国の交戦権はこれを認めない」とある、この憲法の効力の及ぶ地理的範囲と、ここに掲げて居りまする国の範囲とを明白に伺いたい。これは四つの場合があるのじゃないか。世界のあらゆる所であらゆる国の交戦権を認めないというのか、第二に或いは全世界のあらゆる所で我が国の交戦権を認めない、他国の交戦権は認めないというのか、第三の場合の我が国土内であらゆる国の交戦権を認めないが、他の地域での交戦権は認めるというのか、第四の場合の我が国土内で我が国の交戦権を認めないが、他の交戦権は認めるというのか、こういう四つの場合があると思いますが、どんな狭義に考えましても、この憲法の効力は我が国土全体に及ぶものと考えられる。したがって、我が国土内では如何なる国の交戦権をも認めないとするということが、つまり先ほど私が排除しようというような意味と関係を持って居るのであります。即ち我が国は如何なる地域においても戦争をしないと解するのは無論当然でありまするが、その以上にいま申し上げたようなことを考えて見たい。我が国土を外国同士の戦争の基地化するのを認めないのは、これは国家として当然であるし、過去の日本の軍事基地は一切棄却さるべきものであり、また今日占領軍の関係して居りまする日本国内における軍事施設も、占領軍が撤退後我が国に返却された後においては、これらの軍事施設を一切棄却し、或いは排除し、転用せらるべきことも無論である。そうなりました暁において、爾後、如何なる事態においても、我が国土の戦争基地化を拒絶し、如何なる国の交戦権をも我が国土内において認めないことにすることが、国土の安全が保たれる所以であると思う。
これが即ち日本の国に戦争が来た時、ただ棄てるというのでは弱いので、どんなものが来ても排除してしまうというような意味で、先ほど申したことと関連して居りますが、結局するところ、国の交戦権というものは、憲法の及ぶ地域的範囲、及びここに掲げた国というものの定義及び範囲を明確にお示し願いたいと思うのであります。

金森国務大臣 お話しの次第をよく考えて見ますると、お示しになりました排除という言葉もよく分かるように思います。この憲法を起案致しましたのは、日本の国防として効力あらしめようという趣旨であります。したがって縦(よ)しや日本の土地の中でありましても、今日国際法上認められて居ります他国の交戦権の類を日本が一方的に拒否することは、これは国内法上の問題として扱うに致しましても、国際法に反し、また国際信義にも反することでありまして、これは困難なことと思う訳であります。理想と致しまして、いまお示しになりましたように、日本の領域内におきましては、一切の国の戦争行為に付いて、第九条に該当するものは全部これを排除するということは、確かに一つの考え方でありまして、将来それに向かって努力することに意義があると思いまするが、しかしいまの段階におきまして日本が致しますることは、直ちにこれを以って国際法上の変動を行うという所までは、遺憾ながら進んでは居りませぬ。結局、日本がこれを放棄するという趣旨であります。而して第二項に色々なこれを認めないという規定があります。これも日本国の働きに付いて言うのでありまして、したがって行われまする地域は必ずしも日本国ばかりではないかも知れませぬが、国と国との関係が起りまする場合には、もとより日本の領域内においても日本の主権の発動というものは考えられまするから、地域は広くなるかも知れませぬ。しかし、考え得る主体は日本国だけの働きという意味であります。

笹森委員 次には、反乱鎮定のために警察は武力を行使し得るか、或いはまたこの場合に警察の強制力は武器を使用しても武器とはみなさないか、第九条の関連に付いてお尋ねしたいのでありますが、将来平和条約の締結後、いずれの時にか、もしも不幸にして国内の一地方に反乱が起って、一地方を占領し、独立を宣言したという場合に、日本は戦争を放棄したのであるから、その反乱者に対しては戦力に依る鎮定が出来ないことになる。出来ないとすれば、皇土の安全を保たれず、国家は破滅に瀕するのであります。よって、この場合には、警察権の強力な発動に依って鎮定するのは、国内問題として第九条の発動に依って許されなければならぬものだと思う。この点に関して特に警察官が帯剣し、或いは拳銃を使用して隊伍を組んで行動して居りますることが将来、反乱鎮定行動、或いは暴徒鎮定行動となった場合に、やはりこれは武力の行使ということ以外になるのではなかろうか。かって西南の役(せいなんのえき)の時に警視庁の巡査隊が許されたことなども、色々思い合わされる。この場合において、結局第九条に決めて居りまする戦力との区別、限界を明確にお示し願いたいのであります。

金森国務大臣 第九条は、第一項も第二項も戦争ということに着眼して居る訳であります。したがって、国内の治安を維持するために実際上の力を用いることは禁止しては居りませぬ。ある場合に警察官がこの機能を発揮して、治安を擁護することは、もとよりなし得べきことであり、なさなければならぬことと思うのであります。しかしながら、どの程度までが警察権であり、どの限度を越えますれば陸海空軍の戦力となるか、許されるべき範囲と、許されざる範囲というものが起って来て、これは理論的にどこかに境界線が明白に存するものと思う訳であります。ただ実際におきまして、もしも国内治安維持のための警察力ということに言葉をかりて、陸海空軍の戦力そのものに匹敵するようなものを考えまするならば、やはりこの憲法第九条に違反となります。運用の上におきましては、誰が見ても警察権の範囲と認める程度において実施すべきものと考えて居ります。

笹森委員 ただいまの戦力の問題に付いて、進んでお尋ね申し上げます。
第九条の規定におきまして、放棄又は否認せられるべき武力および戦力のことが書いてありますが、この定義および内容を判然と承りたい。武力と申しますと大抵明らかでありますが、戦力ということになりますと、少々明瞭を欠く観念が出て来るのであります。広義に申しますと、あらゆる国力が戦力に関係してくる、これが従来の考え方であります。そこでこの戦力というものを、全くここから切り離して、平和的、経済的、或いは文化的に経済力といい、文化力ということを明確に区別して置かなければならぬ必要を感ずる。一般の生産力、軽工業、重工業等の工場に致しましても、ある場合には直ちに戦力に転用せられることがあり得るというのが従来の考え方であり、事実そうでもありましょう。またそれらの諸施設ばかりでなく、飛行場のようなもの、戦闘飛行機を除いた飛行機、或いは港湾、汽船、汽車、自動車、電信電話その他の施設と申しましても、武力、戦力以外の平和国民生活の施設として、当然ますます発達せしめなければならぬものが沢山ある。この武力、戦力と平和的な経済国力、文化力というものの限界を明確に示して戴いて、この「認めない」というものの中に入らないものを、はっきりとここでお示し願いたいと思うのであります。

金森国務大臣 かような言葉は、中心の所は誰でもすぐ諒解を致しますけれども、その内容の周辺に当る所、つまりどこまで行けば戦力になり、どこまで行けば平和力になるかという限界は、なかなか決めかねる点があります。大体の基本の原則と致しましては、一国の戦闘力を構成することを常の姿として居る力、これを戦闘力というものと思うのであります。新たに学問上発達致しましたところの特殊なる戦争手段の如きは、陸海空軍でなくても、もとより戦力であり、多数の人間に多くの生命身体に関する変化を惹起するというような手段は、これに入ると思うのであります。
しかし、もっぱら平和の目的に使わるるということに依って説明が出来るような、而して、つまり一般の経済的な設備等は、この戦力には入るものではない、こういうように考えて居りまして、現実の設備が戦力であるかどうかは、総合的な判断に依って決めるより外はないものと思って居ります。

笹森委員 最後に、司法大臣にお尋ね致したいのであります。
この憲法の条文に違反者があった場合に、特にこの第二章に対して違反者のあった場合の処罰等に関するお考えのご用意を伺いたいのでありますが、ここでは特に「国の交戦権は、これを認めない」とあります。ところで、国と申しましても、国民がその中に居って活動することでありますから、不幸にして自衛権を発動しなければならない場合が出来て、国民が国土内で武器を持つ以前に腕力或いはその他の器物で正当なる自己防衛を行うというような場合でも、それが違法行為となるのかどうか。そうであるとするならば、これを如何に処罰するということになりますか。先ずこの点を第一に伺って、もう一つお尋ねをしたいと思います。

木村司法大臣 お答えします。
自衛権の発動であるや否やということは大問題でありまするが、いまお話しの通り、武力行使せずに単に腕力で以ってこれを自衛した場合にどうかというご質問のように受け取れましたが、それはその時の場合に、果たしてそれが交戦権と認められるや否やということで解釈が違ってくるだろうと思います。勿論この交戦権の範囲に属すると認められた場合は、憲法違反になることは当然であります。これは、只今でも刑法に、いわゆる国交に関する罪という規定があります。将来またこの憲法の線に沿うて、刑法も改正されるので、それに依って取り締って行きたいと思います。

笹森委員 次に、我が国民が外国在住中に外国の軍隊に入り、戦争に参加するということは、違憲行為でありますかどうか。即ち、外国が他の外国と戦争した場合、または外国が我が国を相手として戦った場合、そのほか、その時に外国に在った国民で、強制的又は任意的に外国の軍隊に加わって戦った例は、幾らでも過去においてあります。この憲法通過後においてかかる行為をするならば、憲法違反行為になるかどうか。ただ仮にそうだとした場合に、我が国の法律の効力の及ばない外国に在る間は事実上、処罰されないということがあったにしても、その者が日本国民である以上は、やはり違憲行為をした事実が存在する間は責任が存するではないか。そういう者が日本に帰って来たならば、直ちに責任を取らるべきではないか。過去において日本が行った戦争参加の有力なる指導者は、現に公職追放されて居るのであるが、日本国民でありながら外国軍隊に加わって、やはり日本攻撃の重要役割を演じた者は、当然公職追放以外に、反逆者として厳重に処断せらるべきものではなかろうか。かかる違憲行為者があった場合には、どういうことにお取り扱いをなさるのであるか。この点に付いてのご答弁をお願いしたいと思います。

木村司法大臣 お答え致します。
日本人が外国において外国の軍隊に加わって色々な交戦行為をやった、これは日本国としてその責任のないことは、当然言うことを待たない。ただその個々の外国においてそういう軍隊に加わった者の処断に付いては、これは国内法上において、それぞれその当該事項に該当した場合において処置されることと思います

笹森委員 質問を終ります。

芦田委員長 これにて憲法第九条に対する審議を終りました。続いて第三章、第十条を議題に供します。


改正案委員会による、第九条に関する逐条審議はこれで終了

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by kenpou-dayori | 2015-05-30 11:50 | 自著連載
2015年 05月 30日

憲法便り#1015 第九条:高橋英吉委員(日本自由党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(8)

2015年5月30日(土)(憲法千話)

憲法便り#1015 第九条:高橋英吉委員(日本自由党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(8)

第六章の前回まで、
憲法便り#1014 第九条:山崎岩男委員(日本進歩党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(7)
憲法便り#1013 第九条:笠井重治委員(無所属倶楽部)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(6)
憲法便り#1012 第九条:加藤一雄委員(日本自由党)の質問の続き:『検証・・・』(第六版)第六章(5)
憲法便り#1011 第九条:加藤一雄委員(日本自由党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(4)
憲法便り#1010 第九条:山田悟六委員(日本進歩党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(3)
憲法便り#1009 第九条:鈴木義男委員(日本社会党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(2)
憲法便り#1008 第九条:野坂参三委員(日本共産党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(1)


『検証・憲法第九条の誕生』(増補・改訂 第六版)(p.90ー97)より
第六章 第九十回帝国議会 衆議院憲法改正案委員会での逐条審議(8)


改正案委員会の審議は、第九回(七月九日)で一般質疑を終了し、第十回(七月十一日)から逐条審議を開始した。第九条に関する審議は、第十二回(七月十三日)の後半と第十三回(七月十五日)の前半において、集中的に行われた。

【第十三回委員会】七月十五日(月曜日)
午前十時二十四分開議、午後四時十五分散会
参加委員五十六・国務大臣六・政府委員四名


高橋英吉委員(第四回委選定・日本自由党)の質問
「唯一の頼みの綱、国際連合への加入の見通しは」
「国家こそ主権の主体であり、統治権の主体である」


芦田委員長 高橋英吉君

高橋委員 九条に付きまして、二点ほどお伺い致します。第一点は、ごく簡単に箇条的にお尋ね致しますが、日本は自衛権の規定をこの戦争放棄の規定から除いたこと、即ちこれを挿入するということは有害無益であるということの総理大臣のご説に対しては、私、了解致すのでありますが、然らば唯一つの頼みの綱である国際連合、この国際連合に加入することは、講和条約の結果この見通しがあるのでありますかどうか。講和条約が成立しました結果、当然この国際連合に日本も入り得る可能性があるのであるかどうか。
これが一つと、それから仮に国際連合に加入が出来ない場合でも、日本国が被害国である場合、即ち自衛権が障碍(しょうがい)された場合、日本が侵略の対象となった場合に、日本国から積極的に提訴することが出来るかどうか、これが第二。
それから第三としまして、先日、終戦後当然速やかに家郷に帰してもらうことになって居る武装解除せられました日本の軍隊が、なお今日抑留拘禁の憂き目に遭って居る、即ちこれは「ポツダム」宣言に違反するものであるということの質問をいたしましたに対して、総理大臣から私と同意見であるというお答えを得ました。しからば、現在日本として国際連合にこれを提訴することができるかどうか。日本としては、如何なる方法に依ってこれが救済策を仰ぐことが出来るか。国際連合は現在日本との直接の関係がないために、これを放置して顧みないという風なことの組織になって居るのであるかどうか、第三と、それから第四に講和会議の開催は何時頃になる見通しであるかということ、この四つの点に付いて政府のご所見を伺いたいと思います。

金森国務大臣 お尋ねになりました諸点は、もとより政府の誰かがお答えすべき筈のものではありましょうけれども、私自身と致しましては、仕事の分担の関係上お答えしにくい、またお答え致しましても権威のない事柄に属すると思いますから、しばらくご猶予願いたいと思います。

高橋委員 それでは次の機会に総理大臣からこれをお答え願いたいと思います。それから第二の点は、この九条の国の主権という問題がありますが、結局これは主権論になって、すでに幾百、幾千度この委員会なり本会議場において質問応答が繰り返されておりますから、私改めてこれを申し上げることもないでのありますが、ただ私が前回お尋ねしましたことに対して、金森国務相から私がまことに満足するような、諒解することの出来るようなご答弁があって、私のみならず国民が安堵したという感じに打たれて居ったのでありますが、その後のご答弁にはまた何か割り切れないものがあるようでありますから、いま一度確かめさせて戴きたいと思います。
即ち、この九条の国の主権というものは、国家が主権者である、国家が統治権の主体であるということを明記しているのではないか。即ち、主権というものは、国家なる協同体にあるのではないか、天皇初め国民一般、その他国家の構成分子である、ありとあらゆるものの総合体、協同体そのものに主権というものがあるのではないか。即ち、国家なるものが国家の中では最高至上のものであるのではないか。個々の構成分子、天皇とか、国民とか、その他のあらゆる構成分子よりは、国家というものが最高至上のものであるのではないか。
現在まで、主権在君説、主権在民説、主権在国家説という三つの説が述べられて居ったように思いますけれども、一般には主権在民説とか、在君説の二つに置かれて居るような印象が与えられて居るのであります。この前申しました通り、主権在国家説、国家こそ主権の主体であり、統治権の主体である、そういうことに対する明確なご意見をもう一度承りたいのであります。
即ち、金森国務相が度々ご答弁になって居る、天皇と国民との協同体が主権の源泉と言いますか、淵源と言いますか、前文にあります由来、こういう、文字に相応しい立場にあり、或いはそれが主権者だという風に取られないこともないようなご説のようにも取れるのでありますが、即ちこれは言葉の上では前文にありますように、国民から由来するのであり、天皇と国民との協同体であり、国民なるものから由来するものであり、国民から源泉するものであり、淵源するものであるということになるのではないか。即ち、主権の主体ということの説明にはならぬのではないか。もし、天皇と国民との協同体なり国民が主権者であるならば、前文においても源泉というか、由来というか、「その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行い」というような、由来という言葉を使わずに、国民が主権者であると思うことを明確に、はっきりと前文の中に織り込まれて居るべき筈だというのであります。したがって、前文にありまするし、またその他天皇を包含したるところの国民協同体なるものは、日本国家の最重最高の構成分子となって居りますけれども、それは全体ではない。即ち、最高至上のものは国家であり、天皇を包含した国民の協同体なるものは、その国家の至上最高の権力の源泉になって居るのであり、由来するところの源、淵源になっているのであり、国家よりは一段低い所にあるということになるのではないか。即ち、主権在君説、主権在民説、主権在国家説の三つの中で、金森国務相のお心持ちはどれに最も近いのであるか。近いのではない、はっきり主権在国家説を採られるようなことになるのであるか。明確に、一口に簡単にそれがご説明出来ないとすれば、その三つの中のどの線に最も近くお考えになるのであるか。この点に付いて、金森国務相のご所見を伺いたいと思います。

金森国務大臣 お尋ねの点は一般に国法学を論議致しまする場合に、相当研究上頭を捻らなければならぬ種類の事項に亘って居ります。念のために一つの例を借りて申しますれば、例えば会社がありまして会社が外に向かって取引きをするという場合に、誰が取引きをするのであるかと言えば、会社が権利の主体、義務の主体となって取引きが行われるのである。これは普通の場合にちっとも疑問はない訳であります。しかしながら、会社が権利を有し、義務を負うという場合、その実際の働きを誰がするのかということになりますと、勿論眼前の事実として見ますれば、その会社の代表者がやって居りますけれども、本当にこの会社の意志はどうして出来るのかという根源に遡りますれば、会社の種類に依って違いましょうけれども、普通の場合でありますれば、会社を組み立てて居る人々の全部の意志に依りまして、その会社の方針が右にも左にも動く、こういう風に言えるものであります。これは全く狭小な事例を申し上げたに過ぎませぬ。
国に付いて考えて見ますれば、国が外国と色々な交渉をするという場合の法律的な見地から申しますれば、国が単位となって、この国と他の国とが交渉をする、そうすれば国自身が働く主体となって居る。したがって、国自身がいわば意志の如きものを持って居る訳であります。そういう場合におきまして、この国家は意志を持って居る、その意志をまた別な言葉で言えば主権を持って居る、こういう風に一般に認められていると思います。
そこで、この九条の「国の主権の発動」というものは、つまり国のまとまった意思を主権と申しまして、それが発動する、でありますから、国権と言っても宜しいし、ここで先日鈴木君からご質疑になりましたが、国の統治権と言っても宜しいと言えるのであります。つまり、国家が外に向かって働きまする時に、その国を単位として考えまする時に、国は一つの意志を持って居ると言い得ると思います。その意志を称して、国家意思、即ち国の主権と言うのが、一つのごく平明な考え方と思って居ります。ところがその意味におきましては、主権の主体は国家である、こう言って一向差し支えないと思います。
しかし、その国家の意思ということを申しまするけれども、それはどうして出来るものであろうか、国家が脳髄を持って居る訳でもなく、その外の神経作用を持って居る訳でもありませぬ。この国家の意志というものは、本質におきましては、人間の意志を以って充たされて居なければならぬ筈であります。そこで、一つの国の意志と言うものは、一体どこから来るのであろうかという時に、それは国民の全体であるということが、私の今まで述べたところであります。そうして、その国民の持って居る意志は国家の意思を構成するということになりますれば、結局国民の意思が一番強くて、その意志を以って国家の意思が完成せられる訳であります。でありますから、さような場合に、国民が主権を持って居ると、こう言って学問上差し支えないと思う訳であります。かく考えて行きますると、国家も主権を持って居る、こういうことが言えまするし、国民全体が主権を持って居るという言葉も成立致します。矛盾じゃないか、こういう疑いが起るかも知れませぬが、それは同じ主権という言葉を使いましても、意味が違って居るのであります。その先の、国が主権を持って居るという時は、国が活動をする時に国が主権を持って居るという風に説明して、しかも国が一つの単一体であるが如く人間の頭の中で組み立てて説明をして居るのであります。今度、実質的に分解致しまして、国の意志というものは誰の意志で出来て居るのだと打ち割って中味から考えて行きますると、それは国民全体の意志である。したがって、国民各個の精神作用とつながりを持って居る。勿論複雑な組織でありまするから、何の何がしの意志がはっきり国家の意思を組み立てたと言い切れないかも知れませぬけれども、この前文にありまするように、選ばれた多数の国民が意志を決めますれば、それが国家の意思となるという訳であります。繰り返して申しますると、主権という言葉が二つの意味に使われて居る。現実に外に向かって―外に向かってと申しまするのは、必ずしも外国というだけではありませぬ。国内に向かって税金を取るという時でも、税金を取るとなれば取るものがなければならぬ。誰が取るか。国が取るのであると言えば、国が主権を持って居る。その主権の働きで取るのだと、こう思って居ります。けれどもこれを義務的に分解して、主権が出来て来る元をたずねて見ますれば、それは国民の全体である。国民各自がそれにつながりを持って居る。これにまた一つの主権という言葉で言えるのである。こういう言葉で言えるのだと思います。
そこでこの憲法の草案におきましては、初めの外から見まして、国外に着想をして国が主権を持って居ると言う場合は、主権ということばを使って居る。けれども、内側の方の組み立てに着想して言う時には、言葉の混同を避けまして、主権という言葉を使わないで、国民の総意が至高である、或いは至高の総意である、「日本国民の至高の総意」という言葉を用い換えて、紛糾の起るのを避けたのであります。たまたま、それが動(やや)もすれば疑惑を増して、主権という観念の混雑を来して居るように見えますけれども、そうではない。その混雑を避けるために、故にそういう言葉を使ったのであります。
もしこれを徹底して申しますれば、例えば前文の中にありまする「国民の総意が至高なものであることを宣言し」という所を、「国民の総意が主権性のものであることを宣言し」、こう言えば、そういう方面の学問をした人にはよく分かるのでありますけれども、また第一条の「この地位は、日本国民の至高の総意に基づく」と言うのを、「日本国民の主権性の総意に基づく」こう言えば、特殊の学問をした人にはよく分かると思います。
しかし、国民全般にこれを理解して貰いまするためには、そういう紛らわしき言葉を避けまして、至高の意志と、こう言ったのでありますから、先の法人のご説明と組み合わせてお考え下さいますればはっきりして居る、こういう風に私は信じて居ります。そうしてその後の主権性というものは、度々繰り返して言うように、国民全体にあるということは一点の疑いがない、この憲法の建て方の基礎でありますし、これを他の言葉で言えば、その第二の意味の主権は国民全体にある、こう言って宜しいと思います。

高橋委員 いまのお説を聴きまして、ますます私の国家主権説の確かであるということを自ら信ずることになるのでありますが、いまの主権の作用、統治権の作用に内外の作用があるという風なご説明ぶりであったようでありまして、単に国際間の場合において、国家が主権を持つ(原文は學ツ)という風になるのだという風のご説明のようにも聴いて居りましたが、後からまたそうでもない、内部関係においても無論統治権としては国家にあるのだという風なご説明があったように思いますが、統治権には内外の作用というものはない、統治権そのものは権利の主体として、それ本来の働きをする場合に、内の作用もあり、外の作用もあるのでありますから、統治権に二つの主体者があるということは、これは到底信ずることが出来ないと思う。したがって、私はかく解釈さして戴く訳には行かないかと思うのでありますが、金森国務相のご所信はどうでありましょうか。即ち、法令上から言いますと、主権は国家に在るのだ、しかし実際上政治的の意味から行くと、国家なるものは結局人類を除いての意志活動をするものはないのでありますから、土地にしても、建物にしても、その他の物体にしても、意思決定の協力者がないのでありますから、したがって、国家即ち国民協同体ということになるのであるから、実際上においては国民の意思が統治権の作用を決定するのであるという風に、即ち政治的実際的には国民に主権があるという風な説明は差し支えないけれども、法理的においては、国家に主権があるのだという風な、はっきり区別したところの説明が出来ぬものでありましょうか。そうして戴ければ、非常にこの問題は国民の耳にも入り易いし、我々も安心してその点に付いて天皇のご尊厳並びに民主主義的な前進ということに対して、十分この憲法に依ってそれ等のすべてのものが保障され得るという風に確信するものでありますが、如何でありましょうか。

金森国務大臣 ご説明はよく分かりました。この憲法の用いて居りまする文字から言えば、大体お話しのような建前に出来て居ります。主権という言葉は常に国家が持つ、つまり国家が主体であるという組み立ての場合に、主権という文字を使って居ります。それは確かであります。しかし世間の色々の学説その他をもとにして、別の意味の主権がどこにあるかというお尋ねでありまするが故に、そこでどうしてもまたご説明が面倒になるのでありまするが、別の意味の主権は国民全体に在る、こう言って居ります。それを突き止めて言えば、いまお話しになりましたようなお考え方で、一般人に了解が出来るものと考えて居ります。

高橋委員 くどいようでありますが、最後に簡単な言葉で表わしたいと思うのであります。即ち、主権は国家に在って、その主権の行使者、総攬者(そうらんしゃ=一手に掌握する者)―現在の言葉で言いますと、総攬者という言葉を使ってありまするが、総攬者、行使者というものが国民である、かように解釈してもお宜しいのじゃないかと思いますが、如何でしょうか。

金森国務大臣 非常に学問的なご質問でございまして、ここでお答えをする資格もありませぬし、知識もございませぬ。総攬者という言葉が当てはまるかも知れませぬけれども、この場合にそう言って宜しかろうというだけのまだ決心も付きませぬ。やはりいまのお言葉の行き方をして行けば、主権は国家にあるのだ、その主権を構成する本体は国民全体に在るのだ、こういう風にご了解願えると、大変都合が好いと思います。

高橋委員 最後にちょっと簡単に吉田総理大臣に質問しておきたいと思うのですが、先般質問に対して、「ポツダム」宣言は降伏の条件ではない、内容である言われて居りますが、条件か内容かということは、色々民法の条件論にも難しい問題になって居るのであります。条件より内容の方がより重要だと私共も考えますが、「ポツダム」宣言の五条に「吾等の條件は左の如し。吾等は右條件より離脱することなかるべし。右に代る條件存在せず」という風に、條件という言葉が三つも使ってあるのであります。したがって、「ポツダム」宣言なるものは、日本降伏の條件という風に簡単率直に国民に知らしめる必要があるのじゃないか。内容なんという法律的に非常に難しい言葉を使わなくても、條件という言葉が「ポツダム」宣言に書いてあるのですから、したがって「ポツダム」宣言は降伏の條件であるという風にご宣言下さいますならば、今日士気が少し沮喪(そそう=気落ちしていること)しかけて居る日本国民の上に、一道の光明をもたらすことになり、士気昂揚に資することになると私は思うのでありますが、この点に付いて、他日、吉田総理大臣よりご明答を得たいということを申し上げて、私の質問を終ります。

『憲法便り#1015』へと続く。
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by kenpou-dayori | 2015-05-30 11:22 | 自著連載
2015年 05月 29日

憲法便り#815:歴史の真実:戦争は思い通りに始めたつもりでも・・・大本営政府連絡会議極秘文書

2015年5月29日(金)(憲法千話)
2015年5月30日(土)

憲法便り#815 歴史の真実:戦争は思い通りに始めたつもりでも、思い通りにはおわれない!
憲法便り#815 歴史の真実:戦争は思い通りに始めたつもりでも・・大本営政府連絡会議極秘文書

安倍内閣の答弁は、あまりにも杜撰(ずさん)です。
太平洋戦争開戦直前も、以下の極秘文書に見るように、大本営政府連絡会議は、驚くほど杜撰でした。

戦争は、一度始めてしまったら、もう手遅れです。
絶対に、思うようには終わりません。

愚かな安倍首相は、歴史から何も学び取ってはいません。
ここに歴史の真実を明らかにしておきます。

*********************************************
以下は再録です。

2015年 01月 09日
憲法便り#700 開戦直前に大本営政府連絡会議が決定した「對米英蘭蒋戰爭終末促進ニ關スル腹案」

大本営政府連絡会議は、昭和十六年一一月一五日に『對米英蘭蔣(介石)戰爭終末促進ニ關スル腹案』を決定している。
だが、それは、あくまでも日本に都合のよい願望を並べたてた、いわば「妄想」ともいうべきものである。
戦争が長期化し、また、以下に示す、これほど多数の国々が宣戦、断交することは予定も、予想もしていなかった。
日本国内の世論を抑え込んでしまえば、世界中に、何でも通用すると思っている浅慮、思考の欠落の実態は、敗戦後70年を経た現在でも、変っていない。
安倍首相の場合は、特に、「戦後レジームからの脱却」と称して、戦前への回帰を目指している。

『憲法便り#694』歴史クイズ第八問と第九問の答
[第八問]:日本に対して、開戦から敗戦時までに宣戦布告をしてきたのは何カ国?
[答]:
①日本に対して宣戦した諸国は、[15ヵ国]
(コスタリカ國、ドミニカ國、ホンデユラス國、グアテマラ國、ニカラグア國、サルヴアトル國、ハイテイ國、パナマ國、オランダ國、キューバ國、リベリア國、シリヤ國、レバノン國、サウデイ・アラビア國、ソヴィエト社會主義共和國連邦)
②日本に対して断交し、その後宣戦した諸国は、[17ヵ国]
(ベルギー國、メキシコ國、イラーク國、ボリヴイア國、エクアドル國、ぺルー國、パラグアイ國、ヴエネズエラ國、ウルグアイ國、トルコ國、エジプト國、アルゼンテイン國、イラン國、チリ國、ブラジル國、ギリシヤ國、ノルウエー國)
[以上合計:32ヵ国]
*ただし、ここには、下記の6カ国、および中国は含まれていない。
(一)我國より宣戰したる諸國
米國及び英國(濠洲連邦、カナダ、南阿連邦及びニュー・ジーランド)

[第九問] 日本に対して宣戦布告はしなかったが、国交断絶を通告してきたのは何カ国?  
[答]:6カ国
(コロンビア國、フィンランド國、ルーマニア國、ブルガリア國、スペイン國、デンマーク國)

【典拠とした史料】
『日本外交文書 第一冊』(平成二十二年)p10‐12。
下記の史料の●印は、防衛省防衛研究所図書館より補填されたものである。

(付記二)●對米英蘭蒋戰爭終末促進ニ關スル腹案
昭和一六、一一、一五
連 絡 会 議 決 定
方  針
一、速ニ極東ニ於ケル米英蘭ノ根據ヲ覆滅シテ自存自衞ヲ確立スルト共ニ更ニ積極的措置ニ依リ蔣政權ノ屈伏ヲ促進シ獨伊ト提携シテ先ツ英ノ屈伏ヲ圖リ米ノ繼戰意思ヲ喪失セシムルニ勉ム
二、極力戰爭相手ノ擴大ヲ防止シ第三國ノ利導ニ勉ム

要  領
一、帝國ハ迅速ナル武力戰ヲ遂行シ東亞及西南太平洋ニ於ケル米英蘭ノ根據ヲ覆滅シ戰略上優位ノ態勢ヲ確立スルト共ニ重要資源地域竝主要交通線ヲ確保シテ長期自給自足ノ態勢ヲ整フ
  凡有手段ヲ盡シテ適時米海軍主力ヲ誘致シ之ヲ撃滅スルニ勉ム
二、日獨伊三國協力シテ先ツ英ノ屈伏ヲ圖ル
(一)帝國ハ左ノ諸方策ヲ執ル
 (イ)濠洲印度ニ對シ政略及通商破壞等ノ手段ニ依リ英本國トノ連鎖ヲ遮斷シ其ノ離反ヲ策ス
 (ロ)「ビルマ」ノ獨立ヲ促進シ其ノ成果ヲ利導シテ印度ノ獨立ヲ刺戟ス
(二)獨伊ヲシテ左ノ諸方策ヲ執ラシムルニ勉ム
 (イ)近東、北阿、「スエズ」作戰ヲ實施スルト共ニ印度ニ對シ施策ヲ行フ
 (ロ)對英封鎖ヲ強化ス
 (ハ)情勢之ヲ許スニ至ラハ英本土上陸作戰ヲ實施ス
(三)三國ハ協力ヲシテ左ノ諸方策ヲ執ル
 (イ)印度洋ヲ通スル三國間ノ連絡提携ニ勉ム
 (ロ)海上作戰ヲ強化ス
 (ハ)占領地資源ノ對英流出ヲ禁絶ス
三、日獨伊ハ協力シテ對英措置ト竝行シテ米ノ戰意ヲ喪失セシムルニ勉ム
(一)帝國ハ左ノ諸方策ヲ執ル
(イ)比島ノ取扱ハ差シ當リ現政權ヲ存續セシムルコトトシ戰爭終末促進ニ資スル如ク考慮ス
(ロ)對米通商破壞戰ヲ徹底ス
(ハ)支那及南洋資源ノ對米流出ヲ禁絶ス
(ニ)對米宣傳謀略ヲ強化ス
   其ノ重點ヲ米海軍主力ノ極東ヘノ誘致竝米極東政策ノ反省ト日米戰無意義指摘ニ置キ米國與論ノ厭戰誘致ニ導ク
(ホ)米濠關係ノ離隔ヲ圖ル
(二)獨伊ヲシテ左ノ諸方策ヲ執ラシムルニ勉ム
 (イ)大西洋及印度洋方面ニ於ケル對米海上攻勢ヲ強化ス
 (ロ)中南米ニ對スル軍事、經濟、政治的攻勢ヲ強化ス
四、支那ニ對シテハ對米英蘭戰爭特ニ其ノ作戰ノ成果ヲ活用シテ援蔣ノ禁絶、抗戰力ノ減殺ヲ圖リ在支租界ノ把握、南洋華僑ノ利導、作戰ノ強化等政戰略ノ手段ヲ積極化シ以テ重慶政權ノ屈伏ヲ促進ス
五、帝國ハ南方ニ對スル作戰間極力對「ソ」戰爭ノ惹起ヲ防止スルニ勉ム
  獨「ソ)兩國ノ意嚮ニ依リテハ兩國ヲ媾和セシメ「ソ」ヲ枢軸側ニ引キ入レ他方日蘇關係ヲ調整シツツ場合ニ依リテハ「ソ」聯ノ印度「イラン」方面進出ヲ助長スルコトヲ考慮ス
六、佛印ニ對シテハ現施策ヲ續行シ
  泰ニ對シテハ對英失地恢復ヲ以テ帝國ノ施策ニ協調スル如ク誘導ス
七、常時戰局ノ推移、國際情勢、敵國民心ノ動向等ニ對シ嚴密ナル監視考察ヲ加へツツ戰爭終結ノ爲左記ノ如キ機會ヲ捕捉スルニ勉ム
(イ)南方ニ對スル作戰ノ主要段落
(ロ)支那ニ對スル作戰ノ主要段落特に蔣政權ノ屈伏
(ハ)歐洲戰局ノ情勢變化ノ好機特ニ英本土ノ没落、獨「ソ」戰ノ終末、對印度施策ノ成功
之カ爲速ニ南米諸國、瑞典、葡國、法王廳ニ對スル外交竝宣傳ノ施策ヲ強化ス
日獨伊三國ハ單獨不媾和ヲ取極ムルト共ニ英ノ屈伏ニ際シ之ト直ニ媾和スルコトナク英ヲシテ米ヲ誘導セシムル如ク施策スルニ勉ム
對米和平促進ノ方策トシテ南洋方面ニ於ケル錫、護謨ノ供給及比島ノ取扱ニ關シ考慮ス

※平和憲法を守る闘いに寄与するため、2014年5月に下記の新著を緊急出版しました。
『世論と新聞報道が平和憲法を誕生させた!』
―押し付け憲法論への、戦後の61紙等に基づく実証的反論―
(これは『心踊る平和憲法誕生の時代』の改題・補訂第二版です)

「アベノミクス」のみを前面に打ち出していた今回の衆院選で国民の信任を得たとして、安倍首相は、早くも憲法改悪を「自民党結党以来の目標」「歴史的チャレンジ」として強調し始めました。
彼らの論拠は、「押し付け憲法」論です。
『世論と新聞報道が平和憲法を誕生させた!』は、実証的反論です。
是非とも本書を活用していただきたい。
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by kenpou-dayori | 2015-05-29 22:00 | 太平洋戦争日歴
2015年 05月 29日

憲法便り#814: 戦争の真相「真珠湾攻撃の5日後、ヒットラーが大島大使に語った内話」

2015年5月29日(金)(憲法千話)

憲法便り#814: 戦争の真相「真珠湾攻撃の5日後、ヒットラーが大島大使に語った内話」

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以下は、すでに5月13日に掲載下記事の再録である。

2015年5月13日(水)
憲法便り#781:真珠湾攻撃の5日後、ヒットラーが大島大使に語った内話の暗号電文

以下に紹介する秘密文書を読んでいると、オバマ・安倍「怪談」を見ているようだ。
相互依存の両者が、自分に都合の良いことのみを話している。
近未来を見ているようでもある。
いま、国会を無視して強引に進めようとしている「戰爭法」、
これは、際限のない戦争の泥沼にはまり込む、悪夢の序章である。
だから、「亜米政権」の暴走、やりたい放題で「戦争法」を通してしまうことを、絶対に許してはならない。

紹介する文書は、暗号電文を、カタカナ、旧仮名遣い、旧字体で書き起こしたものだが、
まず、旧仮名遣い、旧漢字を直し、ふりがな、句読点を補い、(注)を付した文章を、
次に、原文を掲載した。

外務省編纂『日本外交文書 太平洋戦争 第一冊』(平成二十二年一月十五日発行)

13 昭和16年12月13日(13は、この文書集の中で、外務省がつけた整理番号)
在独国大島大使より
東郷外務大臣宛(電報)

【対米英戦緒戦の評価及び今後の協力方針に関するヒトラーの内話について】
ベルリン 12月13日後発
本  省 12月14日夜着

第一七四一号(館長符号扱)(岩田注:大使館の長、すなわち大島大使だけが判読できる暗号)
十三日「ヒ」総統の求めに依り往訪一時間に亘り会談せり
「リ」(リッペントロップ)外相同席す
要旨左の如し(岩田注:資料原文は、縦書き)

一、「ヒ」は帝國政府の決意及び皇軍の勇敢なる戦果に対し、心からの嘆賞と感激を述べ、更に今回日本が謙譲を以て平和的の解決を図り(注1)一度剣を抜くや敢然猛烈なる攻撃に出でたる開戦前後の遣口(やりくち)は自分が対波蘭(ポーランド)戦諾意作戦に於いてとりたる措置と全く同一(注2)にして深く喜ぶ所なる旨並に独もはっきり対米宣戦を為し得るに至りたるは自分の最も欣快とする旨を語りたる後、御承知の通り自分(「ヒ」)は「一旦事を始めたる以上、中途にして止むることは出来ざる人間にして勿論今回の戦争は日伊と共に最後の目的貫徹迄徹底的に戦い抜く決心なるを確信せられたし」と述べたり。

二、次で「ヒ」は「自分は日米開戦の報を聞くや、直ちに出先潜水艦等に対し、爾今米国戦艦に対し当方より積極的に攻撃すべきことを命じた」る旨語り、「今日迄は各潜水艦長は先ず英国船なるや中立国船なるやを見分けたる後にあらざれば、攻撃を開始し得ざるの苦哀ありたるが、今や何らの顧慮なく思い切ったる攻撃を為し得ることとなり、大いに能率を上げ得べし」と述べたり。

三、対蘇(ソ連)戦に関しては、最近急激に寒気至り、中北部戦線(注3)の温度は零下三十八度(注4)に上り、事実上戦闘不可能なるに依り、此の機会に戦線を整理短縮(注5)し、「レニングラード」「タガンログ」に至る略一直線の線に於いて冬営し、弗々最前線にありたる装甲兵団、機械化部隊を後方に下げ、機材の修理整備を行うと共に鉄道建設其の他後方補給の整備(注6)を行う積りなり、其の一部に於いては二、三十粁(キロメートル)後退することあるやも知れざるが、斯かる地域の喪失は勿論問題とならず、来春天候恢復(かいふく)し再び戦闘可能の状況ともなれば、更めて大攻撃を行う予定なり、尤も(もっとも)「コーカサス」に対しては、凡(あら)ゆる方面より(黒海、土耳古(トルコ)方面よりの意なるべし)攻撃を続行すべく、「レニングラード」「セバストポール(セバストーポリ)」は引続き攻撃する予定なり」と述べたり。

四、北阿戦線(北アフリカ戦線)に関し、「既に「ケッスルリング」麾下の大空軍地中海方面に派遣せられ、潜水艦の活動と相俟ち(あいまち)、地中海に於ける独伊の地位は決して御心配の要なし」と述べたり。

五、尚本使(大島大使)よりは日米交渉が飽迄(あくまで)三国条約(日独伊三国軍事同盟)の範囲に於いて行われたる次第を述べたるに、「ヒ」は、「開戦前平和的態度に出ずるは当然なり」と述べ、また対蘇(ソ連)政策に関し、貴電第九八五号(原注:見当たらず)の趣旨を説明せるに、「ヒ」は、直ちに「当然のことなり」と語り、更に本使より現在迄の戦果を説明せるに、「ヒ」は興味深く之を聴取し、本使より「我軍が海峡植民地より緬甸(ビルマ)方面に進駐する際には独軍も近東に進出し、相呼応して英国打倒に協力したき旨のべたる処、「ヒ」は、「独としても勿論出来得る限り協力を為すべき」旨を述べたり。

【岩田注】
(注1)平和的の解決を図り:形式的に日米交渉を行ったことを指す。
(注2)開戦前後の遣口(やりくち)は自分が対波蘭(ポーランド)戦諾意作戦に於てとりたる措置と全く同一:第一次大戦での敗北により失った旧占領地を、ドイツに返すようポーランドに対して要求し、これが拒否されると、宣戦布告なしに、ポーランドに侵攻したこと。
(注3)中北部戦線:ここでは、「スターリングラード」の戦いを指している。
(注4)零下三十八度:かつて、ナポレオンがモスクワまで攻め込みながら、冬将軍の到来により惨敗したことは、衆知の事実である。奇襲攻撃をかけ、短期間に
(注5)戦線を整理短縮:退却と言わず、「戦線の短縮」と言った誤魔化しの誤報。かつて、大日本帝国の大本営は、退却と言わず、「転進」と発表し、国民に敗北の事実を隠し続けた。
(注6)鉄道建設其の他後方補給の整備:後方の補給の原則は、他国の支援をあてにせず、自前でやるもの。

【文書の原文】
13 昭和16年12月13日
在独国大島大使より
東郷外務大臣宛(電報)

【対米英戦緒戦の評価及び今後の協力方針に関するヒトラーの内話について】
ベルリン 12月13日後発
本  省 12月14日夜着

第一七四一號(館長符號扱)(岩田注:大使館の長、すなわち大島大使だけが判読できる暗号)
十三日「ヒ」総統ノ求ニ依リ往訪一時間ニ亘リ會談セリ
「リ」外相同席ス要旨左ノ如シ

一、「ヒ」ハ帝國政府ノ決意及皇軍ノ勇敢ナル戰果ニ對シ心カラノ嘆賞ト感激ヲ述ヘ更ニ今囘日本カ謙讓ヲ以テ平和的ノ解決ヲ圖リ一度劍ヲ拔クヤ敢然猛烈ナル攻撃ニ出テタル開戰前後ノ遣口ハ自分カ對波蘭戰諾意作戰ニ於テ執リタル措置ト全ク同一ニシテ深ク喜フ所ナル旨竝ニ獨モハッキリ對米宣戰ヲ為シ得ルニ至リタルハ自分ノ最モ欣快トスル旨ヲ語リタル後御承知ノ通リ自分(「ヒ」)ハ一旦事ヲ始メタル以上中途ニシテ止ムルコトハ出來サル人間ニシテ勿論今囘の戰爭ハ日伊ト共ニ最後ノ目的貫徹迄徹底的ニ戰ヒ拔ク決心ナルヲ確信セラレタシト述ヘタリ

二、次テ「ヒ」ハ自分ハ日米開戰ノ報ヲ聞クヤ直ニ出先潜水艦等ニ對シ爾今米國戰艦ニ對シ當方ヨリ積極的ニ攻撃スヘキコトヲ命シタル旨語リ今日迄は各潜水艦長ハ先ス英國船ナルヤ中立國船ナルヤヲ見分ケタル後ニアラサレハ攻撃ヲ開始シ得サルノ苦哀アリタルカ今ヤ何ラノ顧慮ナク思ヒ切ツタル攻撃ヲ爲シ得ルコトトナリ大イニ能率ヲ上ケ得ヘシト述ヘタリ

三、對蘇戰ニ關シテハ最近急激ニ寒氣至リ中北部戰線ノ溫度ハ零下三十八度ニ上リ事實上戰闘不可能ナルニ依リ此ノ機會ニ戰線ヲ整理短縮シ「レニングラード」「タガンログ」ニ至ル略一直線ノ線ニ於テ冬營シ弗々最前線ニアリタル裝甲兵團、機械化部隊ヲ後方ニ下ケ機材ノ修理整備ヲ行フト共ニ鉄道建設其ノ他後方補給ノ整備(注5)ヲ行フ積リナリ其ノ一部ニ於テハ二、三十粁後退スルコトアルヤモ知レサルカ斯ル地域ノ喪失ハ勿論問題トナラス來春天候恢復シ再ヒ戰戦闘可能ノ狀況トモナレハ更メテ大攻撃ヲ行フ予定ナリ尤モ「コーカサス」ニ對シテハ凡ユル方面ヨリ(黒海、土耳古方面ヨリノ意ナルヘシ)攻撃ヲ續行スヘク「レニングラード」「セバストポール」ハ引続キ攻撃スル豫定ナリト述ヘタリ

四、北阿戰線ニ關シ既ニ「ケッスルリング」麾下ノ大空軍地中海方面ニ派遣セラレ潜水艦ノ活動ト相俟チ地中海ニ於ケル獨伊ノ地位ハ決シテ御心配ノ要ナシト述ヘタリ

五、尚本使ヨリハ日米交渉カ飽迄三國條約ノ範圍ニ於テ行ハレタル次第ヲ述ヘタル「ヒ」ハ開戰前平和的態度ニ出スルハ當然ナリト述へ又對蘇政策に關シ貴電第九八五號(見当ラズ)ノ趣旨ヲ説明セルニ「ヒ」ハ直ニ當然ノコトナリト語リ更ニ本使ヨリ現在迄ノ戰果ヲ説明セルニ「ヒ」ハ興味深ク之ヲ聽取シ本使ヨリ我軍カ海峡植民地ヨリ緬甸方面ニ進駐スル際ニハ獨軍モ近東ニ進出シ相呼應シテ英國打倒ニ協力シタキ旨述ヘタル處「ヒ」ハ獨トシテモ勿論出氣得ル限リ協力ヲ爲スへキ旨ヲ述ヘタリ
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by kenpou-dayori | 2015-05-29 21:37 | 太平洋戦争日歴
2015年 05月 29日

憲法便り#813: 独軍降伏後、「欧州急変に帝国不動」「米英の非望を破砕」との報道

2015年5月29日(金)(憲法千話)

憲法便り#813: 独軍降伏後、「欧州急変に帝国不動」「米英の非望を破砕」との報道

この記事を読んでいると、安倍首相は、70年前の帝國政府の亡霊の姿に見えてくる。
70年前の亡霊と違うところは、かつて「鬼畜米英」と呼んだ、そのアメリカの手先となって戦争を始めようとしていることである。

下は、昭和20年5月10日付『朝日新聞』一面
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【見出し】
「歐洲急變に帝國不動 政府声明」「米英の非望を破砕」「東亞の安定確保を期す」
【 記事 】
ドイツの無条件降伏による歐洲戰の集結に當り、政府は新事態に卽應する帝國政府の態度を決定するため、九日午後四時首相官邸に臨時閣議を開き、左のごとき帝國政府聲明を決定、鈴木首相は同日午後七時宮中に参内、内奏の後、午後七時半情報局より発表し、帝國政府の態度を闡明した、すなはち右聲明においてはドイツの今回の態度に対してあくまで遺憾の意を表するとともに、帝國としては自尊自衛のために最後まで大東亞戰爭を戰ひ抜き米英の非望を破砕して、大東亞の安定確保に向つて一路邁進する帝國不動の信念を明らかにした

帝国政府声明(昭和二十年五月九日午後七時三十分)(旧漢字を改めた)
「帝国と盟を一にせる独逸の降伏は帝国の衷心より遺憾とする処なり。
帝国の戦争目的は固より其の自存と自衛とに存す
是れ帝国不動の信念にして、欧州戦局の急變は帝国の戦争目的に寸毫(すんごう)の変化を与うるものにあらず、帝国は東亜の盟邦と共に東亜を自己の恣意と暴力との下に蹂躙せんとする米英の非望に対し、飽く迄も之を破砕し以て東亜の安定を確保せんことを期す」

この紙面に書かれていることは、帝国政府の愚痴である。
ドイツの対ソ戦勝利を当てにして太平洋戦争に踏み切ったおのれの愚かさを隠すために、強がりを言っているに過ぎない。
見出しや声明文にある「非望(ひぼう)」とは、身分不相応の望み、身分以上の無理な望みを意味する。
この言葉は、国内向けには、勇ましいところを見せたつもりだろうが、米英は、何の痛痒も感じなかったであろう。

なお、対米英開戦後に、ドイツ駐在大島大使がヒットラーと面会した際の会談内容を、
『憲法便り#814』に再録する。

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by kenpou-dayori | 2015-05-29 21:20 | 太平洋戦争日歴
2015年 05月 29日

憲法便り#812: 「欧州戦 遂に終了」の主見出しでドイツ軍降伏を報じた昭和20年5月9日付朝日新聞

2015年5月29日(金)(憲法千話)

憲法便り#812: 「欧州戦 遂に終了」の主見出しでドイツ軍降伏を報じた昭和20年5月9日付『朝日新聞』
戦争は、サッカーや、野球の試合ではない。、

新聞報道は、まず、主要な見出しで、読者に記事の内容を伝える。

「欧州戦 遂に終了」
これでは、まるで、サッカーのワールド・カップ報道だ。
下は、昭和20年5月9日『朝日新聞』一面
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翌日、昭和20年5月10日付『朝日新聞』は、「鴎洲急變に帝國不動」と題して政府声明を報道する。

『憲法便り#813』で、紙面の画像と共に、冒頭の説明文、「帝國政府聲明」を掲載する。
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by kenpou-dayori | 2015-05-29 16:02 | 太平洋戦争日歴