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岩田行雄の憲法便り・日刊憲法新聞

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2013年 06月 30日

憲法便り#88 連載:日本共産党が日本国憲法草案の採決で反対した四つの理由(第三回)

2013年 06月 30日
憲法便り#88 連載:日本共産党が日本国憲法草案の採決で反対した四つの理由(第三回)

第二の理由
(天皇の特権的地位に関する四項目)の前半(第一項目及び第二項目)
さらに共産党は、当憲法草案が発表された時、主権在民を明記することを主張しました。幸いにして我々の要求は容れられ、前文にこれが明記されました。これはこの憲法の一歩前進である。しかしそれではこの草案は果して主権在国民の思想を一貫したものであるかどうか。遺憾ながら実質はそうではない。ここに問題がある。
主権在民の羊頭を掲げて、非民主的な狗肉、言換えれば、主権在君の狗肉を売らんとするのがこの憲法であります。先程どなたかがそこらで羊頭狗肉と言われたがその通りだと思います。これが当草案の本質である。これは一体どう云う意味であるかと言えば、第一にもし国民に主権があるならば、なぜ憲法の第一章に先づ国民に付いての規定を設けないのか。この草案では第一章に国民が来るのではなくて、国民の中の一人に過ぎない天皇の規定が第一に来て居ります。金森国務大臣は之を説明して曰く、天皇は国民の統合の象徴だから……(「其の通り」と呼ぶ者あり)。
しかしどうして象徴を前にして実体を後にしなければならないのか。ここに問題がある。天皇の地位は国民の意思に由来すると憲法に明記してある。これは国民が実体であって、天皇は単なる象徴に過ぎない、こう書いてある。それならば実体である所の国民が先づ第一に規定されるべきである。
日の丸の旗は我が国の象徴である。では第一章第一条に日の丸の旗を規定することを政府は賛成されるでありましょうか。勿論賛成されない。世界の何処の憲法にも、象徴である国旗を劈頭に掲げるものはない。それではなぜ政府は此のようなことをするのであるか。それは即ち天皇を神聖化し、天皇に特権的地位を与え、天皇を国民の上に君臨させようとする政府の意図があるからであります。
第二に、抑々民主主義とは、国民が自らの手に依って政治を行なうことであります。したがって国家機構の中に、国民の意思に依って自由に選任し、或は罷免することの出来ない機関を設けることは、これは徹底した民主主義ではない(「ノー、ノー」)。これは必要なことです。
ところが、当草案には、国民の選任し罷免することの出来ない世襲の天皇を存置し、その天皇の手に諸種の重要な特権を与えて居ります。即ち当草案の第六条第七条に依って、天皇の手には十一の色々政治的な、あるいは儀式的な国事が与えられて居る。その中には総理大臣の任命、国会の召集と解散、総選挙の執行の如き重要な権限が含まれて居ります。かくの如き重要な権限を天皇に与えることは、民主主義の原則から言えば、明かに逆行するものである。
これらの天皇の権限は、国会の指名や或は内閣の承認と助言が必要でありますが、しかし天皇が総理大臣の任命や国会の召集、解散や総選挙の執行を拒絶した時にはどうなるか、この憲法には拒絶しないと云う保障は一つもありませぬ。ここに我が国の政治の将来に取って重大な危険があると我々は考えるのであります。過去の日本の歴史にあっては、官僚や軍閥が天皇の特権を利用して凡ゆる虐政を行って来た。この憲法草案では、そのようなことが将来再び起らないと云う保障はないでのあります。天皇の特権的地位が将来再び官僚や保守反動勢力の要塞とならないと云う保証はないのであります。我が共産党が当憲法に賛成しない理由もここにあるのであります。
(次回に続く)

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by kenpou-dayori | 2013-06-30 07:00 | 日本共産党が反対した四つの理由


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