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岩田行雄の憲法便り・日刊憲法新聞

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2013年 07月 04日

憲法便り#96: 「日本共産党が1946年6月29日に発表した『新憲法草案』」

2013年 07月 04日
憲法便り#96 「日本共産党が1946年6月29日に発表した『新憲法草案』」

日本共産党は、衆議院本会議での憲法草案審議が開始されてから4日後の6月29日に、「日本共産党憲法草案」を発表しました。(決定は28日)

日本共産党機関紙「アカハタ」は、再刊第四十四号(一九四六年七月八日)に同党中央委員会憲法委員会による「新憲法発表に際して」と題する声明および新憲法草案の目次、そして再刊第四十五号(七月十五日)に前文および第一章(第一条―第五条)と第二章(第六条―第四十一条)、再刊第四十六号(七月○○日)に第三章から第九章(第四十二条―第百条)を掲載。

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外務省記録マイクロフィルム版に、手書きで謄写版印刷された草稿が収められていますが、ここでは、句読点、仮名遣い、略字などが訂正されている『アカハタ』の記事に基き、憲法委員会の声明文および前文を紹介いたします。

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(1)日本共産党中央委員会憲法委員会の声明と草案の目次

『新憲法草案の發表に際して』
(一九四六年六月二十九日)日本共産黨中央委員會憲法委員會
一、わが党はこゝに新憲法草案を発表し全人民大衆の廣汎な討議にゆだねる、わが党の望むところは、大衆的な民主主義的討議によつて民主主義日本建設の指標としての新憲法草案を完成し、人民の手による眞の民主憲法のために全人民と共に奮闘することである
二、天皇制政府の無條件降伏によるポツダム宣言の受諾によって日本人民は思想と言論の自由および自由に表明された意志によつて自己の政体を決定する権利を保證された、わが党は公然と活動をはじめて以來、人民を奴隷的壓制のもとに呻吟させた根源は、天皇制・寄生的大土地所有制・労働者の植民地的搾取にあることを立証して、欽定憲法の露骨な反動性と政府の天皇制憲法案の非民主性を指摘した、わが党の草案は断じて主権在君憲法または似而非主権在民憲法ではなく、眞の人民の民主的憲法として人民共和政体を内容としてゐる、人民の権利も客観的に可能な範圍内でできるだけ具体的に保証することに留意した
三、わが党は行動綱領および本憲法案の示すやうに、一切の封建的、特権的身分制度に反対し、この廃止を目標の一つとしてゐる、從って特権的身分制度としての皇室は當然廃止さるべきであるが、人民共和政府が実現し人民大衆の民主的教育が徹底したのち、この問題を人民投票に問ふて決定する方針であることはわが党がかねて聲明したとほりである
四、本憲法は政治、経済における封建的遺制の撤廃に基く民主主義革命の実現を内容としてゐる、社会主義社會を通じての共産主義社會においてこそ一切の搾取制度が根絶され、能力に應じて働き、必要(注:草稿では「欲望に応じて」に應じて分配され、人類最高の目標が到達されるものであるが、それは民主主義の徹底を通じてのみ実現されるものである、原則として憲法とは單なる綱領ではなく到達された社會的政治的発展の法制化である、しかしブルジョア民主主義革命の端緒に立つ當面の日本では目前の現実の法制化ではなんらの進歩的意義も持ちえず、かへつて民主主義の徹底を阻害する、少くともブルジョア民主主義革命の実現を内容とするものこそ民主主義憲法といひうる最小限度のものである、その意味で本案はわが党の最小限憲法綱領の具体化である、さらにそれは現実にブルジョア民主主義革命の課題が達成された後には、現実の具体的條件と到達した民主主義的諸成果を基礎として、さらによりよき完成を期待し得るであらう

新 憲 法(草案)目 次

前  文
第一章 日本人民共和國
第二章 人民の基本的権利と義務
第三章 國  会
第四章 政  府
第五章 國家財政
第六章 地方制度
第七章 司  法
第八章 公務員
第九章 憲法改正

(2)日本共産党憲法草案の前文

『日本共産黨憲法草案』 六月二十八日決定
   前  文
 天皇制支配体制によってもたらされたものは、無謀な帝國主義侵略戰爭、人類の生命と財産の大規模な破壊、人民大衆の悲惨にみちた窮乏と飢餓とであった。
この天皇制は欽定憲法によって法制化されてゐたやうに、天皇が絶対権力を握り人民の権利を徹底的に剥奪した。それは特権身分である天皇を頂点として、軍閥と官僚によつて武装され、資本家地主のための搾取と抑壓の体制として、勤勞人民に君臨し、政治的には奴隷的無権利状態を、経済的には植民地的に低い生活水準を、文化的には蒙昧と偏見、迷信と盲從とを強制し、無限の苦痛をあたへてきた。これに反対する人民の聲は、死と牢獄とをもつて威嚇され、弾壓された。この専制的政治制度は日本民族の自由と福祉とに決定的に相反する。同時にそれは近隣植民地半植民地諸國の解放に対する最大の障害であった。
 われらは苦難の現実を通じて、このやうな汚辱と苦痛にみちた専制政治を廃棄し、人民に主権をおく民主主義的制度を建設することが急務であると確信する。この方向こそかつて天皇制の下にひとしく呻吟してきた日本の人民と近隣諸國の人民との相互の自由と繁榮にもとづく友愛を決定的に強めるものである。
 こゝにわれらは、人民の間から選ばれた代表を通じて、人民のための政治が行はれるところの人民共和政体の採擇を宣言し、この憲法を決定するものである。天皇制はそれがどんな形をとらうとも、人民の民主主義とは絶対に相容れない。天皇制の廃止、寄生地主的土地所有制の廃絶と財閥的獨占資本の解体、基本的人權の確立、人民の政治的自由の保障と人民の経済的福祉の擁護――これらに基調をおく本憲法こそ、日本人民の民主主義的発展と幸福の眞の保障となるものである。日本人民の壓倒的多数を占める勤勞人民大衆を基盤とするこの人民的民主主義体制だけが帝國主義者の企てる専制抑壓政治の復活と侵略戰爭への野望とを防止し、人民の窮極的解放への道を確実にする。それは人民の民主的祖國としての日本の獨立を完成させ、われらの國は國際的社會に名譽ある當然の位置を占めるであらう。日本人民はこの憲法に導かれつゝ、政治的恐怖と経済的窮乏と文化的貧困からの完全な解放をめざし、全世界の民主主義的な平和愛好國家との恒久の親睦をかため、世界の平和、人類の無限の向上のために、高邁な正義と人道を守りぬくことを誓ふものである。

(3)草案の特徴的な条文の主な内容(全百条の中から、私が抽出した条文です)
第一条 日本国は人民共和制国家
第二条 日本人民共和国の主権は人民にある
第十九条 死刑廃止
第三十三条 人民は休息の権利を持つ。週四十時間労働制
第三十九条 民主主義的活動・民族解放運動、学術的活動を理由に追及される外国人に対して日本国内への避難権を与える
第四十五条 一院制議会
第四十七条 十八歳以上の男女への選挙権及び被選挙権

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by kenpou-dayori | 2013-07-04 07:00 | 民間で作成された憲法改正草案


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