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岩田行雄の憲法便り・日刊憲法新聞

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2013年 07月 05日

憲法便り#98 ご存知ですか?シリーズ(第8回) 「法制局作成『憲法改正草案逐条説明』について」

1946年4月から6月にかけて法制局により作成された『憲法改正草案逐条説明』及び『憲法改正草案に関する想定問答』は、網羅的な政府答弁資料です。
『逐条説明』は第一輯から第五輯まで、『想定問答』は第一輯(しゅう)から第七輯まであり、合計で500頁に及ぶ大部な資料です。

この『逐条説明』の中に、私が講演を行う際に、最後に必ず引用する文章があります。
今日は、この文章を紹介します。

昭和二十一年五月
『憲法改正草案逐条説明』(第一輯の二) 法制局


第二章 戰爭の抛棄
第九條
 我國が、今後民主主義と共に平和主義を以って國是とすることは、前文に於て強く宣言せられて居る所であります。本章は戰爭の抛棄と題して僅か一ヶ條でありますが、力強くこの國是を闡明(せんめい)したものであり、新憲法の最も著しい特徴の一をなすものであります。これにより今後我國はいかなる場合と雖(いえど)も、主権の発動として國際紛爭の解決手段として戰爭、武力の行使に訴えないことを宣言したのであります。
 この様に本條第一項は、國の主権の発動たる戦争と武力の行使とも全面的に禁止したのでありますが、第二項は第一項の実行せられることを二つの面から保障した規定であります。

即ち第二項は前段は陸海空軍その他の戰力は、これを保持してはならないと定めまして、事実上戰爭を不可能ならしめると云う面からこれを保障したものであります。(國内の治安維持のために必要な武力に関する例外規定をも設けて居ないことも亦(また)、この趣旨を徹底したものと言うべきであります。)

次に第二項後段は、法律上戰爭を不能ならしめるという面から第一項の実効を保障したのでありまして、國の交戰権はこれを認めないと云うことを定めたものであります。即ちこれにより我國が事実上他國との間に交戰状態に入ったとしても、國際法上に於ける交戰者たる地位を憲法上認められないことになるのであります。
本條が第二項に於てこの様に二つの面から思い切った保障を設ける事実上いかなる戰爭をも不可能ならしめたと云う点に本條の劃期的な意義が存すると云ふことが出来ます。即ち國策の是としての戰爭の抛棄に関しては夙(つと)に不戰條約の定める所であり、又憲法としても一七九一年のフランス憲法や一九三一年のスペイン憲法に於て同種の規定が見られるのでありますが、それは何れも自衛権の濫用(らんよう)の余地を残し、且ついかなる戰爭も不能ならしめるための保障を欠いて居たのであります。
しかるに我が國は今次敗戰の齎した破局に深く鑑みる所あり、いかなる戰爭をも発生せしめぬという固き決意に立ち、前文に示されて居る様に、我國の安全と生存とをあげて平和を愛する世界の諸國民の公正と信義とに委ねると云う謂はば捨身の体勢に立ったのであります。
これが即ち本條に示された徹底せる平和主義の根本精神とする所でありますが、我が國としては世界各國が将来何時の日か、我國の態度に追随し来たることを期待し、平和國家の先頭に立つことを誇りとするものであります。

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まるで平和大会の「平和宣言」のようなこの文章は、当時の法制局の官僚が作成した、政府の答弁用の手書きの文書です。
国立国会図書館憲政資料室に問い合わせましたが、英訳文はありません。総司令部から命じられたり、検閲を受けた形跡もありません。したがって、あくまでも、自主的に作成されたものと考えられます。

戦争の反省に立ち、平和を求めるこの時代の決意が漲っているこの文章を、何回読んでも、私は心の底から感動を覚えます。
ですから、いつも講演の終りにこの『逐条説明』を読み上げたあと、次のように述べてきました。

「もしも私が日本を代表して国連で演説をする機会を与えられたら、迷うことなく、結びにこの文章を読み上げ、世界の人々に訴えかけます。しかし、現在の政権の下では私が日本の代表に選ばれることはないでしょう。しかし、声がかかるまで待っている時間はありません。ですから、私はお隣の韓国で講演をすることから始めたいと思います。」

努力の末、2008年10月にこの願いが実現しました。
明日は、その「韓国講演」について書くことにします。

※本書『心踊る平和憲法誕生の時代』の注文については、こちらから

by kenpou-dayori | 2013-07-05 07:00 | ご存知ですか?シリーズ


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