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岩田行雄の憲法便り・日刊憲法新聞

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2013年 07月 14日

憲法便り#116 吉田茂首相特集(第七回) 「私は何故再軍備に反対か」

2013年 07月 14日
憲法便り#116 吉田茂首相特集(第七回) 「私は何故再軍備に反対か」

「吉田茂首相特集」は六回の予定でしたが、もう二つ紹介したいものがありますので継続致します。
今日は、第六回で引用した吉田茂著『回想十年』第二巻に含まれている、「第十三章 私の再軍備観」から「一、私は何故再軍備に反対か」を紹介します。

「一、私は何故再軍備に反対か」

反対する理由三つ 再軍備の問題は、私の在職中、特にその後半における最も大きな問題の一つであった。大きな問題といっても、私自身は再軍備をしようなどとかんがえたこともないし、むしろ逆にこれに反対し続けて来たつもりである。だから、もし、私の在職中の政策上の重大問題であったというならば、少しもそれは問題であったことはない。しかし、或る時は外交応酬の話題として、或る時はまた国会質疑の対象として、また或る時は国内政治の争点として、終始再軍備が私どもにまつわったことは間違いない。
 一体、私は再軍備などを考えること自体が愚の骨頂であり、世界の情勢を知らざる痴人の夢であると言いたい。最近米国の軍備を視察して帰ってきた防衛隊幹部の話によれば、米国はその戦勝の余威を以て、且つまた世界に比類なき富を以て、あおの巨大な軍備を築き上げたもので、他の国があれに匹敵し得る軍備を持つということになれば、それこそ大へんな負担であり、仮りにその負担に堪え得るとしても、あれだけの費用をかけてさえ、果して今日の米国の如き進歩した高度の武装を実現し得るや否やは疑問とされるようである。況んや、敗戦日本が如何に頑張ってみても、到底望み得べきことではない。これが私が再軍備に反対する理由の第一である。
 第二に、国民思想の実情からいって、再軍備の背景たるべき心理的基盤が全く失われている。第三に、理由なき戦争に駆り立てられた国民にとって、敗戦の傷跡が幾つも残っておって、その処理の未だ終らざるものが多い。

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by kenpou-dayori | 2013-07-14 07:00 | 吉田茂


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