『讀賣報知』、『朝日新聞』、『毎日新聞』、より
昭和二十年七月二十八日付けの『読売報知』『朝日新聞』『毎日新聞』を見ると、下記の見出しで各紙とも複数の記事を掲載し、国民を戦争に駆り立てている。
以下に見る通り、三紙のうち二紙が「笑止(しょうし)」の見出しを使い、笑いとばす態度をとり、無謀な戦争続行に国民を導く手助けをしている。
その結果、「本土決戦において米軍を徹底的に殲滅」するどころか、日本の全国各地が空爆により、壊滅的な打撃を受けることとなった。
【見出し】
『読売報知』
「笑止、対日降伏条件
トルーマン、チャーチル、蒋連盟
ポツダムより放送す」
「国内、対日両天秤
老獪な謀略
敵宣言の意図するもの」
「戦争完遂に邁進
帝国政府問題とせず」
「戦争は国民がする
力の結集急げ
南日政(大日本政治会)総裁
記者団と語る」
『朝日新聞』
「米英重慶、日本降伏の
最後条件を声明
三国共同の謀略放送」
「政府は黙殺」
「多分に宣伝と対日威嚇」
『毎日新聞』
「笑止!米英蒋共同宣言
自惚れを撃砕せん
聖戦を飽くまで完遂」
「白昼夢・錯覚を露呈」
「政戦一致は鉄則
戦力国民の自奮に
南総裁、所信を披瀝」
【記事の実例】
『毎日新聞』昭和二十年七月二十八日より
【見出し】
「笑止!米英蒋共同宣言
自惚れを撃砕せん
聖戦を飽くまで完遂」
【記事】
「廿七日の定例閣議は午後二時より首相官邸に開催、鈴木首相ほか各閣僚出席、東郷外相よりトルーマン、チャーチル、蒋介石によって廿七日早朝(日本時間)宣言された三国共同宣言について詳細に報告し、午後五時散会した」
「トルーマン、チャーチル、蒋介石による三国共同宣言は笑止にも帝国に対し軍隊の武装解除或は軍需産業の全廃、皇土の割譲等不遜極まるものである、わが国の大東亜戦争遂行の真目的は飽くまでも帝国の自存自衛及び大東亜民族の米英よりの解放にあり、この神聖なる戦争目的は世界人類斉しく認むるところである、米英の戦争目的に対比し天地の相違がある、最近の戦況にうのぼれを来し、わが戦力を過小評価するに至った米国は戦争の終結近しと独断、かくて今回の許すべからざる三国共同宣言をなしたものと想像される、しかし戦局の今後はわが方に絶対の自信をもつ本土決戦において米軍を徹底的に殲滅し得るとは軍当局並に政府が屡々(るる)その確信を披瀝してゐるところである、国民もそれに対し絶対の信頼を寄せ戦争の完遂に全力を傾注してゐるのである、ここにおいてわが方としてかかるうぬぼれに基く三国共同宣言に対しては一顧も与えることなくひたすら大東亜戦争の神聖なる目的に徹し飽くまでも彼等の戦意を放棄せしめるまでは戦ひ抜き頑張り抜くだけである、政府またかかる方針であることは勿論である」
日独伊三国軍事同盟を締結していたイタリアはすでに一九四三年九月八日に無条件降伏しており、ドイツも一九四五年五月七日に無条件降伏した。この時点で、アメリカのトルーマン大統領が日本に無条件降伏を勧告した。しかしながら、日本政府は五月九日に「戦争遂行決意不変」を声明し、戦争を続行していた。
ポツダム宣言が発表された時点で日本政府が取った態度と、「勇ましい」報道が如何にばかげたものであり、救い難い強がりであったか。
それを証明するため、憲法便り#151において、外務省編纂『終戦史録』の「太平洋戦争日暦」に基いて示しておく。
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