2013年8月9日
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ナチス政権は、1933年2月27日夜に起された国会議事堂放火事件(炎上事件とも呼ばれる)の翌朝、即ち1933年2月28日朝、「民族および国家の保護のためのライヒ大統領令」を発布し、大統領は事実上の戒厳令を布きました。
この大統領令は、冒頭で次のように述べています。
「ライヒ憲法〔=ヴァイマル憲法〕第48条第2項に基づき、共産主義的な、国家公安を害する暴力行為を防止するため、以下のことを命令する。」
大統領令は、これに続けて、ワイマール憲法第48条第2項に掲げられた7つの条文を具体的にあげ、すべての基本権を停止しています。
今回は、118条〔意見表明の自由、検閲の禁止〕の停止についてです。
ナチスは、この条文を停止し、「意見表明の自由、検閲の禁止」を葬りました。
第118条〔意見表明の自由、検閲の禁止〕
各ドイツ人は、一般的法律の制限内で、言語、文書、印刷、図画またはその他の方法で、自己の意見を自由に表明する権利を有する。いかなる労働関係または雇用関係といえども、この権利を妨げることは許されず、何人も、この権利を行使する者に対して不利益を加えてはならない。
検閲はこれを行なわないが、映画については法律によってこれと異なる規定を設けることができる。さらに低俗で猥褻な文芸を取り締まるため、ならびに、公開の陳列物および興業に関して青少年を保護するため、法律による措置をとることも許される。
文中の、ライヒは「国」を意味します。
ヴァイマルは、一般的には「ワイマール」と表記されています。
この内容と問題点を正確に伝えるために、次の文献を引用しました。
高田敏(たかだ・びん)・初宿正典(しやけ・まさのり)編訳
『ドイツ憲法集〔第3版〕』〈講義案シリーズ17〉(2001年、信山社)
なお、国会議事堂放火事件を利用したナチスの手口の全体像、ワイマール憲法の各条文の内容等についての詳細は、8月3日付の憲法便り号外(7)をご覧ください。
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