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岩田行雄の憲法便り・日刊憲法新聞

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2013年 08月 15日

憲法便り#204 ナチスの手口(11)大統領令発布、即施行

2013年8月15日

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ナチス政権は、1933年2月27日夜に起された国会議事堂放火事件(炎上事件とも呼ばれる)の翌朝、即ち1933年2月28日朝、「民族および国家の保護のためのライヒ大統領令」を発布し、大統領は事実上の戒厳令を布きました。

この大統領令は、冒頭で次のように述べています。
「ライヒ憲法〔=ヴァイマル憲法〕第48条第2項に基づき、共産主義的な、国家公安を害する暴力行為を防止するため、以下のことを命令する。」

大統領令は、これに続けて、ワイマール憲法第48条第2項に掲げられた7つの条文を具体的にあげ、すべての基本権を停止しています。
基本権の停止については、全体について(憲法便り号外7)及び、下記の第114条(憲法便り#172)から153条(憲法便り#192)までを、個別にも紹介してきました。

§1〔基本権の停止〕
 ライヒ憲法第114条、第115条、第117条、第118条、第123条、第124条、および第153条は、当分の間効力を停止する。人身の自由・言論の自由権(出版の自由を含む)・結社および集会の権利の制限、信書・郵便・電信・電話の秘密に対する干渉、家宅捜索および押収の命令並びに所有権の制限等は、これに関する一定の法律上の制限を超えるときにおいても、認められる。

前々回は、§2、§3に基いた「地方自治の破壊」について述べました。
前回は、§4、§5に基いた「法律無視、最高刑死刑という厳罰化」について述べました。
今回は、§6に基いた「大統領令発布、即施行」についてです。
施行までの猶予期間は、全くありません。まるで非常事態宣言による支配、これがナチスの手口の本質です。「だれも気付かない中に、ワイマール憲法がいつの間にか変えられていた」というような悠長なものではありません。

§6〔本令の施行〕
 本令は公布の日から施行する。
ベルリーンにて、1933年2月28日
ライヒ大統領  フォン・ヒンデンブルク
ライヒ総理大臣 アードルフ・ヒトラー
ライヒ内務大臣 フリック
ライヒ司法大臣 博士 ギュルトナー


文中の、ライヒは「国」、ラントは「州」を意味します。
ヴァイマルは、一般的には「ワイマール」と表記されています。

この内容と問題点を正確に伝えるために、次の文献を引用しました。
高田敏(たかだ・びん)・初宿正典(しやけ・まさのり)編訳
『ドイツ憲法集〔第3版〕』〈講義案シリーズ17〉(2001年、信山社)

なお、国会議事堂放火事件を利用したナチスの手口の全体像、ワイマール憲法の各条文の内容等についての詳細は、8月3日付の憲法便り号外(7)をご覧ください。


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by kenpou-dayori | 2013-08-15 08:00 | ナチス


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