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岩田行雄の憲法便り・日刊憲法新聞

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2013年 08月 24日

憲法便り#231 ナチスの手口(19)立法により各州の議会廃止、国への州の従属

2013日8月24日(土)

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「ナチスの憲法」と呼ばれるものには、「日本国憲法」のように体系化されたものはありません。「ワイマール憲法」の機能を停止した大統領令およびそれに続く一連の法律のことを指します。
したがって、「ナチス憲法」と呼ばずに、「ナチスの憲法」と呼ばれます。

I については、すでに詳しく紹介しましたが、これが「ナチスの憲法」の始まりです。

Ⅱは、「授権法」あるいは「全権委任法」と呼ばれるもので、現在、テレビのコメンテーターなどが、麻生副総理の「ナチス発言」後に、話題にしている法律ですが、これは「ナチスの憲法」の始まりでも、全体を示すものでもありません。
全体像は、下記のI-XIの法律群を指します。

文中の、ライヒは「国」、ラントは「州」を意味します。
ヴァイマルは、一般的には「ワイマール」と表記されています。

今回は、九番目の法律についてです。

Ⅸ ライヒの改造に関する法律・・・・・・・・・(1934年1月30日)(注33)
 1933年11月12日の国民投票およびライヒ議会選挙は、ドイツ国民が一切の内政上の限界および対立を超えて、不可分の内的統一体にまで統合したことを証明した。
 故に、ライヒ議会は以下の法律を全会一致で可決し、憲法改正草案に必要な要件が充たされたことを確認した後、ライヒ参議院の全会一致の同意を得て、ここにこれを公布する。

§1〔ラント議会の廃止〕
 各ラントの議会はこれを廃止する。

§2〔ラントのライヒへの従属〕
(1)各ラントの高権は、これをライヒに移譲する。
(2)ラント政府はライヒ政府に従属する。

§3〔内務大臣による地方長官の監督〕
 地方長官はライヒ内務大臣の職務上の監督に服する。

§4〔内務大臣の命令制定権〕
 ライヒ政府は新憲法を制定することができる。

§5〔内務大臣の命令制定権〕
 ライヒ内務大臣は、本法の実施に必要な法規命令および行政規則を制定する。

§6〔本法の施行〕
 本法は公布の日より施行する。
     ベルリーンにて、1934年1月30日
     ライヒ大統領 フォン・ヒンデンブルク
ライヒ総理大臣 アードルフ・ヒトラー
     ライヒ内務大臣 フリック

(注33)すでに前掲の第一均制化法によってラント政府がラント法律制定権を有することとされ、また第二均制化法によって実質的に連邦制が崩されていたが、本法は、ラント議会を廃止し(第1条)、ラント高権を奪い(第2条第1項)、ラント政府のライヒ政府への従属を定めた(第2条第2項)。この法律によって、ヴァイマル憲法の連邦制的な国家構造(第5条から第19条まで)が廃止された。

(岩田注1)ヴァイマル憲法第5条の条文は次の通り。
第5条〔ライヒとラントの任務分担〕
 国家権力は、ライヒの事項に関しては、ライヒ憲法に基づいてライヒの機関がこれを行使し、ラントの事項に関しては、各ラントの憲法に基づいて各ラントの機関がこれを行使する。

「ナチスの憲法」の全体像
I 民族および国家の保護のためのライヒ大統領令(1933年2月28日)
Ⅱ 民族および国家の危難を除去するための法律(1933年3月24日)
Ⅲ ラントとライヒとの均制化に関する暫定法律(1933年3月31日)
Ⅳ ラントとライヒとの均制化に関する第二法律(1933年4月7日)
Ⅴ 職業官吏制の再建に関する法律・・・・・・・(1933年4月7日)
Ⅵ 国民投票法・・・・・・・・・・・・・・・・(1933年7月14日)
Ⅶ 政党新設禁止法・・・・・・・・・・・・・・(1933年7月14日)
Ⅷ 党および国家の統一を確保するための法律・・(1933年12月1日)
Ⅸ ライヒの改造に関する法律・・・・・・・・・(1934年1月30日)
Ⅹ ライヒ参議院の廃止に関する法律・・・・・・(1934年2月14日)
ⅩⅠ ドイツ国元首に関する法律・・・・・・・・(1934年8月1日)

この内容と問題点を正確に伝えるために、次の文献を引用しました。
高田敏(たかだ・びん)・初宿正典(しやけ・まさのり)編訳
『ドイツ憲法集〔第3版〕』〈講義案シリーズ17〉(2001年、信山社)


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by kenpou-dayori | 2013-08-24 07:30 | ナチス


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