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岩田行雄の憲法便り・日刊憲法新聞

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2013年 09月 20日

憲法便り#312 人民という言葉を戦後初めて使った昭和20年9月20日付『讀賣報知』の社説

昭和20年9月20日付『讀賣報知』社説「平和主義の経済的基礎」は、その文章の中で、国民を表すために「人民」という言葉を使っている。
私がこれまで調べた限りにおいて、これは、戦後初めて「人民」という言葉を使った社説である。
この社説は、文章全体が一貫して国民の立場からの経済、社会政策を主張しており、革新的である。
一方、昭和20年9月5日付『朝日新聞』社説「平和国家」の中では、「万民赤子」という言葉が使われている。(『憲法便り#270』参照)
敗戦後の混乱期といえども、この二つの社説の立つところは、非常に大きな違いがあり、注目に値する。

昭和20年9月20日付『讀賣報知』

社説「平和主義の経済的基礎」
「敗戦の苦汁を十分味わいつつある国民が連合軍の占領下、新たに希望を抱き始めたことは事実である。彼等は多年に亘る軍閥官僚の圧制の下に、自由は愚か基本的な人権さへ蹂躙されて来た。政治、殊に社会政策の貧困は生活最低限確保の困難を感ぜしめて来たことを自□し出した。戦争による大きな破壊と荒廃の裡に彷徨している現在の人民の姿は、恰(あたか)も孤島に漂着したロビンソン・クルーソーである。戦災によって資本と設備は破壊され、原料資料は消耗し尽くし、いまや飢餓とインフレーションの危険が先鋭化している。平和日本建設の道標を掲げ、封建主義、軍国主義を清算し、平和的努力によって世界の文明と進歩に寄与しようと決意した国民は連合国の俎上に裸身を横たえたのである。一千五百万の大量失業者を就労せしめ、生存と復興を賠償のための国民経済再建は、いまや一に連合国の同情と理解による経済援助を要請するほかなき状態にある。
この秋、主要食糧確保のため三百万トンの外米籾殻の輸入が許容されたことは国民にとって大きな福音である。これによって経済の崩壊とインフレの激化は辛うじて免れることができたからである。すなわち外米輸入は農家の食糧供出を刺戟(しげき)するとともに、食糧および代替食糧を主軸とする高物価の情勢にたいして冷水三斗を浴びせることになり、民生の安定確保に資すること甚大である。
国民はこの際考え方を切替えるため、仮借なき自己批判を徹底的に行なわねばならぬ。これは経済についても同様に大切である。今次戦争の経済的原因についてはいろいろな要素を挙げることができるが、全体主義国家群が持たざる国として持つ国に挑戦した原因のひとつを形成したと思われるのは、アウタルキー自給自足主義の思想である。これが国際経済協調を紊し、資源の獲得戦に駆り立てたのである。もともとこの思想はわが国においては封建的性格を多分に持つ農業の農本主義、兵農思想に強く根ざした自己閉鎖的な考え方に基く。今後日本は平和と自由建設のために、諸国民を緊密に統合し、相互信頼を深め、世界の福祉を増進する国際分業、自由通商への参加が許され、固陋な自給自足思想を打破できる条件を一日も早く獲得できることを心から希望している。連合国当局がこの敗戦日本の哀情と立場とを深く理解せられんことを、われらは要請してやまない。
われらは平和と自由確立のために、もっぱら国内において積極的に努力すべきは当然である。主要食糧を始め民需生産を増加して民生の確保安定について一層努力を払うとともに、協同主義と社会政策による統制経済を一層充実することが急務である。従来の官僚による食糧統制をはじめ諸統制の技術が拙劣であったことは争われぬ。官僚的配給統制会社による生鮮食料品の統制のごときは完全に失敗し今度この統制は撤廃されたのであるが、民間の自主創意、殊に生産者と消費公衆との協同によるもっと能率の高い経済計画統制機構が新たに考えられねばならないのであろう。
平和主義の哲学は、よき手段を用いることはよき目的を追及することよりも大きな実際的重要性をもつことを主張する。よき手段は必ずよき目的を結集することができるからである。社会的に無責任であり、消費者を搾取圧迫する資本主義や従来の企業統制、生産統制の代りに、企業の私的利潤追求への機会を制限し、消費公衆を保護し、統制機構の能率化、民間の自主的な創意の発揚による国民経済の協同主義的運営が望ましいのである。農業会のみならず、一般協同組合運動を盛んに興して、スカンディナビヤ諸国家の経験にみる如く、本質的に平和的な経済機構を新たなる国民政治力によって急速に創り出すべきだと考える。」


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by kenpou-dayori | 2013-09-20 07:30 | 社説


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