人気ブログランキング | 話題のタグを見る

岩田行雄の憲法便り・日刊憲法新聞

kenpouq.exblog.jp
ブログトップ
2013年 10月 07日

憲法便り#355 東久邇宮内閣総辞職の「本当」の理由

今日は、昭和20年10月6日付『朝日新聞』に基づいています。

昭和20年10月5日に発表された、東久邇宮内閣総辞職の理由には、「本音」と「建前」があった。
『憲法便り#354』に掲載したのは、「建て前」の理由である。
ここでは、「本音」の理由を紹介する。
「本音」を伝える見出しからも、東久邇宮が庶民的ではなく、発想はあくまでも皇族的であったことが判る。

昭和20年10月6日付『朝日新聞』一面より。

【見出し】
治安確保の問題と皇室への自由討議、内閣総辞職の直接理由
【本文】
東久邇宮内閣は八月十七日終戦□後処理を最高使命として発足して以来、連合国軍隊の本土進駐、我が陸海軍の復員等の終戦事務を円滑に遂行、その間よく国内の治安を維持し、かつ民主主義日本の再建に必要な基本的諸施策についても検討、速度不足の憾みはあったが順次実行に移してきた、終戦事務の一段落により内閣の任務は終了したとの理由で内閣の更迭を要望する声もあったが、適当な後継内閣の出現も期待し得られなかったので、首相宮殿下は次の総選挙の後に最大の政党による内閣の出現を希望され、それまでは内閣の改造を行ってでも国政修理の大任に当る御決意であった、ところが四日連合国最高司令部より帝国政府に宛てた『政治、信教並に民間の自由に対する制限の撤廃』に関する覚書により首相宮の御決意は一変した、辞職の直接の原因としては覚書の要求通り。

天皇陛下、皇室制度に対する自由な討議に関する制限を撤廃することは、この内閣としては到底実行し得ないこと
および
内務大臣以下全国の警察首脳部の罷免および全特高警察機関を廃止しては、国内の治安維持に静菌が持てない
という点にあるとみられる。

更に根本的な理由としては組閣以来連合国総司令部との連絡が不十分で、司令部の意向と内閣の施政の動向との間に相当の開きを生じたことが挙げられ、之が最近に至って判然として来たことによるものである。
ここに東久邇宮内閣は組閣以来五十日にして退陣した。


【参考:『憲法便り#354』に掲載した、内閣総辞職の「建て前」】

首相宮殿下は五日の閣議劈頭内閣総辞職について次の如く御発言遊ばされ、終戦時における国内人心不安の中に組閣をし、最大終戦事務たる
一、陸、海軍人の復員
一、連合軍の進駐
の二問題は何れも順調に進捗(しんちょく)、一段落を見、組閣の任務は一応完了したので、これを機会に総辞職を決行したいと内閣総辞職の理由を明かにされた

この内閣組織当時はポツダム宣言受諾の直後にして天皇陛下の御軫念(しんねん)は申すまでもなく、人心極度に不安にして何時如何なる事件の勃発せんやも計り知られざる情勢にありたり、然るに一箇月半最大の終戦事務たる陸、海軍の復員も順調に進捗し、連合軍の進駐も開始以来何等の事故なく今日におよび所謂終戦事務は一段落を見、組閣の任務は一応完了したり、
よってこの機会に骸骨を乞い(主君に辞職を願うこと:岩田注)奉り更により適任なる内閣の出現を希望したいと思う


※本書『心踊る平和憲法誕生の時代』の注文については、こちらから

by kenpou-dayori | 2013-10-07 10:00 | 戦後日本と憲法民主化報道


<< 憲法便り#356 幣原喜重郎男...      憲法便り#354 東久邇宮内閣... >>