「千倍返し①初版:安倍・石原両氏の謀議に基づく「押し付け憲法」論に史実を以って反論する」を、しばらくの間、増補・改訂を重ねながら、集中的に繰り返します。
「千倍返し②:麻生太郎副総理の「ナチス」発言に対して史実を以って反論する、
「千倍返し③:2013年10月16日の衆議院本会議での石原慎太郎議員の代表質問に対して、史実を以って反論する、
も準備中です。
改憲派を理論的に追い詰めるために、この記事が拡散されることを希望します。
安倍首相と石原慎太郎議員は、「ウソも百回言えば真実となる」というヒットラーばりのデマを繰り返し、憲法を改悪しようとしている。
ならば、我々は、歴史の真実で、世論の千倍返しをしようではないか!
10月16日(水)の衆議院本会議において、石原慎太郎議員(日本維新の会)が14時40分から30分間、代表質問を行った。
最初の質問事項は、「日本国憲法に正当制はなく、この憲法の向こうを明言せよ」と迫るものであったが、これは2月12日に衆議院予算委員会で「現行憲法廃棄」を迫った質問と、同じ趣旨である。
したがって、ここでは、まず2月12日の予算委員会の石原質問と安倍首相の答弁を再現し、次回の改めて、10月16日の質問と答弁を再現することとしたい。
2月12日の石原質問と首相答弁は、拙著『心踊る平和憲法誕生の時代』の冒頭に収録してある。質問と答弁の内容が、デマに基づく非常に危険な内容なので、「はじめに」として予定していた文章を変更して掲載したものである。
「はじめに
私は第九条を変え、戦争を出来る国にする憲法改悪には、絶対に反対である。その明確な意思表示として、ここに、本書を緊急自費出版する。
まず、嘘も含めた派手な言動と演出で、国民に真実を考える暇を与えない安倍首相の手法について述べる。
【第一…「押し付け憲法」論のでたらめ】
二〇一三年二月十二日の予算委員会で代表質問に立った日本維新の会石原慎太郎議員が、前置きのあと改憲について最初に質問し、安倍晋三首相が答えた場面。
●石原慎太郎議員「さてね、総理が、その、総選挙に、総裁選に出られる前にですね、ある人の仲立ちで一晩、会食致しましたが、その時、私いろんなことあなたにお聞きして確かめました。非常にその、心強いですね、期待しておりました。で、まずですね、この国のですね、今日の混乱、或いは退廃にですね、導いたひとつ大きな大きな原因である、現行の憲法についてですね、お聞きしたいと思いますけれども、人間の社会に存在するですね、色々な規範というものは結局は、まぁ人工的なものもあるでしょうけれども、或いはですね、人間の歴史というものの原理っていうものはこれを規制して、これに則ってると思いますね。で、この、戦争の勝利者が敗戦国を統治するために強引に作った即製の、えー、基本法というものが、えー、国破れ統治されてた国が独立した後ですね、数十年に亘って存続しているという事例を私は歴史の中で見たことがない。で、もしですね、因みに、日本という独立国のね、主権者である、つまり最高指導者、総理大臣が、この歴史の原理に則って、かつて勝者が作って押し付けた憲法というのもを、「認めない」と、「これを廃棄する」ということをですね、宣言した時にこれを拒む法律的見解は果してあるんでしょうかね? そういうものを含めてね、あなたが今、日本の憲法について、いかにお考えかお聞きしたい」
●安倍首相「確かに今、石原先生がおっしゃったように、現行憲法は、えー、昭和、あー、二十一年に、ま、日本がまだ占領時代にある中に於いて作られ、そして『マッカーサー試案』が、えー、毎日新聞によってこれがスクープをされる訳でありますが、スクープを見た、えー、マッカーサーが怒り狂い、えー、これはもう日本に、えー、任せておく訳にはいかないということで、えー、ホイットニーに命じて、そしてホイットニーが二月の四日に、えー、民政局の次長でありますケーディスに命じて、二月の四日だったんですが、えー、二月の十二日までに作れと言って、ほぼ八日間、一週間ちょっとで、えー、作り上げた、あー、それが原案、ま、現憲法の原案で、えー、あった訳でございますが、それが、あー、現在の現行憲法の、えー、もとであると、このように認識をしております」
●石原議員「ですからね、その憲法をね、もし、今の日本の最高指導者であるあなたがね、これを廃棄すると、仮に言われた時にですね、これをですね、法的に阻害するその根拠ってのは、実際は無いんですよ、どこにもね」
自信のない答弁だから「えー」「あー」「ま」が多い。
不勉強な官僚が作った答弁書に基き、さらに不勉強な安倍首相が行った答弁は、歴史の捏造と言うべきものである。彼が言う「マッカーサー試案」は存在しないし、マッカーサーが怒り狂った事実もない。
『毎日新聞』が報じたのは、憲法問題調査委員会(通称松本委員会)の試案とされるものである。このスクープ報道は、実は誤報であったが、その真相については本書第二部で詳述する。
国立国会図書館で翌十三日の四十五紙を調査したが、答弁の誤りを指摘した新聞は、記事を誤用された『毎日新聞』を含めて一紙もない。私は新聞報道のこの現実に危機感を覚える。したがって、インターネット審議中継の録画から音声を文字におこして、ここに収録した。
それにしても、石原議員の発言は単なる「暴走」ではなく、クーデターをそそのかす憲法違反の暴言である。
日本国憲法は、第十章「最高法規」で次のように定めている。
「第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し、擁護する義務を負ふ。」
憲法改正の経緯については本論で詳しく述べるが、ここで表にして要点を示しておく。占領下にあったことは紛れもない事実であるが、石原議員の主張と安倍首相の答弁は、前段の経緯をすべて無視し、*印を付けた三つの時点を、でたらめに強調しているに過ぎない。
断言するが、二月十三日にGHQが提示した草案は、高野岩三郎、鈴木安蔵らの「憲法研究会」案を基礎に作成された、当時の日本国民の世論を反映したものである。
〔一覧表〕
一九四五年(昭和二十年)
八月一四日 ポツダム宣言受諾(憲法改正の必然性)。
八月一七日 東久邇宮内閣発足。
九月二一日 『朝日新聞』で「国家基本法」(注・憲法)の再検討が論じられる。
十月二日 『北日本新聞』がいち早く「憲法改正と国民の自覚」と題する論説を掲げる。
十月四日 マッカーサー・近衛会談/マッカーサーが、近衛国務相に、民主主義的要素を十分に盛り込んだ改憲の必要性を言明。
十月五日 東久邇宮内閣総辞職。
十月七日 『福井新聞』、『静岡新聞』が憲法改正について論じたのを皮切りに、年末までに全国各紙で憲法改正の世論形成が進む。
十月九日 幣原内閣発足。
十月十一日 マッカーサー・幣原会談/マッカーサーが幣原首相に、憲法の自由主義化を示唆。それと同時に改革五項目の要望を伝える。
十月二五日 憲法問題調査委員会(通称松本委員会)が設置される。幣原首相は松本国務相に丸投げし、松本は単に時間稼ぎをする。
十二月六日 GHQ民政局法務班長ラウエルが『日本の憲法についての準備的な研究と勧告の報告書』(明治憲法の緻密な研究)を提出。
十二月二六日 憲法研究会が『憲法草案要綱』を発表。
十二月二八―三〇日 全国二十二紙が同案を報道。
十二月二九日『讀賣報知』が一面で、「憲法改革を人民の手に」の社説を掲げる。年末までに「憲法民主化」の世論が形成されていた。
十二月三一日 連合国翻訳・通訳部が憲法研究会案の翻訳を発表。
一九四六年(昭和二十一年)
一月二日 米国務長官宛の政治顧問書簡第一五三号に憲法研究会案の別個の翻訳が添付される
一月十一日 二つの翻訳を参考に、ラウエルが報告書『民間研究団体による憲法改正案に関する註解』を作成。憲法研究会案を高く評価し、同案が後に、GHQ草案の原型となる。
*二月一日 毎日新聞の「スクープ」報道。(実は誤報)
*二月四日 GHQ民政局が草案作りを始める。
*二月十三日 外務大臣公邸で行われた「オフレコ」の会談で、GHQ草案を日本側に手渡す。」
この部分について、『心踊る・・・』をご注文下さった弁護士の内藤功先生(日本平和委員会代表理事・日本共産党元参議院議員)から、いち早く、次の力強いメッセージを頂いている。
「冒頭(4頁、5頁)に、石原、安倍の問答(衆院予算委員会での代表質問と答弁)が出ているのは、この本の今日的意義を示していると思います。この“デタラメ”を粉砕できるのは、この本の力だと思います。「(GHQの)軍服を着た法律家集団」の役割と活動を(p.70-74)くわしく解明しています。これは「素人集団による一週間のやっつけ仕事」という非難を打ち砕くものです。」
歴史的事実をもって、安部首相と石原慎太郎議員の「押し付け憲法」論のデタラメを打破するこの本が10万部普及すれば、闘いは必ず勝てると思っている。
安倍首相と石原慎太郎議員は、「ウソも百回言えば真実となる」というヒットラーばりのデマを繰り返している。
ならば、本書の真実で、世論の千倍返しをしようではないか!
※本書『心踊る平和憲法誕生の時代』の注文については、
こちらから