人気ブログランキング |

岩田行雄の憲法便り・日刊憲法新聞

kenpouq.exblog.jp
ブログトップ
2013年 11月 20日

憲法便り#440 昭和20年11月20日付『毎日新聞』社説「憲法の口語化」

昭和20年11月20日の毎日新聞社説は、「憲法の口語化」について、論議の口火を切りました。この社説は、当時の社会の状況と社会生活全般にわたる口語化の必要性を的確に伝えています。これが当時の国民の心を捉え、やがて思想・信条、そして分野を超えた文字通りの国民的な運動を呼び起こすこととなります。
憲法の口語化は、新しい日本への変革の具現化であり、単に文体を変えることに止まるものではありませんでした。
昭和21年3月には、25団体79個人からなる「国民の国語運動」がまとめた主意書、及び『法令の書き方についての建議』という文書が法制局に提出されます。これが力となって、法文の口語化が進められ、憲法に関しても昭和21年4月17日に政府の「ひらがな口語体」による草案が発表されます。それまでの法文は、法律家以外には分かりにくいカタカナ文語体でしたから、「ひらがな口語体」草案は、「画期的」「一般国民にも分かり易い」と大好評でした。
運動を代表して法制局と主に接触したのは、作家の山本有三です。彼は、法制局からの依頼を受け、憲法前文、第一条から第九条までを口語体で書き、参考資料として提出しています。
「国民の国語運動」については、後日「ご存知ですか?シリーズ」で紹介します。

『毎日新聞』昭和20年11月20日社説より(*原文の仮名遣いを改めました)
「憲法の口語化」

憲法改正を機会に、憲法全文を口語体に改めることを提唱する。憲法は国法の大本であるから、口語体では重みがないといって反対する向があるかも知れないが、国法の大本であれば尚おのこと、国民全体に判りやすい、親しみやすい口語体の方がよい。殊(こと)に今後のわが国は、国民参政年齢の低下や婦人の参政なども実現し、民主主義政治を急速に徹底して行かねばならないのであるから、出来るだけ平易な文体にすることが必要だ。国民の政治教育の要諦は国民を国の政治や法制そのものに近づかせることであり、そのためにはまず第一に憲法を口語化することによってその範(はん)を示すべきである。また他の反対論を想像するならば、憲法は国家存立の基礎なる聖典であるから、誰もが暗誦し得る簡潔な韻文的文語体にしたいという意見もあるかも知れない。それならば、英国のような成文憲法のないところではどうなるということになる。要は憲法の各條の趣旨や精神を国民が呑み込んでいればよいので、文章そのものに在るのではない。然る上は口語体にして悪いという論拠は少しもないのである。
以上は憲法だけについて述べた。しかし、われ等の趣意は、憲法の口語化が、必然に他の法令規則、(二文字不明)、公示事項等の口語化を伴うことを期待するのである。判決の口語化はかって三宅判事によって口火を切られた。これ亦(また)叙上の憲法の口語化と同様の理由で、あまねく採用さるべきことではないか。穂積教授等が「法律家の法律でなく人民の法律にするよう平易化せねばならぬ」といっているように、すでに専門家の間でさえ定論となっている。殊(こと)に人民の権利義務の規範たる民法に、特に難解な條文が多いというに至っては、これで民主主義の国だといえるかといいたくなる。明治以来八十年のわが国の法制が、その徒(いたずら)に威厳の衣を着た文語体の使用によって、如何に余計な労力を費し公民教育の発達を妨げ、官民の意思疎通を阻んだかは(二文字不明)するまでもない。
しかし、事は公文書の範囲に止まらない。民間全体を通じて、出来るだけ文語体の使用をさけ、平易、能率的な社会生活が営まれねばならない。むろん学問上芸術上に古文体や漢文体の研究が行われるのを悪いとはいわない。中等学校あたりの国文漢文の教科はこの際徹底的に検討して、再建国家の実社会により多く役立つ教育の方に力を打ち込むべきであろう。

なお、紙面のコピーはすでに『憲法便り#55』で紹介していますので、参照して下さい。

※本書『心踊る平和憲法誕生の時代』の注文については、こちらから

by kenpou-dayori | 2013-11-20 21:24


<< 憲法便り#441 昭和20年1...      憲法便り#439 昭和20年1... >>