2013年 12月 20日
憲法便り#507 岩田行雄編著『検証・憲法第九条の誕生』増補・改訂第五版へのあとがき
【増補・改訂第五版へのあとがき】
いま、ロシアがグルジアに対して軍事的侵略を続けており、黒海では軍事的な緊張が高まっています。また、このあとがきを準備している間に、アフガニスタンで活動していたNGO「ぺシャワール会」の日本人スタッフが拉致、殺害されるという悲惨な事件が引き起こされています。日本政府は、この事件をも利用して、アメリカの「テロとの闘い」への協力であるインド洋上での給油活動を続け、自衛隊海外派兵の新たな展開を図ろうとしています。しかし、いまこそ平和的な問題解決のため、全世界が憲法第九条の原点に立ち返ることが求められます。
第五版では、焦眉の問題である「国際貢献と軍備」について整理をするために、日本が国連に加盟を申請した際、憲法第九条をどのように位置づけ、どのようにアピールしたのかを検証し、増補しました。
まず、一九五二年に提出された国連への加盟申請書とそれに添付された外務大臣の「宣言」を読んでみると、憲法第九条についても、国連憲章で義務づけられている軍事行動への参加についても直接的な表現は何もありません。しかし、一九六〇年に憲法調査会で行われた元外務省条約局長の発言を読むと、国連への加盟申請書と外務大臣の「宣言」に込められた日本政府の意図が明かになってきます。さらに興味深いことは、元外務省条約局長の証言が、サンフランシスコ平和条約および日米安保条約締結にいたる交渉過程での日本政府の態度を明かにしていることです。その中には、アメリカから出された日本の再軍備要求に対して吉田茂首相がどのように回答したかも含まれています。
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今年四月に『平和憲法誕生の真実』を三千冊出版しましたが、国立国会図書館の豊富な資料の公開とベテラン図書館員の方々の的確な助言が、この本の完成を可能にしました。特に、政治史料課課長の堀内寛雄さんには、資料発掘をはじめ大変お世話になりました。政治史料課は憲政資料室を担当しているセクションです。今回の第五版増補・改訂にあたっても、また大変お世話になりました。それだけに、最近明かになった国立国会図書館幹部の判断での資料隠しには、驚きと悲しみと怒りを覚えます。そして非常に残念に思っています。平和憲法に基く国立国会図書館創設の理念『真理がわれらを自由にする』に立ち戻ることを強く求めたい。
二〇〇八年八月三十一日