2013年 12月 20日
【目 次】 刊行のことば(2) 凡例 (5) 序章 憲法の改正問題とデモクラシー(9) 『憲法の改正問題とデモクラシー』(吉田茂外務大臣に宛てた国際法学者蜷川新の手紙 【参考資料一】ポツダム宣言 第一章 外務省(その一)…自由闊達な論議(16) 〔一ノ一〕宮澤俊義東大教授の講演記録 『ポツダム宣言に基く憲法、同付属法令改正要点』 昭和二十年九月二十八日 於外務省 【時事解説・その一】 〔一ノ二〕『自主的即決的施策の緊急樹立に関する件』 (試案)昭和二十年十月九日、政務局政務課 『自主的即決的施策確立要綱』 〔一ノ三〕『帝国憲法改正問題試案』 昭和二十年十月十一日、条約局第二課長田付景一 〔一ノ四〕外務省『憲法改正大綱案』(極秘)昭和二十年十月十一日 【参考資料二】婦人参政権の確立 〔一ノ五〕 外務省文書に呼応した『讀賣報知』の憲法改正への提言(昭和二十年十月十四日) 【時事解説・その二】 〔一ノ六〕『憲法第十三条(外交大権)の改正問題に付て』(昭和二十年十一月十日 条約局一課) 第二章 法制局(その一)…抑圧感の下で(51) A.入江稿『終戦と憲法』(昭和二十年九月十八日) B.(秘)井出(成三)(入江の部下)稿:「ポツダム」宣言受諾に伴い研究を要する(明治)憲法第二章に於ける問題(昭和二十・十・二十二成) C.入江稿:『憲法改正の基本的立場』(昭和二十年十月二十三日)(部内会議用) 第三章 憲法問題調査委員会(その一)…徹底した秘密主義(58) 〔三ノ一〕松本烝治という人物について 〔三ノ二〕憲法問題調査委員会設置の趣旨 〔三ノ三〕松本烝治国務相の「憲法改正四原則」 〔三ノ四〕昭和二十年十二月十九日付の内閣情報局輿論調査課『憲法改正に関する輿論調査報告』 第四章 昭和二十年―二十一年に民間で作成された憲法改正草案と意見書(75) 第五章 憲法研究会…開かれた論議と行動(86) 〔五ノ一〕憲法研究会の活動 〔五ノ二〕憲法研究会の『憲法草案要綱』 〔五ノ三〕憲法研究会案に対するGHQの積極的評価 一月十一日付のラウエルの報告書 〔五ノ四〕憲法研究会の行動提起と当時の情勢 〔五ノ五〕昭和二十一年二月三日輿論調査結果 第六章 憲法問題調査委員会(その二)密室審議(106) 〔六ノ一〕憲法問題調査委員会の総会・調査会の日程、出席者、及び特記事項 〔六ノ二〕総会及び調査会での論議の問題点 〔六ノ三〕松本烝治国務相『憲法改正私案』(一九四六年一月四日稿)(極秘) 〔六ノ四〕松本案を検討した際の訂正意見 『第十回憲法問題調査会議事録』より 〔六ノ五〕閣議での『松本私案』の審議 第七章 『毎日新聞』のスクープ記事とGHQの動き(128) 第八章「GHQ草案」の提示と外務省による翻訳 (135) 〔八ノ一〕二月十三日に「GHQ草案」(マッカーサー草案)を手渡した際の記録 〔八ノ二〕「二院制か一院制かの問題について」 〔八ノ三〕外務省による「GHQ草案」の日本語訳 第九章 松本国務相の明治憲法への固執(154) 〔九ノ一〕「松本案」のGHQへの提出 〔九ノ二〕松本国務相が二月八日にGHQへ提出した「松本案」に添付した『説明書』について 〔九ノ三〕白洲次郎の「ジープ・ウエイレター」 〔九ノ四〕松本国務相がGHQへ「再説明書」を提出 〔九ノ五〕内閣への衝撃と閣僚たちの不満の爆発 〔九ノ六〕二月二十二日「運命の閣議決定」 〔九ノ七〕松本・ホイットニー会談 〔九ノ八〕ケーディスの白洲次郎評 第十章 政府案『憲法改正草案要綱』発表と国民及び海外の反応(169) 〔十ノ一〕政府案『憲法改正草案要綱』の発表 〔十ノ二〕 『憲法改正草案要綱』に対する国民の反応 (一)新聞各社の反応 (二)各党の反応 (三)東京帝国大学憲法研究委員会の反応 (四)各省庁の反応 〔十ノ三〕外務省がまとめた海外の反響 〔十ノ四〕極東委員会の反応の概略 〔十ノ五〕憲法、法文の口語化を求める国民運動 〔十ノ六〕内閣法制局の新たな経験 第十一章 法制局(その二)…平和憲法の神髄(205) 【時事解説・その三】 〔十一ノ一〕『憲法改正草案に関する想定問答』より 〔十一ノ二〕『憲法改正草案逐条説明』より 〔十一ノ三〕昭和二十一年五月の毎日新聞世論調査に表わされた《戦争放棄》に関する国民の意識 第十二章 外務省(その三)…第九条に関する研究(213) 〔十二ノ一〕『各国憲法における戦争の放棄に付て』昭和二十一年三月二十七日 条約局法規課 【参考資料三】「パリ不戦条約」 〔十二ノ二〕『改正憲法草案に付て』(第九条について)昭和二十一年四月五日 条約局 〔十二ノ三〕「文民」条項に関する民政局との会談記録より 〔十二ノ四〕『憲法第九条の解釈に関する資料』昭和二十六年一月十日 政務局政務一課 第十三章 外務省(その四)国連加盟への道(250) 〔十三ノ一〕日本の永世中立国化について 〔十三ノ二〕国連加盟に関する昭和二十一年当時の見解 〔十三ノ三〕永世中立と国際情勢との関連に関する研究 〔十三ノ四〕 国際連合への加盟申請 〔十三ノ五〕元外務省条約局長西村熊雄の証言 「むすび」・・「押し付け憲法」論の始まりについて(275) 主な参考文献(278) 【参考資料三】『大日本帝国憲法』(279) 「あとがき」(国立国会図書館憲政資料室のこと)(284) 表紙デザイン 岩田行雄 【主な参考文献】 芦部信喜・高橋和之・高見勝利・日比野勤編著『日本国憲法制定資料全集(1)』(信山社、一九九七) 同(2)(信山社、一九九八) 池田 実訳『資料(邦訳)スペイン1931年憲法』/山梨大学教育人間科学部紀要、Vol.6 No.2(2004) 伊藤博文著・宮澤俊義校註『憲法義解』(岩波文庫、一九八二) 入江俊郎著『憲法成立の経緯と憲法上の諸問題―入江俊郎論集』(入江俊郎論集刊行会、一九七六) 江藤淳編集責任『占領史録 第三巻 憲法制定過程』(講談社、一九九五) 大島町史編さん会編『大島町史 資料編』(東京都大島町、 二〇〇一) 鹿島平和研究所編『日本外交主要文書・年表 第一巻 1941―1960』(原書房、一九八三) 憲法問題研究会編『憲法と私たち』(岩波新書、一九六三) 国政問題調査会編『日本の政治 近代政党史』(政策問題調査会、一九九八) 佐藤達夫著『日本国憲法成立史』第二巻(有斐閣、一九七七) 佐藤達夫著・佐藤功補訂『日本国憲法成立史』第三巻(有斐閣、一九九四) 鈴木安蔵著『憲法学三十年』(評論社、一九七七) 高柳賢三・大友一郎・田中英夫編著『日本国憲法制定の過程 I 原文と翻訳』(有斐閣、一九七二) 編訳者 中村義孝『フランス憲法史集成』(法律文化社、二〇〇三年) 日本共産党中央委員会『日本共産党の70年(上)』(新日本出版、一九九四) 秦郁彦編『日本官僚制総合事典・一八六八―二〇〇〇』(東京大学出版会、二〇〇一) 解説宮澤俊義/小島和司・久保田きぬ・芦部信喜訳/連合国最高司令部民政局「日本の新憲法」(『国家学会雑誌』第六十五巻・第一号) 『吉野作造通信』を刊行する会編・発行『吉野作造通信』創刊号―第十一号(一九八六―二〇〇九) 読売新聞社100年史編集委員会『読売新聞社100年史』(読売新聞社、一九七六) 『朝日新聞縮刷版』昭和二十年後半、昭和二十一年前半 『讀賣報知縮刷版』昭和二十年後半、昭和二十一年前半 『毎日新聞』(国立国会図書館所蔵マイクロフィルム版)昭和二十年七月―昭和二十一年六月 国立国会図書館へのアクセスの方法 国立国会図書館→電子展示会→日本国憲法の誕生(http://www.ndl.go.jp/gallery)→資料と解説 【あとがき】(国立国会図書館憲政資料室のこと) 本書の出典は、文中で示したように、そのほとんどすべてを国立国会図書館が所蔵する書籍、新聞、雑誌、史料に依拠しています。したがって、調査、研究の上で、国立国会図書館の憲政資料室及び議会官庁資料室の皆さんには大変お世話になりました。特に、資料探し及び資料判読の際に、憲政資料室を担当する政治史料課の課長で、経験豊富な堀内寛雄さんには一方ならぬお世話になりました。 これまでに、憲法制定過程に関する研究で多少の蓄積が出来ていたとはいえ、四ヶ月で本書を書き上げることを可能にしたのは、国立国会図書館の存在と、同図書館の皆さんのご協力によるものです。 ここで、改めて心からお礼を申し上げます。 堀内寛雄さんが去る七月に「憲政資料室の六十年」と題して講演をなさったと伺い、その際の準備稿を読ませていただきました。一読して、その内容自体が私にとっては資料的な価値が高く、本書をしめくくるのに最もふさわしい文章と思い、堀内さんのご諒解を得て、その一部分を紹介することで「あとがき」に代えることとしました。 憲政資料室の六十年 ○所管資料について 最初に、すでにご存知の方も多いとは思いますが、現在の憲政資料室が所管している資料を紹介します。 まず憲政資料です。これは、近現代の日本政治史に関りの深い人物が所蔵していた、私文書です。国立国会図書館の「収集方針書」によると、「主に政治家が所蔵していた文書類で、特に日本の憲政史及び議会政治に関連する文書類を積極的に収集する」ということになっています。類縁機関や研究者を通じて紹介された資料や、古書市場に出た資料を、寄贈・寄託・購入等の方法により収集しています。内容は、手紙・日記・メモ・執務資料あるいは写真など、その形態は多岐にわたります。それらの中に、本来は、公文書といってもよいものも含まれています。特に中央の議会政治に関わりのあった、政治家、官僚、外交官、軍人等が所蔵していた文書類を中心に収集してきました。現在資料群の数は約四百、総資料点数は約二十八万点以上に及びます。劣化が進んでいるため、利用頻度の高い資料群等のマイクロフィルム化を優先的に進めてきました。現在までに、原資料十五万点のマイクロフィルム化が終了しています。また政治家や官僚・軍人の談話を録音したテープや、その速記録も公開しています。 次に日本占領期資料です。これは主に、第二次世界大戦の敗戦後、連合国による日本占領時代における、各種の行政文書等で、米国を中心に、海外の諸機関が所蔵するものを、マイクロフィルムで収集しています。現在閲覧用のマイクロフィルム約一万二千巻、マイクロフィッシュ約五十万枚になります。主な資料として、米国国立公文書館所蔵のGHQ/SCAP(連合国最高司令官総司令部)資料、USSBS(戦略爆撃調査団)資料、国務省資料、またメリーランド大学所蔵で、占領期に検閲を受けた、雑誌や新聞のコレクションであるプランゲ文庫などがあります。 さらに日系移民関係資料は、中南米諸国や、北米・ハワイ等に残されている、日系移民の関係資料を収集したものです。資料は図書・雑誌・新聞・原資料の他に、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)などの機関が所蔵している資料も、マイクロフィルムで収集しています。 ○憲政資料室創設まで 憲政資料室の沿革は戦前にまで遡ります。一九三八年の明治憲法発布五十年記念事業の一環として、当時の衆議院と貴族院で、憲政史編纂事業を企画しました。衆議院には「憲政史編纂会」が、貴族院には「貴族院五十年史編纂掛」が各々設置されました。双方の長を尾佐竹猛が兼ね、「憲政史編纂会」には委員に渡辺幾治郎、藤井甚太郎、嘱託に林茂、鈴木安蔵、薄井福治等、「貴族院五十年史編纂掛」には、編集主任に深谷博治(ひろはる)、嘱託に大久保利謙(としあき)、林茂等が任命されました。両会は、憲法制定、議会史に関わる史料を収集して、主に写本を作成、また関係者の談話速記を収録する等の事業を展開しましたが、本来の目的である憲政史の編纂に着手することなく、事業は戦争で中断されました。なお、両会が収集した写本類は、戦後、憲政資料室に移管されて、各々「憲政史編纂会収集文書」「貴族院五十年史編纂会収集文書」として公開されています。中には原本が戦時中に焼失してしまったために、この写本が原本と同じ価値を持つ資料もあります。これらは現在でも憲政史の基本史料として利用されています。 戦後、敗戦の混乱時に、史料が散逸の危機にある中で、一九四八年、大久保利謙氏により「日本国会史編纂所設置に関する請願」が出され、衆参両院で採択されました。これに基づき、一九四九年九月、国立国会図書館分館の一角に「憲政資料蒐集係」が設置され、大久保氏が嘱託として携わることになりました。これが憲政資料室の始まりです。 大久保氏は、明治維新の功労者、大久保利通の孫で戦前に、貴族院五十年史のほかに、帝国大学五十年史編纂主任、帝国学士院六十年史等の編纂に関わり、実証主義的な歴史学者として活躍されました。一九九〇年に九十歳で退職されるまで、憲政資料室客員調査員として在籍されました。私は一九八八年に憲政資料室へ異動となり、二年間だけご一緒させていただきました。 ○憲政資料収集の歴史 ・初期の資料収集(一九五〇年代初期まで) 一九四九年の憲政資料室発足当時は、戦後の社会的混乱の中で、貴重な文書類が散逸の危機にありました。国会分館には、憲政資料収集経費として一九五〇年から三年間で九百万円の経費が付き、大久保氏の旧華族間のネットワークを生かした活動により、幕末から明治期に活動した元勲、政治家、例えば伊藤博文・岩倉具視・陸奥宗光・三条実美などの旧蔵資料、総計五万点近くを購入しました。この時期に収集した資料は、現在でも憲政資料室のコレクションの中核をなっており、戦前に先ほどの憲政史・貴族院の両編纂会が収集した写本の原本も含まれています。 ・収集対象の拡大(一九七〇年代まで) その後、資料収集にとって、大きな契機になったのが、 一九六一年に開催された「議会開設七十年記念議会政治展示会」です。この展示会のための資料調査を契機として、資料収集が活性化し、収集対象を大正・昭和期の資料まで拡大しました。同年国立国会図書館の新庁舎が現在の場所に完成、憲政資料室も国会内から移転し、閲覧室が新設されました。それまで一部の研究者に限られていた史料の公開が進みました。またあらたに、戦後の新憲法制定に関わった法制局の官僚である、佐藤達夫・入江俊郎の旧蔵文書等も収集しました。 ・昭和期資料の増加(一九八〇年代以降) 一九八〇年代以降は、主に昭和期の首相経験者である、平沼騏一郎・芦田均・石橋湛山などの資料を始め、政党関係者、議会官僚及び軍人等の資料、さらにジャーナリスト、経済評論家、教育文化関係者などの資料も収集しました。また一九九〇年代に開設された「議会開設百年記念議会政治展示会」を契機として政治家の遺族の家などに埋もれている資料について、マスコミを使って情報提供を、広く呼びかけました。その成果として収集されたものもあります。また、最近では戦後の資料、特に官僚が所蔵していた資料の移管が増大しています。 (このあと、「占領期資料の収集」「日系移民資料収集の概要」「憲政資料室ホームページについて」「電子展示会」について述べられているが、省略します。ホームページへのアクセス方法については、参考文献のページを参照して下さい) ○最後に 近年、近現代一次史料の所在情報について、憲政資料室の元客員調査員伊藤隆先生を中心とした活動によって、科研費の研究成果報告書や、『近現代人物史料情報辞典』等の刊行により、これまで不透明だった史料所在情報が、広く共有化されつつあります。 さらに、史料のデジタル化の進展によりマイクロフィルムからデジタルへの流れが進んでいます。しかしデジタルで発信していくためには、言うまでもなくこれまでに蓄積された史料の存在・質が前提です。これは一朝一夕にできることではありません。情報発信の大波の中でも、その基礎となる史料の収集・整理に携わってきた先人の功績を、決して忘れないようにしたいと肝に銘じて私の話を終わらせていただきます。(終) 私は六十歳を過ぎてから、第九条のロシア語訳を依頼されたことがきっかけで憲法の制定過程を調べ始めました。初めて憲政資料室を訪ねたとき、「入江俊郎文書をご覧になりましたか?」と逆に質問され、「いいえ」と答え、さらに「佐藤達夫文書は」と訊かれ、「いいえ」と答えたことが、その始まりでした。ですから、そのずぶの素人である私が、憲法に関する本を三冊も刊行することになるとは夢にも思っていませんでした。 国立国会図書館は私にとって知識の宝庫であり、国民にとって大切にすべき、大きな宝だと実感しています。 「国立国会図書館は、真理がわれらを自由にするという確信に立って、憲法の誓約する日本の民主化と世界平和とに寄与することを使命として、ここに設立される」 この格調高い言葉は、昭和二十三年二月九日に施行された国立国会図書館法の前文です。 国立国会図書館の正面カウンターの上には、日本語で「真理がわれらを自由にする」、その右にギリシア語で「真理があなたがたを自由にする」と掲げられています。 私は、同図書館を訪れるたびに、この言葉の前に立って、感謝と尊敬の念をもって一礼します。 皆様にも、この言葉を贈ります。 二〇〇九年八月十五日(「大日本帝国」敗戦記念の日に)
by kenpou-dayori
| 2013-12-20 20:45
| 自著及び文献紹介
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