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岩田行雄の憲法便り・日刊憲法新聞

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2014年 09月 08日

憲法便り#651 復刻:昭和20年9月8日 『福島民報』社説「武器なき大国の可能性」

2014年 9月7日

この社説は、昨9月8日付『毎日新聞』の社説を借用して、全文掲載しています。
『福島民報』は、他紙に先駆けて、9月3日付けの社説で『平和建設への強力な拍車』を掲載しています。
『憲法便り#643』に収録してありますのでそちらも併せてご覧下さい。

昨年も、9月7日に『毎日新聞』の社説を『憲法便り#275』に掲載しました。かなり多くのアクセスがありました。その時に書いたコメントに少しだけ加筆して収録します。

9月5日付『朝日新聞』社説、6日付『讀賣報知』社説に続いて、『毎日新聞』のこの社説で、9月2日に日本政府が降伏文書に調印した後、三大紙の社説が出揃いました。
ところが、『ポツダム宣言』に対しても「笑止」などの見出しで戦争邁進を煽ってきた翼賛報道への反省は、全く見られません。

私は、『毎日新聞』社説の「武器なき大国の可能性」という題名を初めて見た時には、大いに期待を持って読み始めました。
しかしながら、最後の部分まで、侵略戦争への反省はひと言もなく、懲りもせず「大国」にこだわっていることに、「まだ報道体質は変わっていない」ことを強く感じました。
それでも、戦争を煽っている記事より、少しはましであろうと我慢をしてこの入力をしました。それには、当時の下記の状況を考慮した上のことです。

この社説は、昭和20年9月7日の「日本民主化の日歴」で示したように、戦災の被害が甚大だった『香川新聞』および『徳島新聞』が、『毎日新聞』(大阪)に紙面の編集委託を行っていたことから、9月7日付の「社説」は、両紙とも「武器なき大国の可能性」を掲げています。


社説「武器なき大国の可能性」。
「日本は昨日まで強国であり、大国であった。その日本が今度の敗戦によって海外領土を剥奪され、日清戦争以前よりももっと小さな国土した持たないことになった。しかも武装を完全に解除される。強大な陸軍と海軍を均勢的に併有する世界第一の武装国家といわれたその武装がなくなる。明らかに強国ではなくなる。しかし八千万に近い人口を擁する。東亞の盟主として昨日まで持った高い矜持を捨てよう術のない、しかも世界に冠絶する初等教育の普及率を持つ国民である。強国でなくなるのは明白なことだが、同時に大国であるといい切ることは出来ない。そこで問題になるのは、日本が大国として残り得るかどうかである。従来の観念では、強国ならざる大国は在り得なかった。しかし言語の本来の意味からいえば強国と大国とは別物である。日本の今後の建設の仕方によっては、武器なき大国を、人類の歴史の上に、初めて創って見せることが出来るのではあるまいか。その可能性ありや否や。
 日本の降伏の重要な理由の一つが、原子爆弾の出現にあったことは詔書に示された通りである。このために将来の戦争の様相は全く変るであろうといわれている。すでに英誌は原子爆弾の発見によって、敗戦のドイツに飛行機の製作を禁止する理由がなくなり、英国自身が艦隊を保有することすら無意味であることを指摘している。もしそうだとすれば、旧来の兵備軍装はそれがどれほど大きなものであっても、この新兵器の前には無力である。それにも拘らず、今度の大戦の戦勝国はその無力な軍備を常備することを止めないであろう。そうしてその準備のために強国の格付をすることは依然として続くであろう。しかしこのことは、事の実体を考えるときに何の意味があるだろう。原子爆弾で容易に吹き飛ぶ軍備の何処に「強国」があるかである。そんな意味の軍備と強国なら、それから解放される日本こそまことに多幸といわなければならない。尤も原子爆弾の使用については、すでに国際管理説が伝えられている。従ってこの新兵器の使用を封じた場合には、旧来の武装が依然として強国を資格づけるに至るということもいえないことはない。しかしこれも余りに技巧的である。米英が何といおうと、原子爆弾の理論と製法は遠からず公開されざるを得ないであろう。その商業的、工業的利用も必ず起るに違いない。今後百年は平和的用途に向くまいというのは恐らく宣伝である。全世界の鉱工業の既設投資を全く無価値にする脅威を観念しての申し訳と解される。何れにしても今後の戦争はこれまでと全く違った兵器によって、全く新しい方法え闘われなくてはならない。旧来の意味での武装を持つか否かは、国家の強弱を弁別する標準にならず、況んや国家の大小をやといわなくてはならないと思う。
 八千万の国民がどうして狭められた領土で生存するか。食うだけでも相当の難事業であることは否定出来ない。しかしそこで食うことに成功する。しかもポツダム宣言は生来日本の国際通商への参加を否定しない。日本国民がまづ食うことに成功したうえに、その生活程度を高めることに努力する。生活を高めるだけでなく、一切の物的、心的の文化においても世界の第一流国家の上に出る。このことを容易に出来ることとは考えないが、出来ないことではない。最も簡単な事実を見よう。日清戦争直前の米穀生産は三千七、八百万石であった。それが現在では平年作六千万石に達している。農業技術の進歩、肥料の使用増加党のためであるが、これにもう一段の改善を加えればさらに増産せしめることは出来る。八千万人のほぼ純潔な血の民族の形成する国家を世界は小国と呼ぶことは出来ない。しかもその国民の励精によって、生活も文化も道義も世界のどの国民よりも高いとすれば、実に偉大なる大国といわなくてはならない。武装なくして大国となる。これが出来れば人類の偉観である。日本はこの目標に向って先進を起そう。」

※平和憲法を守る闘いに寄与するため、5月に下記の新著を緊急出版しました。
『世論と新聞報道が平和憲法を誕生させた!』
―押し付け憲法論への、戦後の61紙等に基づく実証的反論―
(これは『心踊る平和憲法誕生の時代』の改題・補訂第二版です)
闘いは、まだこれからも続きます。「押し付け憲法」論、自主憲法制定論に対する闘いに、是非とも本書を活用していただきたい。

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by kenpou-dayori | 2014-09-08 07:00 | 社説


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