下記の文書の「一、一般方針」の中に、
「(ロ)居留民ハ出來得ル限リ定着ノ方針ヲ執ル」とある。
これは、明らかに「棄民政策」である。
「満蒙開拓団」の政策自体が、中国に対する侵略、植民地化を前提とした「棄民政策」であったが、敗戦後もまた「棄民政策」を執った。
現在の日本の政策は、どうか?
戦前のように他国への侵略、植民地化を前提とした「棄民政策」は執り得ない。
だが、民を国内に留めながらの「棄民政策」が進められていると私は思う。
労働者に対しては、労働法制の一連の改悪による「ワーキング・プアー」と呼ばれる貧困層の増大、農民に対してはTPPのゴリ押しによる農業の切り捨て、高齢者に対しては年金改悪および介護・医療の改悪で生存権までをも脅かすなど、主だったものだけを挙げて見ても、国民の生活は、憲法第25条に明記された「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という規定には、程遠い状況に追い込まれている。これを「棄民政策」と呼ばずに、何と呼べばよいのか!
【典拠とした史料】
『日本外交文書 第三冊』(平成二十二年)p.1945‐1946
下記の文書の(一)の(ロ)を参照して下さい。
*機密文書の廃棄を指示した文書ですが、「秘密保護法」の下では、このような文書が公開されるのかどうか、はなはだ疑わしい。だから、「秘密保護法」は、廃止するしかない!
「ポツダム宣言受諾をふまえての現地機構及び在留邦人保護に関する訓令」
(別電) 本省8月14日発
合第七一六號(館長符號扱、緊急)
大使初メ出先公館職員ハ大御心ヲ體シ政府ノ方針ニ從ヒ率先垂範シ最後迄職責ノ完遂ニ任シ且居留民ノ保護指導ニ付萬全ノ措置ヲ講ス
(一)大東亜省出先公館ニ於ケル措置
(イ)御眞影、御紋章ノ取扱ニ付萬全ノ措置ヲ採ル
(ロ)機密文書、電信符號、暗號機械ハ状況ニ依リ遅滞ナク毀却ス
(二)居留民ニ對スル措置
一、一般方針
(イ)帝國カ今次措置ヲ採ルノ已ムナキニ至リタル事情ニ付キ周到懇切ニ説示スルト共ニ大御心ニ從ヒ冷静沈着皇國民トシテ恥スルナキ態度ヲ以テ時艱ニ善處スル如ク指導ス
(ロ)居留民ハ出來得ル限リ定着ノ方針ヲ執ル
(ハ)居留民ノ生命財産ノ保護ニ付テハ萬全ノ措置ヲ講ス
二、具体的措置
(イ)大使ヨリ御詔勅ヲ奉戴シ全居留民ニ對シ諭告ヲ發シ新局面ニ即應スル心構ヲ徹底セシム
(ロ)僻地ノ居留民ハ適當ノ地ニ集結ス
(ハ)必要ニ應シ我方利益代表國又ハ赤十字社等ニ對シ保護ヲ依頼スル等ノ措置ニ付研究ス
尚特ニ支那ニ在リテハ帝國民間人、地方官憲等ノ協力活用ヲ考慮ス
以下、(ニ)から(チ)は省略。
なお、次の企画として「憲法クイズ10問」を用意しています。
※平和憲法を守る闘いに寄与するため、2014年5月に下記の新著を緊急出版しました。
『世論と新聞報道が平和憲法を誕生させた!』
―押し付け憲法論への、戦後の61紙等に基づく実証的反論―
(これは『心踊る平和憲法誕生の時代』の改題・補訂第二版です)
「アベノミクス」のみを前面に打ち出していた今回の衆院選で国民の信任を得たとして、安倍首相は、早くも憲法改悪を「自民党結党以来の目標」「歴史的チャレンジ」として強調し始めました。
彼らの論拠は、「押し付け憲法」論です。
『世論と新聞報道が平和憲法を誕生させた!』は、実証的反論です。
是非とも本書を活用していただきたい。
ご注文は、下記の書店へ
美和書店 電 話03-3402-4146
FAX 03-3402-4147