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岩田行雄の憲法便り・日刊憲法新聞

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2015年 03月 19日

憲法千話・憲法施行に際しての社説No.7:昭和22年5月3日『日本経済新聞』社説「新しい憲法とともに」

2015年3月19日(憲法千話)

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憲法千話・憲法施行に際しての社説No.7:昭和22年5月3日付『日本経済新聞』社説「新しい憲法とともに」

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『日本経済新聞』の三節からなる社説も、一読に値する。したがって、以下に、全文の文字起こしを行った。

社説「新しい憲法とともに」

平和と希望のうちに成った新憲法は、五月三日を期して施行され、国を挙げての記念式典が行われる新しい日本の誕生であり、
建設である。もちろん敗戦後の我国経済はきわめて困難な状態にあり、いまだ国際社会の一員たることを許されていない。だがらといって国民の多数が日々の生活不安に悩まされ、国際的に独立し得ないような状態のもとで今更何の新憲法ぞと考えるならばそれは大きな誤りである。むしろそのような状態にありながら、民権の自由を保障し、平和と文化の国家たることを内外に宣明した新憲法が、平和のうちに生れたことの意義こそ、われわれは深く感激し、喜びとすべきであろう。敗戦後の現在にあって、われら国民が自信をもって内外に示し得るものが果していくつあるか。新憲法こそややもすれば目標を見失い勝ちな国民にはっきりと行先を教え、世界に偽りもひけめもなしに示し得る最大のものであろう。

新憲法によって国民は文民の自由を保障されることになった。いかなる機関にも勢力にも屈従させられないこの自由こそ、民主主義の基礎である。過去の国民は自由の尊厳と喜びを知ることが少かったが、今こそ自由であるとの喜びを体一杯に関ずることが出来るのである。そして連合軍総司令部当局の声明にあるように、国民は自由を享受すると同時に、その自由を守るのは自分の責任であるという自覚に徹しなければならない。国民はその自由を机の中にしまっておいたり、自分から捨てたりせず、進んで自由を行使すべきである。いかなる形のものであっても、全体主義、独裁主義は自由を妨げるものとして排撃しなければならない。自分の自由を守ろうとしないことは、他人の自由を侵す社会的無責任と同様に誤りである。主権在民ということも、単に主権が国民に在るというのではなく、国民が主権を行使すると考えなければ意味をなさない。新憲法を現在の国民生活からかけ離れた余りに美しいものと見るのは、国民の自由や権利を、ただ与えられたものと考え、新日本の建設に憲法的な意欲を持たないためである。

軍備と交戦権をみずから棄てたことは新憲法の最も大きな特色である。しからば軍備なき国家が今後どうして各国の間に独立を保って行くことが出来るか。今日ではそれはまだ宿題として残っている。しかしながらはっきり言えることは、軍備なき日本が独立を保つためには、世界から孤立せずして、世界の中に裸で飛び込んで行く以外に途がないということである。講話条約が締結された後は、平和的文化国家として各国に交りを求めることこそ新しい日本の生きて行くただ一つの途である。しかも我国は経済的にも外国貿易を考えずして自立し得ない。とかく対外関係を消極的、受動的に考え易いが、新憲法前文に「われらは平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」と述べているのは、新しい日本の対外的進路を示したものである。われらは「国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成すること」を誓っている憲法前文の結びを忘れず、常に新憲法とともにあらねばならない。
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(以上は、国立国会図書館所蔵マイクロ資料による)
今日のひと言:「いかなる形のものであっても、全体主義、独裁主義は自由を妨げるものとして排撃しなければならない。」

by kenpou-dayori | 2015-03-19 06:16 | 憲法千話・憲法施行に関する社説


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