2015年3月22日(憲法千話)
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憲法千話・憲法施行に際しての社説No.10:昭和22年5月3日『新岩手日報』社説「新憲法の施行と県政」
岩手県政の具体的な課題について記述した社説である。
中央紙は、当然のことながら大所高所から全般的な問題を論じることが多い。
地方紙は、各論について具体的に論じることがあるが、この社説は典型的な例である。
マイクロ資料の現物に大きな書き込みがあり、判読できない部分が多いが、判る部分を文字起こししておきたい。
社説「新憲法の施行と県政」
新憲法に基いて行われた各種の選挙も完了して、近く第一回の国会も開かれる。また革新政党として社会党が第一党の地位に立ったので憲政の常道として内閣の総辞職は必至であり新国会の指名によって内閣の首長が議員の中から任命され、総理大臣は(2、3字不明)国務大臣を任命するに当って(6文字不明)議員の中から選ばなくてはならぬ。
国会も五月の中旬までには開かれる予定であったが、本県は宮古地区の(一行半判読不能)なきに至った。しかし、公選の國分知事に対して県民は一日も早く副知事の任命を待っているから県会も出来うれば宮古の再選挙を待つことなく早い機会に開き、その同意を得て決定をして欲しい。新知事会議や新国会の以前に開きうれば結構であるが、これは他府県との均衡もあろうから本県だけ早くというわけにもゆくまいが、國分知事を補ける副知事の意義は他府県より(二行不明)ておきたい。
新憲法はいよいよ本日からあ施行されるので、県では九日までを憲法施行記念週間として、種々の行事を催すことは本紙に掲げるとおりであるが、いわゆる行事はとかく形式に流れ易く、そのために憲法の精神が徹底するという効果は期待できない。行事よりは日常の行政を通して新憲法に盛られた法の精神を具体化してゆくが望ましい。そのためには、まず県の行政機構の最高の事務責任者ともいうべき副知事の任命を急ぎたい。
地方自治の民主化が新憲法の下、多くの問題が集積し期待されている。本県の如く多数の旧議員が追放され、暫くの間残りの少数議員によって議せられた事項の中には、相当官庁本位に決められたものも少なくないから、これを再検討する必要もあり、また公選知事が立候補のとき公約された県会中心主義でがっちり県政の執行をするためにも速かに県会の機構を整備して、民主化された地方行政へ発足することが必要である。すでに四月から新会計年度に入っているのに、四月中は選挙で多くの行政措置も遅れ勝ちであった。これは宮古地区の□□再開を理由に、更に□ケ月延期されるようでは、岩手のスローモーを示すことになる。産業復興、経済危機突破と打つべきては日を待っていない。
新憲法ちう設計図を生かすため自由、民主、文化、平和の諸主義を四本柱とした住みよい家を造り上げねばなるまい。本県民はじゅんぼくな愛される性格を備えているが、この反面において民度は決して高くない。県民一般に新憲法の趣旨を浸透させるには形式的に憲法の条文を講述するよりは、新憲法に拠って制定されるであろう諸法令の施行をとおして現実の行政の面において訓育を励むことが望ましい。形式的民主主義が横行して、内容は旧のとおりであるものが少なくない。これでは何時までも□□状態が続き、よりよき明日への希望はもちようがない。新憲法の施行にあたって、県民は新憲法の期待する具体的内容をわれわれの日常生活の中にきずき上げ、これを豊かにするため官僚の指導、□□施設に依存する従来の態度をかなぐりすてて、県民が自からの創意工夫をこらして、(一行半不明)ものである。
(典拠は、国立国会図書館所蔵のマイクロ資料)
今日のひと言:「こういう岩手の土地柄から、小沢一郎が生まれたことが解るような気がする社説である」