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岩田行雄の憲法便り・日刊憲法新聞

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2015年 03月 24日

憲法千話・憲法施行に際しての社説No.12:『秋田魁新報』5月3日付の社説「新憲法と民主化の創造」

2015年3月24日(憲法千話)

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憲法千話・憲法施行に際しての社説No.12:昭和22年5月3日『秋田魁新報』社説「新憲法と民主化の創造」

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『秋田魁新報』の社説も、かなり強烈な問題点指摘なので、全文の文字起こしをしておく。

社説「新憲法と民主化の創造」
一、
本日を以て日本の憲法は国民のものとして実施されることになった。国民の基本的人権をはじめ天皇の立場や政治の有り方等広範な改革が行われ、徹底的に民主化された憲法を持つことにあった。日本はまさしく第二の□□をなしとげようとしてその出発点に立ったわけである。これまで国家と各個人は対立的に考えられる習慣をつけられ、国家により、政府によりおさめられる人民にすぎなかったが、これからは人民一人一人が国家を代表し政府は国民のために存する機関として人民がこれを運営することになった。もはやわれわれは自分の良心のほかに支配をうけることのない自由人として生きるのである。

敗戦は日本国民にとって大きな□□(蓄積?)の損失であった。敗戦そのものよりもむしろ敗戦によって□□された道徳的意思的な精神上の貧困が「これでは戦争に負けたのは当たり前だ」という劣等感を抱かせた。これに加うるに戦時中の偽の指導者達によって鼓吹されたせまい国家主義の反動として日本歴史の価値を疑い、日本的なるものの善さを忘れ一足飛びに新しい思想と新しい制度の衣がえに夢中になった。昨日まで軍国主義のお先棒をかついだ者も急に生まれながらの民主主義者であるかの如きゼスチュアでのさばりまわったりした。何が本当の民主主義で何が偽装された民主主義であるかの判断をつえけることはなかな六カしい事であった。しかし日本人は自分の判断を持たねばならない新憲法によって保証された基本的人権はそれが最終の目的というよりも、それを出発点とする各個人めいめいの知性徳性に対する努力の要請なりと解すべきである。

新憲法によって人民の権利を持ったことはそれだけでは価値を発揮しない。要はこれからの日本人の良心と知性の高さによる努力である。国民の思想と文化は過去の歴史的蓄積であるから、如何に新しいものを活発に呼吸しても歴史的なるものをすべて廃棄することではなく排除すべきものと活かすべきものを日本の歴史のなかにえらばねばならぬ。過去の日本的なるもののよさを以てその中に新たな世界的思想と文化をとりいれ新しい日本の個性を創造して行くことによって世界の民衆に貢献することが出来る。これは創造の道であって模倣でないから、自覚された高まいな精神がなければならぬ。この態度を失ったものが流行を追うオポチュニストである。日本は今たしかにこの種のオポチュニストによる悩みから脱し切れない。新たなる憲法もそれを活かすに値しない人にとってはただの文章にすぎないし、生活にも血液にも流動することはない。

新しい思想と制度の浅薄な模写だけではけっして日本を立直らせることは出来ない。この高まいな精神とは真理に対する愛である。これが盛んである限り、始めて人民の道徳は高まり学問は興り、新しい文化の創造は期待されるのである。そして、今の日本に最も必要なのは真理に対する愛であり、これは明治以来最もかん養の怠られて来たものである。明治憲法と共に日本の文化の変化は西洋文明の結果だけを手っとり早くとりいれて西洋文化の根底をなす精神の移植にたいし、無理解と怠慢の態度で歩んで来た。これが西洋文化吸収八十年の歴史を持ちながらその理解が浅薄であり、国民一般の学問的、道徳的水準が低く封建的思想から脱し切れなかった。これらの事はすべて敗戦と敗戦後の現実によって明示された。だから現在進行しつつある民主化にしても、それが真理を真理として愛する精神によって指導され、培われなければ単なる浅薄な外形の変化に止まり、真の自由な民主主義国民を創ることは出来ないのである。

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(典拠は、国立国会図書館所蔵マイクロ資料)

by kenpou-dayori | 2015-03-24 06:26 | 憲法千話・憲法施行に関する社説


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