人気ブログランキング | 話題のタグを見る

岩田行雄の憲法便り・日刊憲法新聞

kenpouq.exblog.jp
ブログトップ
2016年 05月 04日

日本国憲法施行日の社説No.20:『北日本新聞』5月3日社説「新憲法の実施を祝う」【拡散希望】

2015年4月1 日(憲法千話)

(*50紙の社説一覧リストへ戻るのは、こちらをクリックして下さい

2016年1月6日(水)【安倍内閣による改憲を阻止するため拡散を希望します】

昭和22年5月3日付『北日本新聞』の憲法施行日の論説

『北日本新聞』は、通常「社説」が掲げられる一面左上の位置に、「社説」とせずに、日常的に「論説」を掲載している。したがって、この「論説」は、「社説」に準ずるものである。
5月3日付論説「新憲法の実施を祝う」は、紙面コピーの下に文字起こしを行う。
この日の一面トップ記事は、「民主日本・新しき発信 きょう・いよいよ新憲法施行」と題した囲み記事なので、コピーを掲載しておく。
また、一面下段には、「憲法普及会富山県支部」による大きな祝賀広告が掲載されているが、右端に「新しい憲法 明るい生活」とあり、続けて13項目のスローガンのようなものが記されている。
これは憲法普及会が昭和22年5月3日付で刊行した啓蒙書(非売品)の題名とその目次で、当時の全世帯数に相当する二千万部が全国で配布された。
日本国憲法施行日の社説No.20:『北日本新聞』5月3日社説「新憲法の実施を祝う」【拡散希望】_c0295254_102843100.jpg日本国憲法施行日の社説No.20:『北日本新聞』5月3日社説「新憲法の実施を祝う」【拡散希望】_c0295254_10314124.jpg日本国憲法施行日の社説No.20:『北日本新聞』5月3日社説「新憲法の実施を祝う」【拡散希望】_c0295254_9584227.jpg


昭和22年5月3日論説「新憲法の実施を祝う」

 昨秋十一月三日に新憲法が公布されてから半歳、今日はいよいよ実施の日であり、国をあげての慶祝の日である。いうまでもなく、新憲法は、不磨の憲法とまでいわれた明治憲法とはその正確を異にし、民主主義に立脚した国民の一人一人の在るべき姿を規定した根本法である。ここに新憲法の実施を慶祝するにあたって、国民たるもの、その老若男女を問わず、もう一度ここにあらためてその根本精神を省みる必要がある。
 くり返して言うならば、民主憲法としての新憲法はあくまで国民一人一人の双肩にかかる憲法である。これはひとり憲法学者や議員や役人のためのものではなく、国民全般にわたって例外なく、しかもその日常生活の毎日に及んで具現されて行けねばならぬものなのである。いわばこれは国民の法律的生活必需品とならねばならぬのである。国民の意思によって民主的に制定されたこの憲法は、それがひとたび実施に移されることになると、こんどは国民を民主的に拘束することとなる。言いかえれば、国民は自分たちで作った法律を自分たちで自主的に活かし現わしてゆくことになるのである。
 そこでこの新憲法が制定実施されるに至るまでの、我国の実情をもう一度反省してみる必要が生じてくる。なるほど新憲法は一応民主的な方法によって民主的内容がもられていることはいうまでもないが、これは国民の盛りあがる止むにやまれぬ下からの力が、あらゆる障害を排除しながら長年にわたって、あるいは一歩後退を余議なくされた場合もあったりして次第に一歩一歩と前進をつずけ、その間国民の一人一人が必然的に自己啓蒙、自己訓練を通して成長し、その結果ついに国民の総意において樹立したものとは違い、敗戦の結果、もたらされたものとしての性格を含みながら、とにかくも一応新生日本の建設という目標にふさわしいものを造りあげ、これを実施する事になったのであるから、そこにはおのずから未だ自主的には割り切れぬものがあるかも知れない。それ故にこそ新憲法公布後その実施に先だって、全国津々浦々にわたっての新憲法の普及徹底ということが必要であったのである。このことを国民はまず再び銘記してかからねばならぬ。
これを四月選挙について言うならば、日本国民たる者いやしくも満二十歳以上の男女たる限り、すべて選挙権を有する事になったのであるから、この点ではかつての普通選挙とくらべてまさに隔世の感をおぼえるほど、今日の日本は急速に民主化軌道をバク進しているものといえるのであるが、しかしまた一方、この選挙権なるものが、国民の一人一人によって具体的にどう行使されたかという点、その内容を検討してみる時、ここには民主化未だしの感を深うするもののあることは否めない事実である。このことはまた新憲法の一つ一つの内容にわたっても言えることであり、ここに新憲法を国民的生活事実をもって裏ずけて行く必要があるのである。そのためには今日以後のわが国の老若男女、その一人一人がそれぞれの独立の民主主義者として再出発し、その生活事実を通して国民的知性を具体的に高め得るような方途が講じられなければならぬのである。
 かくして民主主義の形式と内容とはその国民生活の事実の中で統一され、やがて国民生活の進展にともなって、真に下から盛りあがる力による次の新憲法の制定にまで必然的に達するであろう。日本はいま、今日の新憲法実施に於てその第一歩を踏み出そうとしているのである。
 これをおもい、新しい日本の門出にあたりわれわれはかがやきあふれる希望と喜びのうちにも、身のひきしまるような責任と使命の大きさと重さを感じ、眼を天に、足を大地に、歩調を一つにした前進を誓い合わねばならぬ。

(典拠は、富山県立図書館所蔵マイクロ資料より)

by kenpou-dayori | 2016-05-04 14:18 | 日本国憲法施行日の社説


<< 憲法便り#1713:『憲法便り...      日本国憲法施行日の社説No.3... >>