2015年4月29日(水)(憲法千話)
2015年5月9日(土)補訂:憲法公布記念日の吉田茂首相談話全文(再録)
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岩田行雄編著『世論と新聞報道が平和憲法を誕生させた!』第四部より
憲法便り#907:『日本国憲法公布、その日、あなたの故郷ではNo.7: 山形篇』
【山形新聞】公布記念(十一月四日付二面より)
「祝う新しい国の始め 式場に湧く万歳」新しい国つくりの発足を祝う新憲法公布の三日、晴れ上がった晩秋の空は菊花かおって、あくまでも澄みわたり、街に村にこの日を寿ぐ日の丸の旗が眼にいたいほどあざやかに映る。百三十万県民は、この今こそ『主権在民』の夜明けを迎えたのである。どの街もどの村でも、心からの喜びに溢れて祝賀の式典を挙げ、新雪に装われた四囲の山々を振り仰いでは、今さら生きる喜びに浸ったのであった。この日、山形では県営グランドに高松宮様をお迎えして祝賀式典を挙行したが、久しぶりに一万人の『君が代』斉唱の感激のどよめきはひたぶるに昂まり、期せずして万歳の叫びは秋空高く鳴り響いた。かくて、『戦争放棄』を永久に宣言した、新しい日本の発足が約束されたのである。
[山形市]
「賑かな平和絵巻 仮装行列に観衆十萬」秋晴れのよき日、民主日本の前途を祝さんとする新憲法公布の記念行事、県都山形市の仮装行列は七年ぶりに復活しただけに豪華版そのもので、これを観覧せんとする群衆は実に万を超え、さながら解放された民族が心から平和国家を祝福する頼もしい絵巻であった。行列は、団体十二、個人九、広告六で、どれもこれも新憲法にふさわしい『平和の祝典』、『平和の使い』、『女性解放を叫ぶ』などの題名を掲げた再建日本的な色彩が多く、一般市民を沸き立たせた。この日の行列順路は千歳公園に集合し、薬師町、六日町、七日町大通、横町、十日町を通り、誓願寺四辻で午後三時半頃解散されたが、午後四時入選者は次の如く決定した。
〔団体〕△特選二千五百円『狐の嫁入』原田製作所 △一等二千円『平和の使』山形市職員会女子部 △二等千円『平和の天使太平洋を渡る』 蚕業試験所 △三等七百円『建設まつり』山形職員会 △四等五百円『雀のお宿』大場製作所 同『平和の祝典』鐡興社 △五等三百円『悪魔を払って新憲法』『供米音頭』『日本再建は体力から』
〔個人〕△一等五百円『文福茶釜』 △二等三百円『土人踊り』(土人は差別用語とされ現在は使われていないが、当時の記事をそのまま伝える)△三等二百円『昭和の天の岩戸』『新憲法発布祝賀紅葉狩り』 △四等百円『傳兵衛猿回し』『戦災者供養』『熊と金太郎』『マックアーサー元帥ありがとう』、〔広告〕△一等百円『七福神宝船』勧銀山形支店 △二等五十円『病魔退治』日本製薬、関東軽金属、三等は省略。
[米沢]
三日午前十時新築成った興譲国民学校講堂で市主催の記念祝賀式を挙行、官公署長、名誉職、隣組長以上の町内会役員が参列し祝意を表した。
各学校、会社等でも記念式を挙げ、各国民学校では式後旗行列を行い、「祝」の字を記した旗を打ち振って各校区を行進した。
街頭には学童の街頭展が行われ、祝賀の図画や習字がはられ、商店でも店頭装飾をした。
五日には高女校で記念講演会が開催され、経済倶楽部中央会専務佐藤伊兵衛氏の『新憲法と経済の前途』と題する講演があり、七日には国民校の学校訪問リレー、十日には市営運動場で市民体育大会、十四日には興譲校で各校連合祝賀音楽会があり、中旬まで祝賀行事が繰り展げられる。
[新庄]
▲最上地方事務所の記念式は、三日午前九時から会議室で挙行、全員参列のうえ高山所長より歴史的祝典の意義を強調して感激と喜びを新たにした。
▲また新庄町役場では町会を開いて祝電を可決し、次いで孝子節婦十名及び町立図書館長小村貞次郎氏を表彰。
▲各町村でもそれぞれ記念行事を行い、郡民あげて平和日本の黎明をことほいだ。
[余目]
三日午前八時半から国民学校で新憲法公布記念式を挙行、のち講堂で祝賀演芸大会、奇人倶楽部主催の日本舞踊講習等を開き、二千の学童は紅白の餅を頬ばり歓喜一色に溢れた。夜は数年振りで提灯行列を行い、町々を練り歩く人々の歓声と平和な火の波で賑わった。
[田川炭鉱]
新憲法公布の結果、懸案の新選炭場工事も順調に竣工したので、従業員一同は殊更の喜びに溢れ、永年勤続者、生産挽回運動功労者、善行者の表彰式を挙行。また相撲、仮装行列、流し踊り、演芸大会で賑わい、子供等はお祝いの紅白の餅を手にして喜びに溢れた。
[鶴岡]
式は午前七時から公会堂で挙行、加藤市長の憲法朗読、佐藤市議長の祝辞等があって八時終了。また記念の市民運動会を開き賑やかな一日を終った。なお新憲法公布記念講演会は次の通り。△六日午後一時から市公会堂で『新憲法を生活に』一燈闌主西田天香氏。△七日午後一時から公会堂で『新憲法と経済の前途』東洋経済新報社常務取締役佐藤伊兵衛氏。
[酒田]
喜びに溢れる酒田市の行事は、先ず午前九時半商工会議所に於いて市会議員、町内会長、市吏員が参列して記念式を挙行、市会議長の祝辞によって幕を開けた。午前九時からは日和山公園グランドで市主催の町内会対抗記念運動会が挙行され、二万の観衆の熱烈なる応援のうちに、第四十一町内会が優勝。午後一時からは第一国民学校で芸能大会があり、各派の舞踊競演があった。
昭和21年11月3日付『山形新聞』一面
上段は、下記の積極的な記事。
「歴史的新憲法公布さる」「新日本の巨大な朝明け」の見出し。
「全世界への啓蒙 二外紙特派員のメッセージ」
「(尾崎)咢堂翁に新憲法を聴く 総てを議会で解決 よいも悪いも運用如何」
下段に、「慶祝 新憲法公布」の見出しのもとに、県知事をはじめとする部課長連名の祝賀広告と並んで、
県会議長をはじめとする山形県会議員の連名の祝賀広告。
(画像の出典は、国立国会図書館所蔵マイクロ資料:YBー24)
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2015年5月9日(土)(憲法千話)
憲法便り#961:吉田茂首相特集(第五回) 昭和21年11月3日 憲法公布記念日のラジオ放送
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以下は、【再録】の記事です。
2013年 07月 12日
憲法便り#112 吉田茂首相特集(第五回) 昭和21年11月3日 憲法公布記念日のラジオ放送
吉田茂首相は昭和21年3日午後8時から約10分間『日本国憲法の公布に当って』と題してラジオ放送しました。
翌11月4日付の『朝日新聞』、『毎日新聞』、『讀賣報知』の報道はいずれも要約で、『毎日新聞』は東京版と大阪版で文章の違いがあります。
したがって、ここでは共同通信配信の全文を掲載した『山形新聞』を引用します。
『山形新聞』昭和21年11月4日付一面より
「理想実現に努めん 世界人類の進歩へ 首相放送」
「諸君、本日新しい日本国憲法が公布せられました、天皇陛下におかせられましては勅語を賜り、全国民に対し新憲法の意義と今後我が国の進むべき途につきしたしくおさとしになりましたことは、まことに恐懼(きょうく)に堪えません、
昨年我が国が受諾せるポツダム宣言並に降伏文書には『日本国々民の間における民主々義的傾向の復活強化に対する一切の障碍を除去し言論、宗教および思想の自由並に基本的人権の尊重すべきこと』並に『日本国の政治の最終の形態は日本国国民の自由に表明する意思により決定さるべきこと』という条項があるのであります、本日平和日本の向わなければならぬ大道を明かにしたものであります、これによって国家の基本法たる憲法の根本的改正が絶対に必要となったのであります、
政府は前内閣以来鋭意それに関する調査立案を進め成案を得て過般の第九十回帝国議会の議に附せられたのであります、議会においては六月下旬より十月中旬に至るまで実に前後百十四日間という議会始まって以来未曾有の長期に亘って議会における代表者を通じて確定したもの、言い換えれば真剣なる論議を尽し貴衆両院共に政府原案に若干の適正なる修正を加え十月七日をもって新憲法は可決成立いたしたのであります
即ちこの憲法はその前文に明かな通り日本国民が選んだ議会に国民の自由に表明した意思による憲法であります、しかしこの憲法は天皇を日本国および国民統合の象徴を(と)明記し人類普遍の原理に基き且徹底した平和主義によって国家再建の基礎を固め、国民の福祉を永久に保障せんとするものであります、また世界に率先して戦争を放棄し、自由と平和を希求する世界人類の理想をその条章に明記いたしますとともに常に基本的人権を尊重し、真の民主々義国家を建設せんとする国民の決意を明かにしたものであります、我々国民はこれによって高い理想をかかげて一路祖国再建の途へと進まんとするものであります(*)、即ち我々は常にこの理想に生き力を合せてその運行につき常に新憲法の精神にのっとり、その理想に努力いたさんとするのであります、現在の国民の努力は次々に次代の国民によって受け継がれ真の平和国家文化国家として再建し、全世界の尊敬と信頼とを集めんとするものであります、私はこの憲法の下我々国民がたえざる努力を続けますならば必ずや我が日本は国民の幸福を確保し、更に進んで世界人類の進歩に偉大な貢献をするにいたりますことを堅く信じて疑いません、
かくしてこの理想の実現する日我々の子孫は我々が新憲法の公布を祝賀して国家再建のための努力を誓い合った、この昭和二十一年十一月三日を深く感銘をもって回想することと信ずるのであります、本日この意義深い日に当りまして私は全国民諸君と共に新日本を建設せんとするの決意をここに更に堅くする次第であります」
以上は、【再録】の記事です。
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※平和憲法を守る闘いに寄与するため、昨年5月に下記の新著を緊急出版しました。
『世論と新聞報道が平和憲法を誕生させた!』
―押し付け憲法論への、戦後の61紙等に基づく実証的反論―
(これは『心踊る平和憲法誕生の時代』の改題・補訂第二版です)
闘いは、まだこれからも続きます。「押し付け憲法」論、自主憲法制定論に対する闘いに、是非とも本書を活用していただきたい。
ご注文は、下記の書店へ
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