2015年4月30日(木)(憲法千話)
(
リストに戻る)
岩田行雄編著『世論と新聞報道が平和憲法を誕生させた!』第四部より
憲法便り#909:『日本国憲法公布、その日、あなたの故郷ではNo.9: 茨城篇』
【茨城県】公布記念(十一月三日付二面より)
「新しい日本の黎明 新憲法公布各地の祝賀」「植樹や大運動会 山車も練歩く 盛あがる復興気分」新しい日本の黎明を告げる新憲法は、菊の香薫るきょう三日を卜して公布され、ここに平和国家、文化国家の道標として華やかに誕生したのである。この日全国津々浦々に至るまで盛り上がる奉祝の気を結集させて、日本国憲法公布記念祝賀式を挙行。祝辞、乾杯ののち万歳を三唱するが、県下の各市町村、国民学校、中等学校でもそれぞれ任意に奉祝式を行い、この佳き日を寿ぐ運動会、体育大会が菊日和のもとに開催され、また各種団体も同様、意向を凝らした記念行事を催して、新憲法を祝う一日を送ることになっている。特にこの日はマ司令部から国旗の掲揚を許可されて、家々の軒先にはためく国旗と、敗戦後初めて唱和する万歳の声に、町も村も新憲法慶祝の一色に塗りつぶされる。なお、きょうは記念の煙草と奉祝の酒が特配されて、心ゆくまで民主日本の新発足を祝い、各地に次のような記念行事が繰り展げられる。
[水戸]
水戸市では午前九時から新荘国民学校で祝賀会を開き、風戸市長の祝辞後乾杯、新生日本の発足を祝し万歳を三唱する。なお、記念事業として市社会教育委員会と協力、戦災跡地の美化清掃と一万本の植樹を行い、復興水戸市に美観を添える。
[土浦]
土浦市では午前八時から国民学校校庭で祝賀式を挙行、引続き市政功労者の表彰式を行い、終って西校校庭で市民大運動会を開く。また原市長の手による記念植樹があり、同校講堂で公民会主催の講演会が開かれる。
[日立]
日立市では午前九時から記念祝典を挙行、日製日立工場では復興祭を盛大に行い、会瀬グランドでは運動会が開催される。また、山車が出動、市内を賑やかに練り歩く。
「街頭へ旗の波 町も村も民主の喜び」
[大田町]
三日午前九時国民学校に官民多数参集して祝賀会を挙行。終ってから大中、大高女、青年、国民学校生徒児童と一万町民が盛んな旗行列で町内を練り歩く。一方、町当局は各種団体と協力して、横断幕やポスターを賑やかに街頭展示。また、この日を期して町の公民館は独立発足し、記念に植樹を行う。なお、午後六時から国民学校講堂で町と青年学校共催による座談会を開き、一日を祝賀に送る。
[久慈地方事務所]午前八時半寺山所長以下全所員が参集して記念式及び記念植樹を行い、午後女学校グランドで老壮対抗の庁野球大会を開く。
[下館町]
午前九時から町民運動会、卓球大会、テニス大会が開催される。
[石岡町]
三日午前九時から国民講堂で官民合同の記念式典を挙行。女学校と国民学校では午前八時半から記念式典挙行の後、記念植樹、ポスター、書き方の展覧会を開く。
[那珂港町]
三日午前十時から役場楼上に町会議員、町内会長が参集、大内町長司会のもとに記念式典を挙げ、終って庭内に記念植樹を行い、午後一時から地方課長南部哲也氏の記念講演を行う。
[潮来町]
新憲法発布を心から祝福し、一、二、三の三日間山車九台の総引きを行い、町中を練り歩いている。
[麻生町]
三日山車が出て町内を練り歩き祝意を表すほか、記念祝典がある。
[鹿島町]
国民学校、青年学校、男女青年団連合会主催の秋季体育大会が午前九時から国民学校校庭で盛大に挙行され、全町の各官庁、各種団体のリレーも行う。
[高松村]
鹿島郡高松村では、午前十時から国民学校で敬老会を催し、村内の七十五歳以上の百余名を招待し、芝居見物のあと記念品を贈って慰安する。この日、木滝部落では山車をひいて祝賀する。
[行方郡]
△地方庁では三日午前九時から会議室で民主憲法発布式典を挙行、新憲法の輪読研究並びに小宴を催す。
[北相馬郡]
同郡守谷町栄町青年分会主催で二日、三日の夜素人演芸会、三日午前十時からは駅前広場で青少年相撲大会を開く。
[上田炭鉱]
多賀郡南中郷村日棚上田炭鉱十月中の出炭量は、目標一千二百トンに対し二五%超過の一千五百トンと飛躍的増産を成し遂げたので、三日の新憲法発布記念日に盛大な炭鉱復興祭を挙行する。午前七時半から鉱業所で祭典を挙行後グランドで運動会を催し、夜は六時から上田クラブで演劇会を開く。」
この記述を見て判るように、当時、炭鉱は、重要な産業であった。
昭和21年11月3日付『茨城新聞』二面
「新しい日本の黎明」という誇り高い見出し。
昭和21年11月4日付『茨城新聞』一面
上段は、
「香り高き新憲法公布 国家再建発足の歓喜」という、喜び溢れる見出し。
論説の題名は、「国民政治の拠りどころ」。
下段には、「祝 憲法公布」の見出しの下に、水戸市長をはじめとする祝賀広告。
(画像の典拠は、茨城県立図書館所蔵マイクロ資料より)
【研究メモ】:私が地方紙を集中的に調査し始めた時点では、『茨城新聞』は国立国会図書館は、昭和23年5月以降の所蔵で、私が必要とする昭和20年から昭和22年までの所蔵はなかった。
そこで、水戸市にある、茨城県立図書館での調査を行おうとした。だが、3・11で図書館の使用が出来なくなり、ようやく、半年後の9月1日の閲覧が再開された。再開直後に、同館を訪れたが、当時はまだ、震度5クラスの大きな余震が連日のように続いていた。
同紙は、新聞資料室の予算に余裕がなく、現在も補充されていない。
*次回は、栃木篇。
※平和憲法を守る闘いに寄与するため、昨年5月に下記の新著を緊急出版しました。
『世論と新聞報道が平和憲法を誕生させた!』
―押し付け憲法論への、戦後の61紙等に基づく実証的反論―
(これは『心踊る平和憲法誕生の時代』の改題・補訂第二版です)
闘いは、まだこれからも続きます。「押し付け憲法」論、自主憲法制定論に対する闘いに、是非とも本書を活用していただきたい。
ご注文は、下記の書店へ
美和書店 電 話03-3402-4146 FAX 03-3402-4147