2015年5月2日(土』(憲法千話)
岩田行雄編著『世論と新聞報道が平和憲法を誕生させた!』第四部より
憲法便り#923 :『日本国憲法公布、その日、あなたの故郷ではNo.23 : 福井篇』
【福井新聞】公布記念(十一月四日付三面より)
「多彩 新日本の門出 祝賀日和に街は晴着の氾濫 七十万県民喜びに溢れる」全国民慶祝のうちに大憲章が公布された昨三日は、朝のうちの小雨もやがてからりと晴れ上がり、絶好の祝賀日和であった。この日県庁はじめ県下各公官署、学校では午前九時を期し一斉に記念式典が挙行されたが、威儀を正したモーニング姿と女子華やかな晴れ着姿が各所に散見され、また式典に引き続いて各地では運動大会、音楽会、仮装行列などの新日本の門出を意義づける多彩な行事を繰りひろげ、七十万県民を挙げてこの日を寿ぐ喜びにあふれていた。かくて民主日本の第一歩が大きく踏み出された。
「街に流れる朗色 新日本建設の息吹を乗せて」
「デデン、ドンドン、ペンぺペン…浮き立つような三味線や太鼓の音…嬉しい民主憲法公布記念日の三日、賑やかな琴の音と囃子の響きが、朗色みなぎる薄ぐもりの街々を流れゆく。秋もたけなわ、祖国再建の基礎築くわれわれの理想と決意も高らかに、新憲法は公布された。この日を大いに祝おうと、福井新興飲食業組合東部々会の五十余名が奇想天外な仮装行列、美しい花嫁、花婿を先頭に三味、太鼓、笛吹く人を乗せた山車が続き、そのあとに天狗、山伏、坊主、貫一、お宮等々が続く。溢れる喜びに沸きに沸く多くの人々に囲まれたこの仮装行列は、明朗健全な平和日本建設の息吹を乗せて、街から街へと練り歩いた。
[敦賀]
新憲法公布記念敦賀市復興祭は、市と商工会議所の共催のもとに、三日の明治節から各種行事の幕が切って落とされたが、第一日の三日は、午前十時から市公会堂はじめ各学校では記念式を挙行、午後一時からは復興祭の先頭を切って公会堂で演芸大会、一方敦商コートで庭球大会、西校では生花大会を開催したほか、市内各商店では一斉大売出しを行った。
[丹生郡]
民主自由の新憲法が公布された三日、丹生郡では丹生地方事務所をはじめ郡下国民学校で午前八時、一斉に記念式典を挙行、終了後直ちに県立丹生高女をはじめ各国民学校校庭で祝賀体育大会を挙行した。
[松岡町]
松岡町では新憲法公布の祝賀記念として三日午前八時から全町挙げて運動会を挙行、さらに四日午前九時から青年団を中心として警防団、婦人会などの演芸会を開催する。
[武生町]
「武生の駅伝競走」武生町主催の新憲法公布記念駅伝競走は、三日午前九時に町公会堂前をスタート。各町内から選抜された三十六人の選手が、全コース七キロを競った。
▲「武生は人の波」
三日の国鉄武生駅の旅行者人数は一万五千人、福井鉄道二万人その他、附近部落から押し寄せた人々で、この日の武生町は沸き返るような賑わいを見せた。
以上は四日に報じられた各地の表情であるが、十一月三日二面では「大憲章を壽ぐ喜び」「奉祝絵巻一色に 県民の多彩な行事」の見出しの下に次の各地の行事予定詳細が報じられている。
[福井市]二日春山国民学校校庭で開催された教員組合主催の市内国民学校連合体育大会を皮切りに、三日は午前九時から市役所で明治節式典を兼ねた公布記念式典を、また福井商業校庭では午前八時から市連合青年団主催の陸上競技大会、さらに新興飲食店組合では組合員総出で仮装花嫁行列を行い、市内を練り歩くなどがある。続いて八、九両日には春山校で市主催の市内学童音楽大会を、九、十両日には順化国民学校で同じく市主催の市内中等、青年、国民学校生徒、児童の出品になる作品展を催すなど、多彩な行事がある。なおこの他、三日を中心に一日から七日まで街の清掃強化運動が、これも市を主体として大々的に展開されている。
[坂井郡]
坂井地方事務所では、三日午前九時から松田所長ほか全員参列、厳粛なる記念式を挙行。終って松田所長から新憲法の公布につき所信を述べ、新日本再建に邁進するよう全庁員を激励するが、郡下の行事を拾ってみると次の通り。
▲三国町で同日午前八時から南国民学校校庭で、町民更生体育競技大会を開催。
▲芦原町では同日午前九時から同町国民学校校庭で祝賀式を挙行した後、児童の相撲大会を皮切りに、官公署をはじめ旅館業組合芸妓さん達も飛び出して一般町民の体育大会を開くが、賞品には名物のおさつなどが用意されている。
▲金津町では同日午前十時から同町国民学校校庭で大人子供も挙っての連合運動会を開くが、既報の珍趣向親子競争が興趣を呼んでいる。
▲県農学会坂井支部ではこの日を記念して、職員全部が丸岡町から大内峠を越えて山中に出るハイキングを催す。
▲川西各村で、午前八時を期し一斉に各国民学校に村民が集まり祝賀式典を挙げたのち、村ごとに各学校で男女青年を中心とする体育大会を催す。また木郷(?)村では四日午前九時から木郷(?)校に復員者七十六名を招き慰労会を行う。
▲丸岡町では町内各戸に国旗を掲げ、平賀国民学校全児童は午前十時から町内を行進。午後一時から同校庭で町内単位の少年軟式野球大会を開く。一方、待望の城東運動場の修理も大半終ったので、丸岡地区軟式野球連盟主催の野球試合を午前十時からグランド開きを兼ねて盛大に行う。
▲県立坂井農学校では、三日午前八時から在学生の絵画と書道の展覧会を公開、これと併行して同窓生による時局弁論大会を同校講堂で開催。
[大野郡]
▲大野町では三日は□栖神社祭礼の中日にあたり、全町を慶祝とスポーツの秋で塗りつぶす。大中校での学年対抗野球大会ほか。
▲勝山町では全町挙げて新装成った盛器(?)男子校の同町総合運動場で体育祭、町内総合運動会を開催する。
▲なお、同町野球連盟では野球大会を挙行、この佳き日を祝福するが、この野球試合は、プレイヤー全員が赤と紫の陣羽織を着る珍姿で試合を行い、審判はこれまた相撲の行司のカミシモを着て、天下泰平の扇子を右手にという新野球である。
[丹生郡]
二町十九ヶ村では、午前九時各国民学校で一斉に厳粛な記念式典を挙行して大憲章に満腔の祝意を表すのと共に、この日を期して新憲法精神の徹底運動を展開する。
▲朝日町=この日を祝賀する朝日町では、朝日野球クラブ主催の祝賀軟式野球試合が、同町国民学校校庭で開催され、トーナメント戦が行われる。
▲天津村ほか十余の国民学校では新憲法公布祝賀記念式典終了後、全村民合同の多彩な体育大会を挙行。
[敦賀市]
敦賀市の祝賀復興祭行事は、三日から三日間にわたり市と商工会議所共催で豪華絵巻を繰り広げる。
▲記念式典を三日午前十時から市公会堂で、演芸大会が三、四日午後一時から市公会堂、テニス大会は三日午前九時から敦賀商業校コートで、生花大会を三、四、五日午後一時から西校、町内催し物は四、五日午後一時からで集合場所は市役所前、野球大会が四、五日敦商グランド、相撲大会は四日気比□宮境内、駅伝競走が五日午後一時気比□宮出発で九キロを競う、また市内商店が大売出しを三、四、五日に一斉に行う。
[南条郡]
武生町における憲法記念行事は次の如く展開される、
▲町内会選抜六組の仮装行列=午後三時学校出発、町内一巡、
▲駅伝競走=午前九時公会堂前出発、町内六ヶ所駅伝、
▲俳句大会=午後一時から東学校、
▲学童写生大会=午前八時から西学校、
▲郷土舞踊大会=午後七時から東学校、
▲花火打ち揚げ=午前七時から終日、
▲王子保警防の演芸=午前九時から王子保校校庭、
▲王子保各種団体連合体育会=午後一時から王子保校校庭。
[三方郡]
三日午前九時から八村国民学校校庭で各種団体部落対抗を盛り込んだ祝賀運動会を開催する。当日は小浜線開通三十周年記念日でもあるので、三方駅では記念の夕を催す。
[遠敷郡]
小浜町では三日午前九時から浜中講堂に町議、町村長、一般有志ら多数参列し、感銘深き記念式を挙行、式後同校グランドで町内六連合会対抗軟式野球大会を開催。一方第三連合会は小浜靑校(?)校庭で総合運動会を開催するなど町を挙げてこの佳き日を祝福する。なお町では記念事業として総合運動場設立も企画している。
[今立郡]
粟田部青年団は憲法公布の三日午後六時から花□校で討論会を開き、粟田部町の更生策如何と題して検討する。
[大飯郡]
高浜町は三日午前九時から同町国民学校校庭で全町民参加して、町長司会のもとに意義深い記念式を挙げてのち連合運動会に移り、午後四時まで老いも若きもうちつれて明朗スポーツ絵巻を展開する。一方各区毎に仮装行列の一隊が奇想天外な装いを凝らして町内を練り歩き、一等から十等まで一般投票で入選、町からご褒美が出る。そのほか、運動会では各区対抗百メートルリレーが呼び物となり、町一丸菊の佳節を寿ぐことになっている。」
【 再録 】
ブログ『憲法便り』を開設した直後、2013年5月16日に掲載した、
憲法便り#11 憲法公布記念シリーズ(第5回)「当時の福井県では」
「積極果敢な祝賀広告」
『福井新聞』も国立国会図書館は所蔵していませんでしたので、福井県立図書館まで調査に行きました。
富山県立図書館の調査を終えて、奈良に向かう途中での慌ただしい調査でした。県立図書館のマイクロリーダーの調子が悪く、一時間ほど時間を無駄にしましたが、幸いにして併設されている福井県立文書館(?)で『福井新聞』をマイクロフィルムからコピーした綴じ込みがありましたので、かなり仕事がはかどりました。
福井も初めての訪問で、福井駅の駅員さんに訊けばバス乗り場は簡単にわかると思ったのですが、誰も知りません。ようやく30分に1本の巡回バスがあることがわかったのですが、停留所の場所が分からず、結局は大雨の降る中をタクシー乗り場まで戻るという苦労がありました。
県立図書館は以前は駅の近くにあったそうですが、現在は30分もかかる畑の真ん中にありました。でも、行った甲斐がありました。
東京にいると、福井県は、現在は原発問題だけで注目を集めているだけのようですが、憲法公布当時は、次のように、とても活発な運動が行われていました。
『福井新聞』11月4日二面:
「新生日本の根幹 歴史的新憲法公布」、同 三面「新憲法公布 建てん平和日本 築かん民主日本」、同 四面「主権在民 戦争放棄 人権尊重の新日本憲法」
以下に、福井県の皆さんへの応援の意味を込めて、この3点を紹介します。
(画像の典拠は、福井県立図書館所蔵マイクロ資料および福井県立文書館の複写版より)
*次回は、岐阜篇。
※平和憲法を守る闘いに寄与するため、昨年5月に下記の新著を緊急出版しました。
『世論と新聞報道が平和憲法を誕生させた!』
―押し付け憲法論への、戦後の61紙等に基づく実証的反論―
(これは『心踊る平和憲法誕生の時代』の改題・補訂第二版です)
闘いは、まだこれからも続きます。「押し付け憲法」論、自主憲法制定論に対する闘いに、是非とも本書を活用していただきたい。
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