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岩田行雄の憲法便り・日刊憲法新聞

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2015年 05月 05日

憲法便り#937:『日本国憲法公布、その日、あなたの故郷ではNo.37: 広島篇』

2015年5月5日(火)(憲法千話)

岩田行雄編著『世論と新聞報道が平和憲法を誕生させた!』第四部より

憲法便り#937:『日本国憲法公布、その日、あなたの故郷ではNo.37: 広島篇』

原爆を投下されてから一年三ヶ月後、広島がどのように日本国憲法公布を迎えたかを示すために、
まず、昭和21年11月3日付『中国新聞』の第一面と、第二面を示しておきたい。

昭和21年11月3日付『中国新聞』一面上
「世紀の新憲法きょう公布」「民主日本の産声(うぶごえ)」の見出し。
社説は、「新憲法公布」
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昭和21年11月3日付『中国新聞』二面上
「憲法で国は救えぬ よき反省とよき覚悟 尾崎咢堂翁・感あり」(逗子にて 伊佐本社特派員発)
*「よき反省とよき覚悟」は、現在にぴったりの警句である。
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【中国新聞】公布記念(十一月四日付二面より)
「きっと平和国 誓いに奏づ英軍楽隊」民主日本の黎明を告げる新憲法は爛秋の三日、明治の佳節を卜して公布され、この日日本民族の生命を託する国民大憲章祝賀の声は全国津々浦々に満ち溢れた。広島市では、国民再出発の起点ともなるこの日を祝するため、午前九時半から基町元護国神社前広場で市民有志多数が参集して、県、市、放送局、商工会議所、中国新聞社共催の『改正憲法公布祝賀大会』を九時半から開催。広島中央放送局長代理放送部長門田重武氏の開会の辞で幕が切られ、県知事代理和久田内政部長、木原市長の式辞、英連邦軍司令官ロバートソン中将から寄せられたメッセージをT・H・エリソン大尉が代読し、次いで山本本社副社長が左記の宣言朗読ののち、特別動議によりマ司令部に感謝決議を贈ることに決定、直ちにマ司令部に発信した。次いで県会副議長原龍(?)太郎氏、市会議長柳原格氏、都市代表町会連盟理事長山田助松氏、農村代表安佐郡八木村中田清一氏、青年代表広島靑連委員長松本晴美氏、婦人代表広島市上柳町斎藤志津子さん、学徒代表広一中土井三郎君、児童代表皆実校上田好子さんがそれぞれ新憲法公布の喜びと新日本建設の誓いを述べた。最後に、商工会議所会頭代理理事長横山周一氏の閉会の辞をもって終式したが、日本民族の新生の門出を祝して、英連邦軍第六十七(?)部隊軍楽隊が特別演奏を行い、国境を越えてデモクラシー讃歌をリズムに乗せ、和気藹々(あいあい)裡に十一時過ぎ祝賀大会を終えた。
   宣  言 
「新日本の基盤であり、民主的平和国民の永遠の規範たる改正憲法は、国民の総意に基き本日ここにその歴史的公布をみたり。ポツダム宣言受諾後の日本は、再び恐るべき暴力と破壊と殺戮を以て人類文化の進展を阻害することなく、正義、人道に則り、平和友好の世界顕現に邁進し、以て崇高にして高大なる大理想を達成せんことを期す」

昭和21年11月4日付『中国新聞』二面上
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(以下、四日付四面より)
「新日本の黎明に歓呼 各地に繰り展げた記念行事」
[広島市]
「民衆の喜び乗せて馳る」広島を走る二度目の花電車、外装こそ昔のそれと比すべくもないが、乗る人々の顔は民主日本の歌(?)声に笑みはほころびている。憲法が決まった、原子沙漠もようやく立ち直ろうとしている。増配も決まった。夢見る未来は美しく、また洋々としている。再び言わん、見た眼には粗末な花電車ではあるが、しかしその乗せる夢はらんまんと咲きほころびている。(写真は走る花電車)

昭和21年11月4日付『中国新聞』四面上
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▲広島女子商業校では、六日午前九時から新憲法公布及び戦災復興記念に併せて、開校十九回目の運動会を催す。
[尾道市]
尾道市の新憲法公布記念祝賀式は、三日午前十時から長江国民学校講堂で挙式、官公署、学校、諸団体長、町内会長ら五百余名が列席、石原市長の式辞と有馬尾道区裁判所監督判事その他の祝辞、余興の催しがあり、民主日本の前途を寿いだ。
[加茂郡竹原町]
竹原町では、午前十時から竹原国民学校で新憲法公布記念祝賀式を挙行、当日は竹原名物『やつさ踊り』、仮装行列などを行う。
[安芸郡]
民主の門出を祝う新憲法公布の三日、安芸郡下の町村では、各地で次の諸行事が行われる。△海田市町では、文化連盟主催で各地区競演の道中踊りや山車を繰り出す。△船越町では、町主催の町民大運動会を行い、山車を繰り出す。△奥海田村では、成本青年団の道中踊りなど多彩な行事を繰り展げる。△海田県女でも、記念運動会を挙行する。
[安芸郡音戸町]
音頭町では、元アメリカ駐在布教師毛利令知氏を招いて、一日から三日にわたり同町大誠寺説教場で“アメリカ文化と日本文化について”の憲法公布記念講演会を開き、各隣保会隣組員らが日割を定めて訓(?)講、多大の感動を与えた。

[中国新聞社主催の改正憲法公布記念行事予定]
▲「記念大講演会」〔講師〕法政大学教授中村哲氏、東京帝大教授田中二郎氏〔会場〕広島県下=広島、呉、尾道、福山、三次、県庁並びに五日市町で講習座談会を開催、山口県下=山口、岩国 *日時・会場の詳細は追って発表。
「民主憲法普及運動」
〔主催〕広島県・中国新聞社〔目的〕一大民主化運動展開のため、関係部門の専門家、有識者を以て講師団を組織し、各方面の要請に応じ、改正憲法、地方自治、その他時事問題の講演会、座談会等に派遣する。
「青年模擬国会」
〔主催〕広島県青年連合会・中国新聞社〔目的〕現下靑年層に対する政治意欲の向上と改正憲法精神の普及徹底のため、県下青年団体から代議員を選出し、建設的な議題を中心に時事問題を検討する。日時、会場その他詳細は追って発表。

【施行記念】
[中国文化賞復活]五月三日 中国新聞社

〔編集中記⑧〕『中国新聞』(一九四六年十一月四日三面)
一九四七年五月三日、帝国劇場での記念祝賀会でヴァイオリン独奏をすることになる諏訪根自子さんの心温まる話。
「[草深い三次に灯を点す希望音楽会・第十話]「農村へ芸術の贈り物 名器を携えた根自子さん」一瞬、場内はシーンと静まりかえった。今や天才的芸術家諏訪根自子さんの手で運命の名器ストラデヴァリウスが鳴ろうとしているのだ。ベートーヴェンが宿命的な耳疾に悩まされ、懊悩と煩悶の中に夜を日についで作曲したというアパッショナータ・ソナタが、根自子さんの弾力性ある左手のテクニック、均整のとれた豊かな運弓によって、織り成されてゆく悲痛な嵐のような混乱をもって始まるアンダンテの静寂、それは深淵の底から救いを求めて神へ祈るベートーヴェンの姿そのものである。嵐はつのり、陰鬱な雲は嵐を孕む、夜の闇の上に稲妻が閃き、暴風の絶頂に近づきつつある。しかも突然嵐の頂上で暗雲はかきけされ、朗らかな静かな大気は美しい朝焼けとともに訪れて来る。白菊にかおる朝の露……
ふと幻想からさめると満堂の拍手は、微笑とともにうなづく根自子さんを包む。これは二日、三次高女で三次音楽連盟によって開かれた第六回希望音楽会の状況である。この草深く紅葉に包まれた三次の町で開かれた音楽会では、根自子さんにとり大阪を除いて関西での処女出演であり、帰朝後全国でもまだ第六回目にしかあたらない公演である。このかげには一つのエピソードがある。それは、従来有名人は宣伝価値をあまりにも重んじて農村へは目もくれないのであるが、根自子さんは「本当に聞いてくれるというのなら、どこへでも行こう、然も田舎は文化に接することが少ない。私はこの人々にこそ、よい曲を聞かせてあげたい」という温かい心から、四囲の反対を押し切って、二十四時間の汽車の旅もいとわず来てくれたのだ。今迄の公演には常に黒ビロードの服を着たという根自子さんは、今日は初めて白いドレスにその細い体を包み、汽車ギリギリの時間まで二回もアンコールに応えてくれた。彼女は、今後とも大都市のみならず、農村へも音楽文化の普及を図り、また児童のための公演をする心算と抱負を語った。
(写真は名器に無心の根自子さん)

昭和21年11月4日付『中国新聞』三面上
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(画像の典拠は、すべて広島市立図書館所蔵マイクロ資料より)
【研究メモ】:広島県立図書館ではなく、広島市立図書館を利用させていただいたのは、
第一に、新幹線広島駅からの交通の便が良いこと、
第二に、拙著『検証・憲法第九条の誕生』のご注文をいただいた際に、寄贈しこと、
第三に、友人が秋葉市長に拙著『検証・憲法第九条の誕生』を贈呈したところ、丁寧な手紙をいただいたことによる。
広島訪問は、2011年5月23日から27日までの四泊五日で、徳島県立図書館、香川県立図書館(高松)、鳥取県立図書館、広島市立図書館と強行スケジュールを組んだ、最終目的地。当日は、朝から、土砂降りの雨。
広島訪問は、2006年2月12日に、「ヒロシマ革新懇」のお招きで、講演のため訪問して以来。
講演の会場は、広島平和記念公園内にある資料館に付設された集会場。

*次回は、岡山篇。

※平和憲法を守る闘いに寄与するため、昨年5月に下記の新著を緊急出版しました。
『世論と新聞報道が平和憲法を誕生させた!』
―押し付け憲法論への、戦後の61紙等に基づく実証的反論―

(これは『心踊る平和憲法誕生の時代』の改題・補訂第二版です)
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闘いは、まだこれからも続きます。「押し付け憲法」論、自主憲法制定論に対する闘いに、是非とも本書を活用していただきたい。
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by kenpou-dayori | 2015-05-05 21:35 | 続3・憲法千話・公布記念行事


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