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岩田行雄の憲法便り・日刊憲法新聞

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2015年 05月 31日

憲法便り#1017芦田委員長による改正案委員会論議のまとめと、小委員会の設置

2015年5月31日(日)(憲法千話)

憲法便り#1017芦田委員長による改正案委員会論議のまとめと、小委員会の設置

第六章の前回まで、
憲法便り#1016 第九条:笹森順造委員(日本民主党準備会)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(9)
憲法便り#1015 第九条:高橋英吉委員(日本自由党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(8)
憲法便り#1014 第九条:山崎岩男委員(日本進歩党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(7)
憲法便り#1013 第九条:笠井重治委員(無所属倶楽部)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(6)
憲法便り#1012 第九条:加藤一雄委員(日本自由党)の質問の続き:『検証・・・』(第六版)第六章(5)
憲法便り#1011 第九条:加藤一雄委員(日本自由党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(4)
憲法便り#1010 第九条:山田悟六委員(日本進歩党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(3)
憲法便り#1009 第九条:鈴木義男委員(日本社会党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(2)
憲法便り#1008 第九条:野坂参三委員(日本共産党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(1)
憲法便り#1014 山崎岩男委員(日本進歩党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(7)
憲法便り#1013 笠井重治委員(無所属倶楽部)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(6)
憲法便り#1012 加藤一雄委員(日本自由党)の質問の続き:『検証・・・』(第六版)第六章(5)
憲法便り#1011 加藤一雄委員(日本自由党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(4)
憲法便り#1010 山田悟六委員(日本進歩党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(3)
憲法便り#1009 鈴木義男委員(日本社会党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(2)
憲法便り#1008 野坂参三委員(日本共産党)の質問:『検証・・・』(第六版)第六章(1)


『検証・憲法第九条の誕生』(増補・改訂 第六版)(p.103ー105)より
第六章 第九十回帝国議会 衆議院憲法改正案委員会での逐条審議(8)


改正案委員会の審議は、第九回(七月九日)で一般質疑を終了し、第十回(七月十一日)から逐条審議を開始した。第九条に関する審議は、第十二回(七月十三日)の後半と第十三回(七月十五日)の前半において、集中的に行われた。
そして、憲法改正案委員会の論議は、第二十回をもって終了し、「小委員会」での論議に引き継がれることになる。
本書第七章は、小委員会の論議の中から、憲法第九条、特に「戦争放棄」の表現の確定までの、様々な論議を引続き掲載する。
(2015年5月31日加筆部分)

【第二十回委員会】七月二十三日(火曜日)
午後一時四十七分開議、午後一時五十五分散会
出席委員四十二名・国務大臣八名・政府委員一名


【芦田委員長による改正案委員会論議のまとめ】
「世界が依然として偏狭な国家思想と民族観念に囚われている限り、戦争の原因は永久に除かれない」


芦田委員長 会議を開きます。本日は第九十八条以下の質疑に入るのでありますが、本条より第百条までは発言の申し出がありませぬ。これにて第十一章に対する質疑は終了致しました。
昨日まで二十回(十九回の誤り)にわたる会議において、憲法改正案に対する審議は詳細にかつ熱心に行われました。本日質疑を終了せんとするに当たり、委員長より政府に要望する点を二、三明白にしておきたいと存じます。

一、本改正案は、憲法付属の諸法典と相俟って、初めて完全なる運用を期待せられることは、言うまでもないことでありますが、皇室典範、国会法、参議院法、内閣法その他の多数に上る各種の法令は、政府の準備が整わないために、必ずしもその全貌を捕捉し得たとは考えませぬ。然るに改正憲法はここ数ヶ月にして実施せられるのでありますから、政府は一日も速やかにこれら憲法附属の法典を起案し、国民の世論に問う準備を進められんことを望みます。
二、本改正案が軍備を撤廃し、戦争を否認して、人類の平和を永遠に確保する理想を掲げたことは内外の斉(ひと)しく歓呼を以って迎えたところであります。しかしながら、単に我が国が戦争を否認するという一方的行為のみを以っては、地球表面より戦争を絶滅し得る訳ではありませぬ。すでに成立して居る国際連合機構といえども、その組織は戦勝国の平和維持に偏重した機構であって、いまなお敵味方の概念に支配せられた感なきを得ませぬ。我が国としては更に進んで、一視同仁の思想による普遍的国際連合の建設に邁進すべきであり、これを以って精神的に世界を指導する気迫を明示すべきであると信じます。
三、本改正案の運用に当たっては、すべからく、新世界に適応すべき民衆を教養することから出発しなければなりませぬ。世界が依然として偏狭な国家思想と、民族概念に囚われて居る限り、戦争の原因は永久に除かれないと思います。しかし真に世界平和の理想に向かって、民衆の思想感情を養成することは、非常に困難を伴う仕事であります。私は政府が将来この点に一層の注意を払われんことを要望致すものであります。
四、過去二十日間にわたる本委員会の質疑応答において、政府が改正憲法の法理的究明に、多大の努力を致されたことは、十分に諒といたすものであります。しかしながら、民主主義憲法の運用は法理のみに依って完璧を期し得るものではありませぬ。本委員会に現われた限りにおいて、政府が民主主義政治の運用に付き、内政外交の両面にわたり、新日本の建設に相応しき方策と、これを実行する熱意とを示すことに躊躇(ちゅうちょ)せられた感のあることは、国民に多少の失望を与えたこととおもいます。政府当局は自ら新憲法の精神を身に着けて、日本再建の先陣となり、官界、財界、各方面の民主化を徹底して、以って諸外国が信頼と友誼(ゆうぎ)とを以って我が国に対処するごとく、十二分の努力を払われんことを熱望する次第であります(拍手)。ご異議はありませぬか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

これにて帝国憲法改正案に対する質疑は終了しました(拍手)。これより委員会は、憲法改正案の討論に入るのでありますが、議事の進行上、十名位の小委員会を設け、修正案の取扱いを担任させることと致したいと存じます。

【小委員会の設置と付託について】

芦田委員長 さように決定致します。ついては、右小委員会の選挙の方法に付いて、おはかり致します。

鈴木義男委員 委員の選挙に付きましては、便宜選挙を省略して委員長のご指名に致したいと思います。

芦田委員長 鈴木君の動議にご異議ありませぬか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

芦田委員長 それでは委員長より小委員会の委員を指名致します。
廿日出厖君、江藤夏雄君、犬養健君、吉田安君、鈴木義男君、森戸辰男君、林平馬君、大島多蔵君、笠井重治君、これに不肖(ふしょう)委員長が参加して合計十名の小委員会を構成することに致します(拍手)。
つきましては、議題の条文に付いて修正等の意見ある場合には、すべてこれを小委員会に付託いたしまして、小委員会において修正に対する意見をまとめることとして進行致します。また、小委員会は案文全条にわたって検討する権能を持つことに致したいと思います。小委員会において一応の成案を得る運びに至りますれば、各派においてこれに対する態度決定する順序となるのであります。小委員会が成案を得ました時には、即刻委員会を開きこれを報告した後に、討論に入ることに致します。小委員会の開会に付いては後刻通知いたします。本日はこれにて散会致します(拍手)。

憲法便り#1017:第七章へと続く。
「戦争放棄」の表現確定までの、論議、論争です。是非ご一読、リツイートを!

by kenpou-dayori | 2015-05-31 10:34 | 自著連載


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