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岩田行雄の憲法便り・日刊憲法新聞

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2015年 06月 19日

憲法便り872:ドキュメント・朝日新聞上丸洋一編集委員への憲法研究協力とその中止について(第八回)

2015年6月19日(金)(憲法千話):加筆訂正:日付と曜日の間違いを変更

憲法便り#872 ドキュメント・朝日新聞上丸洋一編集委員への憲法研究協力とその中止について(第八回)

8月14日付『憲法便り#637』において、
「慰安婦」報道に関する、私の見解表明の代わりに、
アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)
が、8月10日に発表した
「要請文」を掲載した。

この要請文は、私の考えを「完璧」に代弁していたからである。

アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)は、早稲田大学の近くにあり、
我が家から、徒歩30分程度で行くことが出来る。

かつて、私は同館を訪問し、展示を拝見したことがある。

そして、館長の西野 瑠美子(にしの るみこ )さんにお目にかかり、話を伺い、
私の著書『検証・憲法第九条の誕生』を贈呈している。

見ているだけでも、「とても、つらい」内容なので、
被害女性たちの苦しみと悲しみは、いかばかりのものであろうかと思った。

その時以来、「慰安婦」とされた韓国女性の来日講演を聞いたり、
韓国で、「ナヌムの家」を訪問し、直接お話を聞く機会も持ってきた。

したがって、『朝日新聞』の定期購読者ではない私は、
「慰安婦」問題に関する8月5日と8月6日の『朝日新聞」を、
高田馬場駅構内の新聞販売スタンドで購入して来て、
特に、8月5日付を慎重に読んだ。

8月5日付『朝日新聞』一面トップ記事の見出しは、次の通りであった。
危険ドラッグ、41人死亡 起訴、昨年は2割未満

その他の1面掲載記事は、
「お父さん泣かないで 中国・雲南地震、死者398人に」
「自民、仲井真氏支援へ 沖縄知事選 別候補の擁立断念」
「慰安婦問題の本質、直視を 編集担当・杉浦信之」


『朝日新聞」の感覚は、あまりにもずれている。

本来ならば、一面トップには、
「慰安婦問題の本質、直視を 編集担当・杉浦信之」ではなく、
『「済州島で連行」証言 裏付け得られず虚偽と判断』の内容が、
謝罪と共に掲載されなければならない。

そして、社長が前面に立つべきである。

それに、「慰安婦問題の本質、直視を 編集担当・杉浦信之」の文章は、
何回読んでも、納得がいかない。

まるで、他人事のような文章であり、
誤報を認めることも、謝罪の言葉もない。

以下は、その全文である。

「慰安婦問題の本質、直視を 編集担当・杉浦信之」

 日韓関係はかつてないほど冷え込んでいます。混迷の色を濃くしている理由の一つが、慰安婦問題をめぐる両国の溝です。

 この問題は1990年代初めにクローズアップされ、元慰安婦が名乗り出たのをきっかけに議論や研究が進みました。戦争の時代に、軍の関与の下でアジア各地に慰安所が作られ、女性の尊厳と名誉が深く傷つけられた実態が次第に明らかになりました。

 それから20年余、日本軍の関与を認めて謝罪した「河野談話」の見直しなどの動きが韓国内の反発を招いています。韓国側も、日本政府がこれまで示してきた反省やおわびの気持ちを受け入れず、かたくなな態度を崩そうとしません。

 慰安婦問題が政治問題化する中で、安倍政権は河野談話の作成過程を検証し、報告書を6月に発表しました。一部の論壇やネット上には、「慰安婦問題は朝日新聞の捏造(ねつぞう)だ」といういわれなき批判が起きています。しかも、元慰安婦の記事を書いた元朝日新聞記者が名指しで中傷される事態になっています。読者の皆様からは「本当か」「なぜ反論しない」と問い合わせが寄せられるようになりました。

 私たちは慰安婦問題の報道を振り返り、今日と明日の紙面で特集します。読者への説明責任を果たすことが、未来に向けた新たな議論を始める一歩となると考えるからです。97年3月にも慰安婦問題の特集をしましたが、その後の研究の成果も踏まえて論点を整理しました。

    *

 慰安婦問題に光が当たり始めた90年代初め、研究は進んでいませんでした。私たちは元慰安婦の証言や少ない資料をもとに記事を書き続けました。そうして報じた記事の一部に、事実関係の誤りがあったことがわかりました。問題の全体像がわからない段階で起きた誤りですが、裏付け取材が不十分だった点は反省します。似たような誤りは当時、国内の他のメディアや韓国メディアの記事にもありました。

 こうした一部の不正確な報道が、慰安婦問題の理解を混乱させている、との指摘もあります。しかし、そのことを理由とした「慰安婦問題は捏造」という主張や「元慰安婦に謝る理由はない」といった議論には決して同意できません。

 被害者を「売春婦」などとおとしめることで自国の名誉を守ろうとする一部の論調が、日韓両国のナショナリズムを刺激し、問題をこじらせる原因を作っているからです。見たくない過去から目を背け、感情的対立をあおる内向きの言論が広がっていることを危惧します。

 戦時中、日本軍兵士らの性の相手を強いられた女性がいた事実を消すことはできません。慰安婦として自由を奪われ、女性としての尊厳を踏みにじられたことが問題の本質なのです。

 90年代、ボスニア紛争での民兵による強姦(ごうかん)事件に国際社会の注目が集まりました。戦時下での女性に対する性暴力をどう考えるかということは、今では国際的に女性の人権問題という文脈でとらえられています。慰安婦問題はこうした今日的なテーマにもつながるのです。

    *

 「過去の歴史を直視し、正しくこれを後世に伝えるとともに、いわれなき暴力など女性の名誉と尊厳に関わる諸問題にも積極的に取り組んでいかなければならないと考えております」

 官民一体で作られた「アジア女性基金」が元慰安婦に償い金を渡す際、歴代首相はこんな一節も記した手紙を添えました。

 歴史認識をめぐる対立を超え、和解へ向けて歩を進めようとする政治の意思を感じます。

 来年は戦後70年、日韓国交正常化50年の節目を迎えますが、東アジアの安全保障環境は不安定さを増しています。隣国と未来志向の安定した関係を築くには慰安婦問題は避けて通れない課題の一つです。私たちはこれからも変わらない姿勢でこの問題を報じ続けていきます。

 ◇今日の特集(16・17面)では、慰安婦問題とは何かを解説し、90年代の報道への読者の疑問に答えます。明日は、この問題で揺れる日韓関係の四半世紀を振り返るとともに、慰安婦問題をどう考えるかを専門家に語ってもらいます。」


この文章に納得がいかない私は、考えたあげく、前述の通り、『憲法便り#637』に、
wamの要請文『朝日新聞「慰安婦」報道の検証をめぐる一連の報道に抗議し訴えます』をそのまま掲載した。

これは、要請文の中に書かれている、
「みなさま、様ざまな方法でこの要請文を広くご周知ただければ幸いです。」
という呼びかけに応じたものであり、
要請文そのものを際立たせるため、コメントは付さなかった。

*********************************************
以下は、【再録】です。

憲法便り#637 wamの要請文:朝日新聞「慰安婦」報道の検証をめぐる一連の報道に抗議し訴えます

8月14日
アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)が発表した「朝日新聞「慰安婦」報道の検証をめぐる一連の報道に抗議し訴えます」という【要請文】の全文をそのまま紹介します。

2014/08/10)
【要請文】朝日新聞「慰安婦」報道の検証をめぐる一連の報道に抗議し訴えます

wamでは、8月5日・6日の朝日新聞による日本軍「慰安婦」問題についての特集と、それをめぐるメディアの一連の報道や政治家の発言などについて、要請文を作成しました。内閣総理大臣、関連する発言をした公人、メディア各社に本日送付します。

要請文の内容は以下の通りです。みなさま、様ざまな方法でこの要請文を広くご周知ただければ幸いです。

PDFは以下からダウンロードできます。

>> 要請文 朝日新聞「慰安婦」報道の検証をめぐる一連の報道に抗議し訴えます—

要請文
朝日新聞「慰安婦」報道の検証をめぐる一連の報道に抗議し訴えます

 朝日新聞は8月5日・6日の朝刊で、これまでの「慰安婦」報道の検証結果を発表しました。一部のメディアやネット上に、「『慰安婦』問題は朝日新聞の誤報・捏造によって作られたもの」という中傷や批判があることへの反論です。
 特集記事では、故吉田清治氏による強制連行の証言は虚偽として記事を取り消し、「慰安婦」と「女子挺身隊」を混同した誤用を認め、取材記者による事実の歪曲を否定しました。「強制連行」に関しては、朝鮮半島や台湾に限れば「軍による強制連行を直接示す公的文書」は見つかっていないが、他の地域には証拠もあること、問題の本質は軍の慰安所で女性たちが自由を奪われ、意に反して「慰安婦」にされたという強制性にあることだとしています。
 これらの内容は、「いまさら…」と嘆息したくなるほど、日本軍「慰安婦」問題を少しでも知る者たちには常識となっていることばかりです。このような検証なら、もっと早くに行ってもよかったのに…と思いましたが、事実確認も検証も全く行わずに暴論と虚報を垂れ流している産経新聞などの一部メディアが跋扈している現状を考えれば、朝日新聞の姿勢と自己批判は真っ当で、意義あるものと言えるでしょう。ただ、朝日新聞が相変わらず「女性のためのアジア平和国民基金」を評価していることには、失望を禁じえません。「国民基金」による負の影響をもっと学ぶべきです。そして、「慰安婦」被害を朝鮮半島に極小化し、問題を矮小化しようとしてきた日本政府の“下心”にも迫ってほしいと願わずにはいられません。

 ところがこのような朝日新聞の検証記事を受けて、一部のメディアや政治家たちが、これを政治利用しようと動き出しました。彼らは朝日新聞の報道が全部間違いであり、「慰安婦」被害という戦争犯罪に当たる歴史的事実までなかったような言い方をしています。朝日新聞の報道が日韓関係を悪化させ、国際緊張を招いたと言わんばかりです。
 自民党の石破茂幹事長は国会での検証まで言い出しました。これはまさに報道の自由への国家介入にあたります。橋下徹大阪市長は「産経が頑張って、朝日が白旗あげた」と大はしゃぎで、「国家をあげて強制連行をやった事実がなかったことがほぼ確定した」などと述べました。彼らは白を黒と言いくるめるつもりなのです。恥ずかしげもなく、何と犯罪的なことをしようとするのでしょう!日本国内では言いたい放題の彼らの滅茶苦茶な暴論は国際社会では全く相手にされず、ただ危険視され蔑まれるだけだということに、まだ気がついていないようです。
 彼らは、10代から20代の頃に慰安所に監禁され、毎日数人から数十人もの日本兵に強かんされ続けた女性たちの残虐な被害と、半世紀を経て勇気を持って名乗り出、日本政府に対して裁判を起こし、謝罪と賠償を求めて立ち上がった彼女たちの存在を一顧だにしないのです。
 被害女性の国籍は10ヶ国以上に上ります。開館から9年が経つアクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)では、1年ごとに各国・各地の被害を伝える特別展を開いてきました。展示の中心は、被害女性たちひとりひとりの被害と人生を伝える個人パネルです。これらの個人パネルを読んでいくと、あまりにも深い傷跡とそれをも乗り越えた女性たちの勇気と決断に心打たれると同時に、戦争が終わってから69年、被害女性が名乗り出てから20年以上も経つというのに、被害者の訴えに耳を傾けないできてしまった日本政府の非情さと犯罪性を痛感せざるをえなくなります。

 私たちは日本政府に訴えます。今、求められているのは「河野談話の作成過程の検証」ではなく、日本軍「慰安婦」制度についての第3次政府調査です。第2次調査以降、慰安所の設置や運営、「慰安婦」の移送などについて、研究者や市民によって膨大な数の公文書や証拠文書が発掘されています。これらの検証と、聞き取り調査が進められてきたアジア各国の被害者の証言と目撃者や元兵士の証言を収集し、「慰安婦」制度の実態について更なる真相究明を行うべきです。高齢となった被害女性への聞き取りは、今が最後の機会になるでしょう。
 この7月にジュネーブで開かれた国連の自由権規約委員会は、「慰安婦」問題(「慰安婦」に対する性奴隷慣行)について日本政府に対し、以下のような所見を出しました。

14. 委員会は、締約国が、慰安所のこれらの女性たちの「募集、移送及び管理」は、軍又は軍のために行動した者たちにより、脅迫や強圧によって総じて本人たちの意に反して行われた事例が数多くあったとしているにもかかわらず、「慰安婦」は戦時中日本軍によって「強制的に連行」されたのではなかったとする締約国の矛盾する立場を懸念する。委員会は、被害者の意思に反して行われたそうした行為はいかなるものであれ、締約国の直接的な法的責任をともなう人権侵害とみなすに十分であると考える。委員会は、公人によるものおよび締約国の曖昧な態度によって助長されたものを含め、元「慰安婦」の社会的評価に対する攻撃によって、彼女たちが再度被害を受けることについても懸念する。委員会はさらに、被害者によって日本の裁判所に提起されたすべての損害賠償請求が棄却され、また、加害者に対する刑事捜査及び訴追を求めるすべての告訴告発が時効を理由に拒絶されたとの情報を考慮に入れる。委員会は、この状況は被害者の人権が今も引き続き侵害されていることを反映するとともに、過去の人権侵害の被害者としての彼女たちに入手可能な効果的な救済が欠如していることを反映していると考える(2 条、7 条、及び8 条)。

 国際社会が問題視しているのは暴力的な連行の有無ではなく、「被害者の意思に反して行われた」行為なのです。上の文章に続く、日本政府への6項目の勧告(「慰安婦」被害の訴えについての捜査と加害者処罰、完全な被害回復、証拠の開示、教育、公的な謝罪表明と国家責任の認知、被害者の侮辱や事件の否定への非難)もたいへん厳しいものです。しかし、日本は規約の締約国として勧告を順守する努力義務があります。アジアの被害国だけでなく、世界中がこの戦争犯罪の実態を知るに至り、一向に問題解決に乗り出そうとしない日本政府、むしろ問題そのものを否定したがっている日本政府に厳しい目を向けています。新しい調査の結果をもとに、これら勧告にしっかりと対応してください。

 そして朝日新聞、産経新聞も含めた全てのメディア関係者に訴えます。各国・各地で「慰安婦」にされた女性たち(多くは故人になってしまいましたが)の証言や被害にあった時の状況を、今からでも遅くはないですから丹念に取材し、それをメディアを通して多くの日本人に伝える努力をしてください。また、自由権規約委員会をはじめとする国際社会の勧告に、日本政府がどう対応するのか、これもしっかり取材して、私たちに伝えてください。

 日本政府も日本人も日本のメディアも、「慰安婦」問題をタブー視して避けて通ろうとしたり、歴史修正主義者たちのでたらめな暴論を許したり、沈黙したりすることが許されなくなってきました。今こそ私たちは、未解決の戦争被害である日本軍「慰安婦」問題に、真正面から真摯に向き合わなければなりません。

2014年8月10日
アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)

by kenpou-dayori | 2015-06-19 17:40 | 朝日新聞ドキュメント


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