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岩田行雄の憲法便り・日刊憲法新聞

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2015年 07月 08日

憲法便り#1042 新宿区教育委員会に提出した、育鵬社、自由社の教科書を不採択の要請書全文の紹介①。

2015年7月8日(水)(憲法千話)

憲法便り#1042新宿区教育委員会に提出した、育鵬社、自由社の教科書を不採択の要請書全文の紹介①。

去る7月2日、午後4時40分に、新宿区教育委員会宛てに、要請書を提出してきました。
その「はじめに」の部分をすでに、2015年7月2日(木)付の『憲法便り#1036』に掲載しましたが、
全文が整いましたので、掲載します。

中学校教科書の採択は、4年に一回ですから、次回の採択決定は4年後ですから、
将来を見据えて、教科書問題に生かしていただきたく、ここに掲載します。

当初は、簡単な感想文程度を、要望として書いて提出するつもりでしたが、内容があまりにもひだかったため、本気で取り組みました。

取り掛かたのが遅く、さまざまな制約のもとでの作業でしたが、その中で最善を尽くしました。
不十分なことは否めませんが、今後、加筆することを考えています。

なお、全文が長く、ブログでは一回に掲載出来る文字数が限られているため、区切りの良いところで何回かに分けて掲載します。

                                 2015年7月2日
新宿区教育委員会 御中 
岩田行雄(いわた・ゆきお)

教科書採択に関する要請書
はじめに
 去る2015年6月24日に、「教科書・新宿ネットワーク」が、『教科書採択に関する要請書』を提出した際に、私も要請行動に加わりました。
しかしながら、同要請書でもふれているように、すべての問題点について述べることは出来ませんので、各分野の専門家が声をあげることが必要と考えます。
したがいまして、同要請書を踏まえながら、憲法研究者として、独自の立場から要請致します。

【要請書執筆に至る経緯】
育鵬社および自由社の教科書は偏狭な立場を優先し、歴史的事実に関して検証することなく多くの誤りを記述しているので、看過出来ません。
今年3月19日に左眼、3月31日に右眼の白内障の手術を受け、まだ痛みがあるため長時間の調査は出来ませんが、教育委員会の展示会場に足を運び、6月24日、6月29日、6月30日、7月1日に、合計16時間の閲覧・調査を致しました。
コピー、写真撮影も出来ない限られた条件下での作業でしたので、十分とは言えませんが、ここに、その調査結果に基き要請書を提出する次第です。長文ですが、ご検討下さい。

【要請の主旨】
要請内容をご参照のうえ、育鵬社および自由社の教科書を、新宿区教育委員会において採択されないことを強く要望致します。両社の教科書は、誤りも多く、教科書として不適格です。
調査は、憲法に焦点を当て、問題点を明らかにすることにしました。この要請書は公表し、提出後も精査し、ひろく世に問うことを予めお伝えします。

【育鵬社および自由社の教科書への評価】
育鵬社および自由社両社の教科書への評価を以下の二点に要約し、端的に指摘します。
第一に、両社の教科書は、「公民」を、戦前の「臣民」に戻すことを意図している。
第二に、両社の教科書は、戦前の政治に回帰する「安倍政権」機関誌の様相を呈している。
教科書は、その時どきの政権の道具になってはならないことは、歴史が示しています。
かつての、ヒトラーのナチス・ドイツの時代、ムッソリーニのファシスト政権の時代、そして日本の修身教科書により「軍国少年」を育て、戦場に送り出した時代を見れば、明らかです。
育鵬社および自由社が戦前の過ちを繰り返そうとしていますが、あってはならないことです。

新宿区は、下記の平和都市宣言を行い、宣言文を区庁舎正面に掲げています。
私は、この素晴らしい宣言文の精神に則って、採択されることを要望します。
「世界の恒久平和は、人類共通の願いである。
 私たちは、世界で唯一の核被爆国民として、自らも戦火を受けた都市の住民として、戦争の惨禍を人々に訴えるとともに、永遠の平和を築き、この緑の地球を、次の世代に引き継ぐ責務がある。
 国際平和年にあたり、私たちは、人類の生存に深刻な脅威をもたらす、すべての国の核兵器の廃絶を全世界に訴え、世界の恒久平和の実現を心から希求し、ここに新宿区が、平和都市であることを宣言する。                     昭和61年3月15日 新宿区」

【私の研究テーマと「テキスト」批判の論拠とする資料】
 標題に掲げた「テキスト」は原文のこと、批判とは、学問的に「批評し、判定する」することで、非難ではありません。
 私は現在、ある大学に提出するため『日本国憲法成立史の実証的再検討』と題する博士論文を執筆中ですが、そのため調査・研究した資料・および史料は、別紙のとおりです。(参考資料①)
 本格的な憲法研究に取り掛かったのは、2004年1月からですが、2004年6月に『検証・憲法第九条の誕生』(B5判、5,000冊)を自費出版したことを出発点として、すでに7タイトル、約4万5千冊を普及しています。出版社3社からの誘いを断って自費出版の道を選んだのは、誰にでも購入可能な廉価で刊行するためです(参考資料②)
 また、『検証・・・』の刊行をきっかけに、全国各地からの講演依頼が相次ぎ、北海道から沖縄、さらには韓国5都市での講演もあり、140回に及んでいます。
 私の本来の研究テーマは、実証的な「16-18世紀ロシアにおける書籍文化史」研究(参考資料③)で、日本国憲法成立史は、その研究手法の延長線上にあります。



by kenpou-dayori | 2015-07-08 21:45 | 教科書検定・採択問題


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