2016年 03月 25日
2016年3月25日(金)(憲法千話) 憲法便り#1616:横畠内閣法制局長官の「憲法上核兵器使用は禁止されていない」発言の撤回を求める! 横畠内閣法制局長官は、かねてから、核兵器の保有は、憲法上禁止されていないとの見解を述べてきたが、 さる3月18日、参議院予算委員会において、「憲法上、核兵器の使用も、禁止されていない」と答弁をした。 これは、大問題である。 平和とは、信念であり、思想であり、理想である。そして、歴史認識の問題である。 平和の根本問題に関する質問に対して、言葉の遊びのような、軽々しい条文解釈で応じるなどは、言語道断である。 不見識も甚だしい。 即刻、辞任すべきである。 憲法は、基本法であり、細部に渡っての禁止事項などは、いちいち書き込まれていない。 しかしながら、日本国憲法の審議の過程を丁寧にたどれば、原子爆弾についての言及もあり、 核兵器の保有、ましてや核兵器の使用などは、およそ前提としていない。 ここで、第90回帝国議会本会議の議事録から、衆議院憲法改正案委員会委員長、そして同小委員会の委員長として、政府の憲法改正案の修正論議をまとめた芦田均の衆議院への報告から、原子爆弾についてふれた部分を紹介しよう。 題して、『論より証拠』 以下は、拙著『検証・憲法第九条の誕生』第五版(2008)の138頁~141頁からの転載である。 「第八章 改正案委員会の修正案報告と各党の賛否 昭和二十一年八月二十四日(土曜日)に開かれた第九十回帝国議会衆議院本会議(午前十時五十分開議、午後六時三十四分散会)において、芦田均委員長から「憲法改正案委員会の論議の経過と結果の報告」として、修正案の提案が行われた。 この報告のうち、冒頭の挨拶および「第二章 戦争の放棄」に関する部分、及びまとめを紹介する。 芦田 均委員長 「委員会で最も熱心な論議が展開された九条問題」 芦田均委員長 本日いとも厳粛(げんしゅく)なる本会議の議場において、憲法改正案委員会の議事の経過並びに結果をご報告し得ることは、深く私の光栄とする所であります。 本委員会は六月二十九日より改正案の審議に入りまして、前後二十一回の会合を開きました。七月二十三日(第二十回委員会)質疑を終了して懇談会に入り、小委員会を開くこと十三回、案文の修正案を得て、八月二十一日(第二十一回委員会)これを委員会に報告し、委員会は多数を以ってこれを可決致しました。その間における質疑応答の概要並びに修正案文に付いて説明致します。 勅命(ちょくめい=天皇の命令)を奉じて政府より提案せられました憲法改正案は六百五十字に余る前文と、百ヶ条(原案は第百条まで)に上る規定とをそなえた画期的な大法典でありまして、その中に包含する新しき理想と、時代精神に生きんとする民主国家の構想とを以って、未曾有(みぞう)の敗戦の後を承けた我等の祖国を焼土の中から建て直し、国際場裡に名実ともに具(そな)うる独立国たらしめんとする企図を以って起案せられたものであります。これを現行憲法と比較して最も顕著に目につく点は、今回の改正案が明らかに二つの面を持つというということであります。 即ち一は、我が国の国家機構から一切の封建的残滓(ざんし=のこりかす)を取り除いて、真に民主的な国会制度、内閣制度、司法制度を確立せんとする現実的、構成法的の部門であります。 その二は、国内において基本的人権を尊重し、諸外国との間に平和的協力を成立させ、国際社会に伍して名誉ある地位を占めようとする意思表示であって、将来の国際的生活に対する理想主義的な分子を含む面であります。しかも改正憲法の前文において、我が国の主権が国民に存することを明白にしたことは、各種各様の波紋を与えまして、憲法改正に関する論議の中心となったことは諸君のご承知の通りであります。したがって、本委員会において多数の委員から発せられました質問は、この憲法改正案がわが国体を変革するものなりや否やという点でありました。(この後の「第一章天皇」に関する報告は略。) 「第二章 戦争の放棄」に付いて説明致します。改正案第二章において戦争の否認を声明したことは、我が国再建の門出において、我が国民が平和に対する熱望を大胆率直に表明したものでありまして、憲法改正のご詔勅は、この点に付いて、日本国民が正義の自覚に依り平和の生活を享有することを希求し、進んで戦争を放棄して、誼(よしみ)を萬邦に修むる決意である旨を、宣明せられております。 憲法草案は、戦争否認の具体的な裏付けとして、陸海軍その他の戦力の保持を許さず、国の交戦権は認めないと規定して居ります。もっとも、侵略戦争を否認する思想を憲法に法制化した前例は、絶無ではありませぬ。 例えば、一七九一年の「フランス」憲法、一八九一年の「ブラジル」憲法の如きであります。しかし、我が新憲法の如く、全面的に軍備を撤去し、すべての戦争を否認することを規定した憲法は、恐らく、世界においてこれを嚆矢(こうし=かぶらや、物事の最初)とするでありましょう(拍手)。 近代科学が原子爆弾を生んだ結果、将来万一にも大国の間に戦争が開かれた場合には、人類の受ける惨禍は、測り知るべからざるものがあることは、何人も一致するところでありましょう。我らが進んで戦争の否認を提唱するのは、ひとり過去の戦禍に依って戦争の忌むべきことを痛感したという理由ばかりではなく、世界を文明の壊滅から救くわんとする理想に発足することは、言うまでもありません。 委員会においては、この問題をめぐって最も熱心な論議が展開されました。委員会の関心の中心点は、第九条の規定に依り、我が国は自衛権をも放棄する結果になるかどうか、自衛権は放棄しないとしても、軍備を持たない日本国は、何か国際的保障でも取り付けなければ、自己防衛の方法を有しないではないかという問題、並びに我が国としては単に日本が戦争を否認するという一方的行為のみでなく、進んで世界に呼びかけて、永久平和の樹立に努力すべきであるとの点でありました。 政府の見解は、第九条の一項が自衛のための戦争を否認するものではないけれども、第二項に依ってその場合の交戦権も否定せられて居るというのであります。これに対し委員の一人は、国際連合憲章第五十一条には、明らかに自衛権を認めており、かつ日本が国際連合に加入する場合を想像するならば、国際連合憲章には、世界の平和を脅威する如き侵略の行われたる時には、安全保障理事会はその兵力を以って被侵略国を防衛する義務を負うのであるから、今後における我が国の防衛は、国際連合に参加することに依って、全うせられるのではないかとの質問がありました。政府はこれに対して、大体同見である旨の回答を与えました。 更に、第九条に依って我が国が戦争の否認を宣言しても、他国がこれに賛同しない限り、その実効は保障されないのではないかとの質問に対して、政府は次の如き所見を明らかに致しました。即ち、第九条の規定は、我が国が好戦国であるとの世界の疑惑を除く消極的な効果と、国際連合自身も理想として掲げているところの、戦争は国際平和団体に対する犯罪であるとの精神を、我が国が率先して実現するという積極的効果があり、現在の我が国は未だ十分な発言権を持って、この後の理想を主張し得る段階には達していないけれども、必ずや何時の日にか世界の支持を受けるであろうという答弁でありました。 委員会においては、更に一歩を進めて、単に我が国が戦争を否認するという一方的行為のみを以っては、地球表面より戦争を絶滅することが出来ない、今日成立して居る国際連合でさえも、その組織は戦勝国の平和維持に偏重した機構であって、いまなお、敵味方の観念に支配されて居る状況であるから、我が国としては、更に進んで、四海同胞の思想に依る普遍的国際連合の建設に邁進(まいしん)すべきであるとの意見が表示せられ、この点に関する政府の努力に付いて注意を喚起(かんき)したのでありました。 (中略、まとめの部分へ) 改正憲法の最大の特色は、大胆率直に戦争の放棄を宣言したことであります。これこそ数千万の人命を犠牲とした大戦争を体験して、万人の斉(ひと)しく翹望(ぎょうぼう=首を挙げて待ち望むこと)する所であり、世界平和への大道であります。我々は此の理想の旗を掲げて全世界に呼掛けんとするものであります(拍手)。そうして是こそ日本が再生する唯一の機会であって、斯かる機会を日本国民に与えられたことに対し、私は天地神明に感謝せんと欲するものであります(拍手)。併しながら憲法が如何に完全な内容と雄渾の文字を以って書き綴られたとしても、所詮それは文字たるに過ぎませぬ。我々国民が憲法の目指す方向を理解して、其の精神を体得するにあらずんば、日本の再生は成し遂げることは出来ないと思います(拍手)。斯かる信念の下に、本委員会はその附帯決議の中に次の如く述べて居ります。即ち「新しき世界の進運に適応する如く民衆の思想、感情を涵養し、前記の理想を達成するためには、国を挙げて絶大の努力をなさなければならぬ。吾等は政府が国民の総意を体し熱情と精力とを傾倒して、祖国再建と独立完成のために邁進せんことを希望するものである。」 此の決議の趣旨は、独り責任を政府にのみ帰せんとするものではありませぬ。新憲法の制定を契機として、我々国民一人残らず、新しき希望を懐いて勇往邁進するの決議を表明したものであります(拍手)。私は恐らく諸君も亦此の決意に御共鳴下さることを固く信じて疑いませぬ(拍手)。 以上を以って委員長の報告と致します(拍手)。」(付帯決議は、こちらへ) このような、先人たちの努力を、無にしてはならない! ■
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by kenpou-dayori
| 2016-03-25 10:55
| ごまかしの語法・ごまかしの手法
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