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岩田行雄の憲法便り・日刊憲法新聞

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2016年 05月 05日

憲法便り#1714:『吉野作造通信』を発行する会へのメッセージ

2016年5月5日(木)(憲法千話)

憲法便り#1714:『吉野作造通信』を発行する会へのメッセージ

1986年以来、仙台において、地道な研究活動を続けている、『吉野作造通信』を発行する会の代表(事務局)永澤汪恭さんから、2016年5月8日に開催する集会へのメッセージの依頼を受け、下記の手紙を送りました。

「メッセージ 講演会にご参加の皆様へ」
             岩田 行雄

「民本主義」100年 吉野作造をしのぶ会の成功おめでとうございます。
『吉野作造通信を発行する会』の活動を始めた当初、「なんでこの研究会へ吉野作造が? 民本主義が?」という視線を感じながらも、粘り強く続けられた吉野作造研究が、羅英均梨花女子大学名誉教授の言葉から、韓国へと国際的な広がりを持ち始めたことを知り、心からお喜び申し上げます。
梨花女子大学で思い出すことがあります。1996年6月、出版労連の一員として、「日韓出版労働者シンポジウム」に参加した時のことです。私は、高麗大学の図書館長、副館長、ロシア語・ロシア文学科主任教授により、梨花女子大学正門前にあるソウル随一の宮廷料理店に招待されたことがあります。それは、東京外国語大学学長の原卓也先生から、「兄弟分の工藤精一郎(関西大学教授・ロシア文学者)の蔵書を、君が貰っても、売っても、誰かに上げても、それは君に任せるので、彼の家(逗子)に行って見てほしい」との依頼を受け、そっくり高麗大学に寄贈したことに因ります。
ドストエフスキー、ツルゲーネフ、チェーホフをはじめとするロシア・ソヴィエト作家の全集や著作集、各種ロシア語辞典・百科事典を中心に約1,500冊のコレクション、およそ500万円相当です。ロシア語の本を持っているだけで、最高刑死刑という「防共法」が生きている韓国では、とても喜ばれました。吉野作造の仕事に比すべくもありませんが、韓国におけるロシア研究と日韓友好に、多少なりとも寄与出来たことを、嬉しく思っています。

 私が吉野作造を意識するようになったのは、2009年4月のことです。外務省が30年経過で1976年に第一回、第二回公開した外交記録に、約90点の憲法関係資料が含まれていること、その中に吉野作造を意識させる「民本主義」という言葉がある、外務省の極秘文書『憲法改正大綱案』(1945・10・11)に気付いた時点からです。そして、これらの資料をもとに、『外務省と憲法第九条』(2009年)の自費出版の準備を進めましたが、この最終段階で、国立国会図書館において、永澤さんとの出会いがありました。
当時、私の憲法研究は大正デモクラシー、さらには明治時代の自由民権運動への興味の広がりという転換点にさしかかっており、この二つの出会いが、新たな地平に臨むきっかけとなりました。
 この新たな地平における研究で、今年2月にお招きいただいた仙台での講演および懇談会以後に、ひとつの「発見」がありました。
 町田市立国際版画美術館が3月12日から開催した『明治の浮世絵師 清親(きよちか)-光線画の向こうに』の内覧会(3月11日)に、招待を受けた時のこと。311点に及ぶ展示作品の中に、「憲法組立の図」という作品がありました。これは、明治22年2月17日に金港堂が発行した雑誌『都の花』第二巻第九号附録に掲載されていたもの。附録といっても合冊されています。「憲法組立の図」は、当時健筆をふるっていた山田美妙斎が明治憲法発布を祝って書いた「國の花」の挿絵として二ページ見開きで掲載されています。町田市立国際版画美術館の展示品は、個人蔵書を借用したものです。
帰宅後、インターネットで探して見ると、幸いにして1点だけ在庫が見つかりました。それもなんと、私が以前から知っている早稲田の国文学関係の古書店の在庫です。さっそく電話で在庫を確認し、これを買い求めました。
 そして4月10日、同美術館に村田哲朗館長を訪ね寄贈を申し入れました。日頃からの感謝と、「私蔵は、死蔵に通ず」との信念に基づく行動です。

ところで、私はキリスト教徒ではありませんが、2006年8月13日に長津田キリスト教会(横浜市)で講演を行ったことがあります。その後も三浦修道院、須賀川教会、郡山教会で憲法講演を行っていますが、長津田キリスト教会での体験をもとに書いた詩がありますので紹介します。

『平和への力』 ― 長津田キリスト教会にて ―  2006年8月13日
私の話を聞いている
 一〇〇をこえる人々、
私を見つめている
 二〇〇をこえる瞳、
私に力をあたえる
 真剣なまなざし、
十字架を背にして
 私は話し続けている、
平和への願いを込めて
 憲法九条を語っている、
無神論者のわたしが
 神の力に支えられている。

メッセージの結びとして、永澤さんと出会った、国立国会図書館本館二階カウンター上に刻まれている言葉を贈ります。「真理がわれらを自由にする」


『吉野作造通信』創刊号(1986年1月30日発行)
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by kenpou-dayori | 2016-05-05 21:46 | 今日の話題


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