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岩田行雄の憲法便り・日刊憲法新聞

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2018年 07月 30日

憲法便り#2660:憲法便り#2659:新宿区のデモ規制の8月1日実施を撤回し、再検討を求める申し入れ書を提出!の続きです。

2018年7月30日(月)(憲法千話)

憲法便り#2660:憲法便り#2659:新宿区のデモ規制の8月1日実施を撤回し、再検討を求める申し入れ書を提出!の続きです。


【調査のまとめ】

すでに述べたことと重複する部分があるが、まとめを箇条書きで述べておきたい。

●調査は、面談を重視し、私個人の責任で、すべてひとりで行った。

●面談を重視する理由は、私の表情を伝え、相手の表情を読み取ることにある。

  一例を挙げておこう。713日に田中部長と面談していた途中で、渡辺係長が部長室から出て行き、ファイルを持ってすぐに戻ってきた。それまではにこやかに話していた田中部長の表情が変わった。田中部長は、渡辺係長の方を向いて、(それは見せるなという表情で)首を横に鋭く振った。明らかに、上司としての厳しい表情である。渡辺係長がそのことに気が付いていないため、田中部長は、もう一度、渡辺係長の様を向いて、首を横に鋭く振った。

  私は、「いまのは、どういう意味ですか?」と質問した。

  しかし、田中部長は、何も答えなかった。私は、それ以上、追及はしなかった。

●調査の際は、その場での論争はせず、相手の言い分を聞くことに努めた。

●ただし、相手を尊重し、話をよく聞くことと、話の内容に同意することとは別問題である。この考え方については、面談したすべての方に伝えた。

〔第1点:調査に時間がかかりすぎる区政の仕組み〕

●私が面談した大部分の職員は、善良である。事務方の一員として責任を果たそうと努力している。(広報部、区長室の一部の職員は、態度が怠慢、言葉づかいも横柄だったが)

●組織の一員として、真面目に責任を果たしていることと、本当に区民のための行政を担っていることは違う。組織としての「力学」が働くからである。

●今回の調査にあたっての、「要望書」に関する職員の対応は、必ずしも納得いくものではなかった。資料隠し、真相隠しの印象は、最後までぬぐえなかった。

●職員は、誰にでも判り易い区政の在り方を実現のために努力すべきである。

●区の中で、情報が共有されていない。

●「由(よ)らしむべし 知らしむべからず」という、言葉を実感した。

〔第2点:議会軽視は歴然〕

627日の環境建設委員会を傍聴していないが、一方的な決定の通知である。

●議会軽視は、歴然としている。717日の5会派15人の区議有志による、区長への「『デモの出発地として使用できる公園の基準』の見直しに関する申し入れ」は、当然のことである。

●議会事務局に問い合わせとところ、627日の環境建設委員会の際には、報道関係を含めて、74名の傍聴者があった。

●この日の部長答弁に関して、複数の新聞で誤った報道がなされた。

●これは、誤解を生む発言内容、誤解を生む状況を作った区側に責任がある。

●誤報ならば、直ちに訂正を求めるべきである。

●それが、社会に対する誠意というものである。そのままにしておくのは不誠実だ。

〔第3点:つきまとう、ブラックな印象〕

●例え黒塗り部分があったにせよ、「委員会」で「要望書」を公表すべきであった。

●公表しなかったことについて、「他意は無い」と言うが、「作為」はあった。

●「要望書」を公表しなかったこと、相談した弁護士について公表しなかったことで、ブラックな印象がつきまとう。

●このような区政を続けるべきではない。

●今回の決定を、ひと言で表現すれば、「拙速」であり、その極みである。

●ごく一部の人間だけで、日本国憲法に抵触するような重大な決定をしてはならない。

〔第4点:ヘイトスピーチ対策〕

●ヘイトスピーチとその他のデモを同列において、デモの制限をすべきではない。

●区長は、「公園使用基準の見直しの目的はヘイトスピーチ対策」というが、これまで具体的な対策は、何ひとつ行っていない。

●新宿区が「ヘイトスピーチ対策」を、本当にやる気があるのならば、川崎市や大阪市のヘイトスピーチ対策は勿論のこと、東京弁護士会が201868日付で発表した35カ条から成る「人種差別撤廃モデル条例案」(添付資料2-1、22)を参考に、抜本的な対策を検討すべきである。

●東京弁護士会の提案は、今回の新宿区の問題が公になる以前から、時間をかけて検討されてきたものであり、偶然時期が重なったものである。

〔第5点:対立を生む強権的区政ではなく、両立、共生の区政を〕

●いまや、日本は「災害列島」とも言える。震災や大災害の際に、地方自治組織の果たす役割は、重要である。

●その時に備えるためにも、区民の間に深い亀裂を残すような行政をすべきではない。

●社会は、思想・信条の違いを超えて、共生する場所である。

●新宿区内には、多数の外国人が暮らしており、共生が重要な課題となっている

●重要な問題は、常に、丁寧に合意形成をはかるべきである。

〔第6点:歴史的な視点から〕

  最後に、歴史的な視点からの問題指摘をしておきたい。

  これは、区長宛ての「仕し入れ書」であるから、以下の添付資料に関する詳細な言及はしないが、インターネット上で公表する際には加筆することを前提としている。

●東京弁護士会の会長声明(添付資料3)の重要性。

  東京弁護士会は、2018年(平成30年)723日付で、安井規雄会長名の「新宿区によるデモ出発点として使用できる公園の基準見直しに関する会長声明」(6項目)を発表した。

この声明は、単なる問題点指摘、批判に止まらず、人種差別撤廃条約にふれた国際的・歴史的な視点を含み、自らまとめた「人種差別撤廃モデル条例案」(添付資料22)にもふれた具体的提案を伴う総合的文書であり、説得力がある。

6 よって、当会は、新宿区に対し、行政の内部基準の変更によって一律に公園のデモ出発地使用を制限しようとする上記の規制を撤回し、ヘイトデモ等の差別的目的による使用の規制については、当会モデル条例案も参考にして、デモの自由を尊重しつつ、議会の条例制定によることとするよう根本的な見直しを求める。」(同声明 第6項の全文)

 

●人種差別撤廃条約(添付資料4)・・・外務省ホームページを参考にした。

この条約は1965年の第20回国連総会において採択され、1969年に発効。日本が加盟したのは1995年。人種差別撤廃の問題は、この条約が締結される以前から、長く論議が行われている。  

 

●ドイツ連邦共和国基本法(194958日) 9条第2項(添付資料5

  同基本法第9条(結社の自由)は第2項で次の様に定めている。

  「(2)結社のうちで、その目的もしくはその活動が刑事法律に違反するもの、または、憲法的秩序もしくは諸国民のあいだの協調の思想に反するものは、禁止される。」(高田 敏・初宿正典編訳『ドイツ憲法集〔第3版〕』を引用。

 

●憲法懇談会の日本国憲法草案(昭和21年(1946年)35日発表)(添付資料6

(典拠:国立国会図書館電子展示会『日本国憲法の誕生』資料と解説第2章2-11より)

  憲法懇談会は、尾崎行雄、岩波茂雄、渡辺幾治郎、石田秀夫、稲田正次、海野晋吉で構成された、民間の研究会。

  憲法懇談会の憲法草案では、〔特色〕の第9項、〔第二章 国民の権利義務〕第13条、第15条、第16条で、以下の提案をしている。(カタカナを平仮名に書き換え)

  (特色)

  九.個人の権利自由の保障を完全ならしむる為、各条の文言に留意したり。特に言論、集会及び結社の自由は、軍国主義勢力の抬頭を防止する為にする場合を除き、政治活動の面に於ては、法律を以てしても制限し得べからざるものとなしたり。

  (条文)

13条 国民はその信教の自由を侵さるることなし。

  第15条 国民はその平穏なる集会及び結社の自由を侵さるることなし。

  第16条 軍国主義及び過激国家主義の勢力の回復を防止するがためには、憲法第13条乃至(ないし)第15条の規定に拘らず、法律に依り国民の自由を制限することを得。

 ●日本国憲法草案第19条(21条)についての、法制局の逐条説明(添付資料7

 (典拠:国立国会図書館電子展示会『日本国憲法の誕生』資料と解説第4章4-4より)

 日本国憲法の制定過程で、法制局(内閣法制局の前身)が作成した、『憲法改正草案に関する想定問答』および『憲法改正草案逐条説明』がある。

 その中の『憲法改正草案逐条説明(第一輯の二)』(昭和215月)に、思想の自由、集会、結社、言論の自由、表現の自由に関する説明がある。手書きの長い文章なので、ここでは紹介のみに止める。

新宿区今回の決定が、予め仕組まれた意図的なものでなければ、ここに紹介した史料は、再考するきっかけとなるものと思う。

ここまで述べてきた理由により、620日に一部の人間だけで決定した、公園利用制限の81日実施の中止を求める。

以上



by kenpou-dayori | 2018-07-30 20:00 | 新宿区のデモ規制強化について


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