2019年10月28日(月)(憲法千話)
憲法便り#2832:「放送を語る会」の2019年10月2日付声明『「かんぽ不正問題」報道に関し、会長に「厳重処分」を行ったNHK経営委員会に抗議し、石原委員長の辞任を求めます」!
最近、「日本の社会は壊れている」という言葉を、聞いたり、見たりすることが多くなった。
マスコミが、正しく機能していれば、そんなことにはならない。
声明が出されてから、一ヶ月近くを経過しているが、「放送を語る会」の一員として、この声明文の重要性に鑑み、『憲法便り』に掲載することとした。
文字が薄くて読みずらいので、新たに入力することにしました。
「ご承知のように、9月26日の毎日新聞は、昨年4月24日の「クローズアップ現代+」「かんぽ不正問題」報道に関連して、経営委員会が昨年10月、会長に「厳重注意」したと報じました。
記事によれば、当該「クローズアップ現代+」に対し、日本郵政グループから激しい抗議があり、その過程で、NHK幹部が郵政側に「会長は番組制作に関与しない」と説明したとされています。これに郵政側が「ガバナンスが利いていない」などどとしてNHK側に検証を求め、それを受けて経営委員会が、会長に厳重注意したという経過です。
経営委員会は会長に郵政側に謝罪するよう求め、郵政側には会長を注意したことを伝えました。この処置は、会長のNHK内のガバナンス(統治)の強化を名目に行われたとも伝えられています。
当会は、この一連の経過に重大な問題があると考え、このような処分を行った経営委員会に強く抗議するとともに、責任者である石原進委員長の辞任を求めるものです。
その理由は次の通りです。
第一に、経営委員会が、番組制作に関わって会長に厳重注意したという事実は、NHKの経営、番組に関心を」もつ視聴者にとって重大な出来事であり、本来、経営情報として明らかにされるべきでした。このことが経営委員会の議事録にも記載されず、公表されなかったことは、NHKの視聴者市民に対する情報公開、責任説明の義務に反するものでした。
第二に、郵政側への対応は、あまりに過大に過ぎ、不適切です。
幹部の「会長は関与しない」という説明は、番組制作の実態からみればむしろ正確です。重大な誤りとまでは言えません。番組・ニュースも含め、NHKの経営全般について、会長が最終的な責任者であるとするのは、組織としてはありうる説明ですが、これが欠けていたとすれば、説明を補足するよう指示すれば、済むような事案でした。
にもかかわらず、会長に注意処分を行い、先方に謝罪までさせたのは、行き過ぎた行為と言わざるをえません。
第三に、経営委員会の対応は、「かんぽ不正問題」の取材過程に対する事実上の介入となった疑いがあります。これが最も重大は問題です。
昨年の「クローズアップ現代+」の告発は、その後正しかったことが証明され、放送当時の郵政側の抗議は理不尽なものでした。
郵政側は、番組内容への抗議とあわせて、会長の番組制作へのガバナンスの確認を求めました。これは事実上、会長に「クローズアップ現代+」へ監督を強める措置を要求するものでした。
経営委員会の会長への「注意」は、この郵政側の要求と同じ性格の行為で、郵政側の抗議に同調し、認めることになる対応でした。
経営委員会は、番組内容に直接介入したわけではありませんが、郵政側の激しい抗議を受けて、会長に「番組への統治の強化」を求めた対応は、当然ながら「かんぽ不正問題」取材にブレーキをかける恐れのある行為でした。
放送法は、第32条で、経営委員会に、「放送番組は何人からも規律されることがない」とする放送法第3条に抵触する行為を禁じています。昨年のこの経営委員会の行為は、事実上放送法に違反する疑いがあると言えます。
そもそも、会長に番組制作へのガバナンス(統治)の強化を求めるのは現実的ではありません。ぼう大な番組について、会長が「統治」することは不可能です。放送では、何より事実を取材する現場が最大限に尊重されなければなりません。
昨年の郵政側に対する経営委員会の対応は、「クローズアップ現代+」の「かんぽ不正」の取材現場を尊重する精神を欠くものという点でも、非難されるべきと考えます。
以上を総合的に判断し、経営委員会に抗議し、委員長の辞任を求めることを重ねて要求するものです。」
放送を語る会