自民敵基地攻撃能力狙う
2020年8月3日(月)(憲法千話)
憲法便り#3514:自民「敵基地攻撃能力」狙う;「イージス」破綻逆手に軍拡加速!
2020年8月1日(土)付『しんぶん赤旗』日刊紙第2面をいんようしました。
【記事本文】
自民党は31日、国防部会と安全保障調査会で、同党の「ミサイル防衛検討チーム」が策定した提言案を了承しました。週明けにも安倍晋三首相に提出します。違憲の「敵基地攻撃能力」保有や、米国と一体になった軍拡を推進するもので、政府が9月みの決定する新たな「ミサイル防衛」戦略に反映させる狙いです。
「ミサイル防衛」(中見出し)
陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」(陸上イージス)の配備断念により、「ミサイル防衛」網の破綻ぶりが顕著になりました。それにもかかわらず、提言案は弾道ミサイルに加え、巡航ミサイルや航空機攻撃なども一体的に対応する「ミサイル防空」(IMAD)能力の確保を強調。さらなる軍拡を図る狙いです。
また、陸上イージスの「代替機能の確保」を強調。陸上イージスで使用する予定だったSPY7レーダーや迎撃ミサイルなどの米国からの購入を中止し、“有効活用”するため、①イージス艦の増勢②レーダーの地上設置―などを検討します。だた、イージス艦の増勢は費用や人員確保の面で非現実的です。レーダーの地上設置も、再び周辺住民の反発を招くことは目に見えています。弾道ミサイルなどの探知・追尾のため、「低軌道コンステレーション」(小型人工衛星網)の活用も盛り込みました。政府が6月30日に閣議決定した新たな宇宙基本計画では、コンステレーションについて、「米国との連携を踏まえながら検討」するとしており、宇宙軍拡を加速する狙いです。
表現変えて提言(中見出し)
提言案の最大の焦点は、歴代政権が違憲としてきた「敵基地攻撃能力」の検討です。自民党は2017年に提出した提言で、「敵基地攻撃能力」の保有を求めました。結果としての文言は採用されませんでしたが、18年12月に決定された防衛大綱・中期防衛力整備計画では、長距離巡航ミサイル(スタンドオフミサイル)の導入など、実質的な敵基地攻撃能力の保有に踏み出しました。
今回も憲法の“ハードル”は高く、文言として「敵基地攻撃能力」を明記することは断念。「相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力の保有」という表現になりました。
ただ、これに該当する能力を持とうと思えば、偵察衛星や無人機、電子戦機に加え、長距離巡航ミサイルや爆撃機など、国際法違反の先制攻撃につながる兵器体系を備える必要があります。表現をどう変えようと、違憲の敵基地攻撃能力そのものであり、従来の「専守防衛」の考え方を大きく踏み越えることに変わりません。(竹下岳)