2020年8月9日(日)(憲法千話)
憲法便り#3536:「フランスのパリテ(男女同数)と比べての日本」;9条漣共同代表・植野妙実子さんの小論を紹介します!
世界へ 未来へ 9条漣ニュース 2020年2月20日付No.302号を引用しました。
フランスのパリテ男女同数と比べての日本植野妙実子さんの小論を紹介します!
日本国憲法14条1項は法の下の平等を定め、性別による差別の禁止も明示している。平等原則は13条の個人の尊重を受けて定められており、民主主義の基礎ともなるものである。日本では、平等原則の解釈として、合理的差別(異なるものは異なる程度に応じて区別的取り扱いすること)を認めるとされている。しかし、この異なるという基準をどこにおくかが問題となり、男女差別は、男と女は異なるから異なる取り扱いをしても当然、という形で行われてきた。1979年に国連で女性差別撤廃条約が採択され、日本においても、国際法の男女両系血統主義への改正や男女雇用機会均等法の成立がなされた。今日では、この条約の考え方が浸透し、男女の差異は「妊娠・出産のみ」、家事・育児・介護などの家庭の事柄も男女問わず担うべき、と考えられている。また、この条約は、男は外で働き、女は家で家事・育児をするという役割分担意識の払拭がなければ男女平等は達成できないとしている。
他方、フランスでは、家父長的なナポレオン法典の影響で長い間男女平等は進んでいなかった。女性の社会進出は、皮肉なことに第一次世界大戦中に男性の労働力不足を補う形で始まった。女性の選挙権・被選挙権が認められたのは、日本と同じ第二次世界大戦直後である。1946年第四共和国憲法の前文は、人権規定として、1789年人権宣言(多くは自由権的規定)と、共和国の諸法律により承認された基本原理、そしてこの前文自体が定めた人権規定(多くは社会権的規定)を定めていた。男女平等に関して明示しているのはこの第四共和制憲法前文3項である。
1982年、地方選挙制度に、異なる性が75%を超えてはならないとする「性別クオータ制」を導入しようとしたところ、憲法院(憲法裁判所)が違憲判決を出した。男と女を区別することが人権の普遍性に反するものであるからという。この違憲判決をのりこえるために「パリテ(男女同数)」という観念が憲法改正により導入された。今日ではこの考えに沿って、男女平等政策が進められている。内閣も2012年オランド大統領以降、男女同数で構成されている。名簿式の比例制選挙は男女同数でなければ受け付けられず、小選挙区制の選挙に関しては、政党が男女同数の候補者を立てることが義務付けられ、違反すれば政党助成金が削減される。これにより女性議員は大幅に増えた。日本でも、政治分野における男女平等参画推進法が制定されたが、女性候補者比率の目標を設け、自主的に取り組むよう努めることを促しているにすぎない。実際、施行後初めて行われた参議院選挙での女性候補者の割合は、自民党14・6%、公明党8・3%と何の効果を示すものでもなかった。
国会は国の方針を定めるところ。そこに女性が少ないということは女性のための政策が蔑ろ(ないがしろ)にされることに繋がる。もちろん女性が全て女性の味方ということではないが、日本の政治にも男女のバランス、すなわち男性と同じ数程の女性の進出が必要といえよう。(中央大学名誉教授)
【岩田からの一言:今まで知らなかったことが多くあり、大変勉強になりました。ただし、書かれていることに若干の疑問を持っています】