2020年9月11日(金)(憲法千話)
憲法便り#3613:安保改定60年;米軍の事件・事故21万件 日本人1097人死亡;日本政府が数百億円の賠償金を負担という屈辱的状況!!
2020年9月8日(火)付『しんぶん赤旗』第1面および第3面を引用しました。
第1面。
【見出し】
「シリーズ安保改定60年 第3部⑨」
「日本政府が倍賞負担 数百億円」
「米軍の事件・事故21万件 日本人1097人死亡」
【記事】
旧日米安保条約が発効した1952年度から2019年度までに、在日米軍の兵士や軍属らによる事件・事故の件数が21万2247件に達し、日本人1097人が死亡したことが、防衛省が日本共産党の赤嶺政賢衆院議員に提出した資料から明らかになりました。
しかも、日本政府は支払い義務のない賠償金を含め数百億円規模で負担をしています。「日本を守る抑止力」といいながら、日本人の命や安全が米軍に脅かされ、その賠償金まで税金で肩代わりされています。
爆音訴訟は拒否(中見出し)
米軍関係者による「公務中」の事件・事故に伴う損害賠償は、日米地位協定18条に基づき、米側が75%、25%を負担します。防衛省によれば、「公務中」の事件・事故に対して日本側が支払った賠償額は累計約95億3205万円。ただ、米軍機の爆音訴訟で確定した賠償金について米側は日米地位協定に基いて基地の自由使用が認められているとして支払いを拒否。防衛省はこれまで、米軍・自衛隊分を合わせて賠償金を725億円支払っています。比率は明らかにしていませんが、最高裁判決では米軍分で約351億円が確定しています。
支払い義務なし(中見出し)
一方、「公務外」の場合はどうか。防衛省の資料によれば、事件・事故の76%は「公務外」の発生。近年では、元海兵隊員の軍属が沖縄県うるま市の20歳の女性を暴行・殺害(2016年)、同県北谷町で米海兵隊所属の海軍兵が女性を殺害した事件(2019年)など凶悪犯罪が起きています。
しかし、「公務外」の場合は被害者が日本政府を通じ、米政府に「慰謝料」を請求。米側に支払い義務はなく、応じる場合でも支払額は米側次第です。多くは泣き寝入りで、訴訟を提起した場合でも、判決で確定した賠償額を下回る金額しか支払われません。
こうした被害者に対する救済制度として、1996年、日本政府が判決が区との差額を補てんする「SACO見舞金」が設立されましたが、手続きの煩雑さなどの問題点もあり、支払いは2019年度までに5億8977万円にとどまっています。
米軍事権・事故の被害者救済に取り組んでいる沖縄弁護士会の新垣勉弁護士は、日本政府による十分な被害補償制度の確立を訴えた上で、「日本側による賠償金などの負担は、ある意味で『思いやり負担』の性格を有している。主権対等な国家間の駐留であれば、米軍、米兵等の不法行為の賠償責任は、最終的に米国に負担させるべきだ」と指摘します。(3面につづく)
第3面。
《1面の続き》
“泣き寝入り”圧倒的(3面の主見出し)
1994年の年末の夜、その事故が沖縄市内で起きました。赴任したばかりの米兵が右側の車道を走り村上有慶さんの長男が運転する自動車と正面衝突。助手席にいた知人女性が重傷を負いました。しかし、米兵が任意保険に未加入だったため、補償のめどがたちませんでした。 米兵は一度は謝りに来た後、音信不通に。村上さんは、「公務外」の事故に対する補償を規定した地位協定18条6項に基づき、那覇防衛施設局(当時)に「慰謝料」を請求したものの、1年以上も放置されたあげく、提示は請求の92万円に対しわずか30万円でした。やむをえず承諾しましたが、さらに半年放置されました。
村上さんは粘り強く謝罪を求めました。すると1996年、米海兵隊基地司令部から、加害米兵の給料から分割して支払わせると連絡が入り、22回にわたって基地まで受け取りに行きました。海兵隊の担当官が「あなたのような例は珍しい」と驚いたといいます。
村上さんは不十分ながら支払いを勝ち取りましたが、圧倒的多数の被害者は泣寝入りです。「公務外」の事故で米側が慰謝料の支払いに応じる例は2~3%にすぎません。支払う場合も、基本的には加害米兵ではなく米政府が支払います。「これでは、日本で交通死亡事故や強姦事件を起こしても痛くも痒くもない。加害米兵が賠償金を支払うのが当然だ」
沖縄弁護士会の新垣勉弁護士は、「公務外の不法行為について特別措置法を制定し、日本側が加害賠償につき代位責任を負い、被害補償を行った上、米国ないしは加害米兵に対し、求償する制度を構築すべきだ」と提起します。
加害米兵に痛み与える制度を(主見出し)
2006年1月、神奈川県横須賀市で佐藤好重(よしえ)さん=当時(56歳)=が米空母キティホークの乗組員に撲殺される事件が発生しました。夫の山崎正則さん(72歳)は長い裁判闘争を経て賠償金を勝ち取りましたが、米側に圧倒的に有利な賠償制度の改善を強く訴えています。
被害者の遺族 山崎正則さん(72歳)(中見出し)
事件から3カ月後、防衛施設局の職員が損害賠償請求手続きのため、自宅を訪れました。「米政府が承諾すれば支払われる。額は好きなだけ書いてください」と言われたので、私は「金は要らないから好重を帰してくれ」と言いました。
その後、米軍の司令官から送られた謝罪文には「この事件をきっかけに、より日米同盟が強化されることを願う」と書かれてありました。どうして日米同盟のために、好重が殺されなければならなかったのか…。このまま黙っていれば、好重がかわいそうだと思い、裁判を起こしました。
私は、日米両政府の責任の追及、「米兵の永久免責」を認めないという立場で、裁判をたたかってきました。「公務外」の事件の場合、被害者が「米兵の永久免責」が記された示談書に署名・捺印しなければ、米政府は見舞金を支払わないというものです。
見舞金を受け取るのに、なぜ犯人の免責を先にしなければならないのか。日本政府は「米側がそういっているから」と、最後まで折れませんでした。
事件から11年後の2017年、加害米兵に対し約6500万円の支払いを命じた横浜地裁判決が確定しました。しかし、見舞金を支払うかどうか、またその額は米側次第です。私の場合も、米側が見舞金として出してきた金額は判決額の4割にすぎず、6割はSACO見舞金に基づき支払われました。もちろんそれは国民の税金です。
その上、賠償額が支払われるまでの年5%の遅延損害金は除外されています。裁判が長引くほど支払わなければならないものを放置し、見舞金だけであきらめる被害者を多く生みだしています。
平和憲法がある中で、政府の政策として基地を置いておいて、「公務外」だからといって米兵が起こす事件・事故に責任がないというのは根本的におかしい。公務中・公務外の区別をなくし、米側により多くの支払いを請求することで、米側に痛みを与えることが、改善につながります。私はこれからも、声を上げ続けます。