2020年9月23日(水)(憲法千話)
憲法便り#3628:安保法制で”日本は米国の戦争に役立つ”;米秘密公電「歴史的偉業」と評価;日本共産党がスクープ文書を入手;問われる菅政権の安倍政治継承!
アメリカ政府による安保法制性成立への露骨な介入、アメリカ言いなりの安倍首相、米国と日本の情報公開の制度の違い、民主主義のあり方の違いを、ぜひ読んでいただきたい!
2020年9月20日付『しんぶん赤旗』第1面及び第6面を引用しました。
2020年9月20日付『しんぶん赤旗』日曜版第1面、第6面及び第7面を引用しました。
【見出し】
「スクープ文書入手」
「安保法制で“日本は米国の戦争に役立つ”」
「米秘密公電『歴史的偉業』」
「問われる菅政権の安倍政治継承」
【記事】
首相となる菅義偉氏が掲げる「安倍政権の継承」。しかし世論調査(「共同」8~9日)では、安倍政権が進めた改憲やアベニミクスでの継承には6割近くが反対です。なかでも最悪の「負の遺産」は安保法制=戦争法の国会成立強行。菅氏は強行時、官房長官でした。編集部は米情報自由法を活用し、安保法制強行成立前後に在日米大使館が本国に伝えた秘密公電を入手しました。米国は安保法制強行をどうみていたのか。 田中一郎記者
《問われる菅政権の安倍政治継承》
編集部は、安保法制強行について在日米大使館との間で交わした公電の開示を米国務省に請求。2015年9月に在日米大使館が発した5本の公電を国務省は開示しました。
安倍自公政権が、違憲の安保法制を強行したのは2015年9月19日。集団的自衛権行使容認など、日本を海外で戦争する国につくりかえるものです。
集団的自衛権は「憲法9条のもとでは行使できない」というのが戦後一貫した政府の憲法解釈。それを安倍政権は2014年の閣議決定で勝手に変更しました。
閣議決定に触れているのが2015年9月9日の公電。米側は「平和憲法の解釈を初めて変更した」「歴史的決断」と高く評価しています。
当時、安倍晋三首相は“邦人を運ぶ米艦を自衛隊が守れるようにするのが集団的自衛権だ”と国民に説明していました。しかし公電では「日本の軍隊は特定の条件のもとで同盟国への攻撃に対処することが認められる」と強調。“米国の戦争に役立つようになった”と評価しています。
参院本会議での強行成立を伝えた9月19日の公電。国会周辺に抗議の市民が押し寄せたにもかかわらず、「与党は午前2時半までに何とか採決を終らせた」「歴史的偉業」と絶賛しています。国民の怒りに対する恐れもにじみ出ています。
元外務省国際情報局長の孫崎享さんはいいます。「公電を見ると、安保法制をめぐって二つの大問題があったことがわかります。米国の戦争に自衛隊を参加させる憲法違反の問題と、国民意思に反しても強行する民主主義否定の安倍政権の体質です。こんな政治を続けていいのかが問われています」(6面につづく)
《1面のつづき》
憲法を踏みにじる安保法制=戦争法の強行成立から19日で5年。5本の公電には、米側が安保法制成立に執念を燃やしながらも、反対世論の強まりに神経をとがらせていたことが詳細に描かれています。
法案の国会提出前に米で安倍首相が約束(中見出し)
「米日関係がこれほど強固になったことはない」。2015年9月9日の公電(②)は日米関係をそう評価しています。
根拠の一つにあげたのが、同年4月29日に安倍晋三首相(当時)が米上下両院合同会議で行った演説です。
演説で安倍首相は「(安保法制成立)」を夏までに成就させる」と誓約しました。当時、法案は国会に提出されていませんでした。国会で論議もしていない法案の成立を勝手に米国に約束する。公電が絶賛する「強固な日米関係」とは、こんな異様な二ch米関係です。
当時、通常国会は6月24日で終るはずでした。しかし自公両党は安保法制を成立させるため、戦後最長の95日間の会期延長を強行。安保法制は7月16日に衆院を通過しました。
9月9日の公電は、こうした経過に触れ、「歴史的法案を成立させるという(米)上下両院合同会議での誓約から、彼(安倍首相)の政府は逃げなかった」と強調。何よりも米国への誓約を優先した安倍政権の姿勢を褒めたたえています。まさに”米国いいなり”です。
《「連休前に成立すれば国民は遊んで忘れる」》(中見出し)
安保法制特別委員会で採決が強行されたことを伝えた9月17日の公電(③)。自民党内の「情報提供者」が、9月19~23日の秋の大型連休前に参院本会議で可決・成立させるつもりだと語ったことを紹介。「そうすることは事実上の冷却期間をつくることになる。日本の人々は遊びにいき、この問題を忘れてくれるかもしれない」と記しています。“連休で怒りを忘れさせよう”とは、あまりにも国民をばかにした話です。
これは反対世論の強さに対する恐れのあらわれでもあります。
連休後に採決が持ち越されると、同公電は「5日間の連休は、反対勢力が抗議行動への参加者を増やすことになりかねない」と述べ、デモの規模が拡大しかねないことを危惧しています。
続けて公電は「反対世論は強まり続けてきた」と指摘。9月13日に広島で7千人の抗議行動があったことや、14日の国会前行動に4万5千人が結集したことを報告しています。
それに先立つ9月8日の公電(①)は、「安保法制に反対し抗議する動きは頻度でも規模でも拡大している」とし、12万人が国会周辺を埋め尽くした8月30日の行動を紹介しています。
これが開示された在日米大使館の公電(抄訳)(6~7頁)
①「日本:小政党が大きな影響力? あまり知られていない野党が法案修正を目指す」(2015年9月8日、秘密)
次世代の党、新党改革、日本を元気にする会は9月3日に共同で参院に安倍首相の法案への修正案を提出した。
与党案に対する全面的な修正は衆院でもう一度採決する必要がある。■■(2行程度非公開非公示)もう一つのより可能性がある選択肢は、修正案の一つかそれ以上の要素を連立与党が付帯決議に盛り込ませることだ。
安保法制に反対し抗議する動きは頻度でも規模でも拡大している。最も注目すべき事例は8月30日が。このとき数万の人たちが国会周辺に集まった(主催者は12万人と主張、警察の見積もりは3万人)
④件名「日本:安保法制が参院本会議で可決」(9月19日、秘密)
国会の外では1万1千人近い抗議の参加者が集まったと伝えられたにもかかわらず、連立与党は午前2時半までに何とか採決を終らせた。安倍政権にとって、立法上の歴史的偉業をなし遂げた。SEALDsは最近、幅広い人たちによる安保法制反対デモで注目を集めている。9月16日の記者会見で奥田愛基(あき)は、国民が反対の声をあげ、政治に変化をもたらすよう促すことに成功したと強調した。法案成立後も、こうした政治的な活動は続くことに期待を示した。彼は、法案賛成議員を国民が落選させることができる場として16年夏の参院選を挙げた。
⑤件名「プリンケン国務副長官の日本訪問のための情報説明(9月28日、秘密指定なし)
いま安倍政権は、この新しい(安保)法制の実行を検討しなければならない。それには、日本がやれる法的限界を新たに拡大した改訂日米軍事協力の指針の履行について米国と協力することが含まれる